ラグジュアリーブランド店長ブログ

洋服のご試着にお客様をリードするためのポイントとは?:ブランド店長問題解決講座(37)

■「よろしければご試着もできますので・・」で積極的に洋服を試着するお客様は少ない!

ラグジュアリーな空間で高級感のある色とりどりのバッグやお財布を見るだけでも心が豊かになりますが、それらを実際に手にとって中のつくりや持ち心地を試したり、比較するのも楽しい体験です。昨今はラグジュアリーブランドでも、「どうぞ持って、鏡でご覧ください」と気軽にバッグを試するよう促されることが多いため、ECとは違って店舗ならではの嬉しい体験ができます。

しかし一方、洋服となるとそこまで気軽には試着にたどり着かない、ということはありませんか?その主な理由として”洋服の試着に対するプレッシャーの強さ”があります。お客様側からすると興味のある商品があったとしても

①バッグと比較しても洋服はさらに高額であるケースが多い(扱いもデリケート、出し入れも配慮が必要・そもそも手が出ない)

②脱いだり来たりすること自体が面倒・時間も取られる

③バッグほどお客様数が多くないため、自分に対する注目度(期待)が高いという緊張感がある

④それが(スタッフに手間をかけさせている分)、「着たら買わなければならないかも」という強迫観念につながる

⑤購入を断ること自体が面倒

⑥「そこまでスタイルも良くないから、見栄えする自信もない」・・・

結果的に「興味はあって、着てみたいという気持ちはあるけれど」という想いを打ち消すレベルの「おもり」がのしかかり、「やめておこう」という結論に落ち着きます。素敵な洋服もハンガーにかかったまま、時間だけがたっていく、ということもしばしばです。

■試着は”エンターテインメント”!

エンターテイメント性

これだけ高い心理的壁がある以上、スタッフとして「よろしければご試着もできますので・・」というフレーズでそれを軽々超えられることはまずありません。よほど目的的に来られている少数のお客様のみです。

改めて、ご試着いただく本来の目的を考えてみると

①見ただけではわからない良さを体感していただく

②ご自身がどのように見えるのか確認いただく(似合う、似合わない、フィットする、しないなど)

ですが、さらに付け加えると、

③お客様にとって「エンターテインメント性をより感じて頂ける体験」を提供することです。

店舗で演出できるエンターテインメント性としては

仮想の世界を五感を使って体感できる!=「もし、これを持ったら、着たらどんな私になれるか」「もし、私がこれから~する場所に行くとしたらどうなれるか」をより具体的にイメージできる体験

今までと違った考え方/やり方を発見できる!=「私に合うカラーコーディネートとは?」「こういう持ち方もできるんだ!」「へえ、そうだったんだ」という発見がある

がありますが、それを提供できるのが「ご試着体験」です。

そこで、義務的に、あるいは押し付け的に洋服の試着を促す、という前提ではなく、お客様の状況を踏まえつつ「なかなかない機会ですので、今日が特別な日だと思って、是非遊び心でお気軽にお試しいただきたい」「実際に着てご覧になるだけでも、今後、ご自身にぴったりのものを検討されたり、購入されたりする際の参考になりますよ」「お客様には〇〇のお色がお似合いだと思います。だまされたと思って、一度お試しになりませんか?世界が広がりますよ」「お時間があるのであれば、そういう体験をして楽しんでいただければ私もうれしいです」「着てご覧になってお気に召さないものを買ってください、とは絶対に言いませんから!」という気持ちでお勧めすることがWin-Winにつながります。

■私たちがご試着のフィードバックから学べる事

もう1つ大切なのは、ご試着いただいた後のお客様の反応からどれだけのことを私たち自身が学べるか、です。

非常に気に入っていただければ、「お客様の想いを汲めただけでなく、提案も合格だった」というフィードバックになります、

ただそれ以上に大切なのが、お気に召していただけなかった時です。先述のようにお客様も「断りにくい」というプレッシャーがありますから、それを先手で察して対応することで、そのプレッシャーを排除してあげることも大切です。

ですから、注意深くお客様の表情、声色、しぐさを観察し、あまり乗り気ではないな、というときはこちらから「イメージと違いましたか?」とあえて否定的に聞いていくことで、「そうね」とお客様もYesの反応を返しやすくなります。そこからは、何がどう違うのかを丁寧にお聞きし、ぴったりのものがなければ、明るく「残念でした!」ぐらいの笑顔でお帰りいただくことです。

その体験を通して、「率直にリアクションできるお店だな」「嫌味がないから、他よりも試着しやすくていいな」「気になる商品があったらまた試着してみよう」という気持ちになっていただけます。

ブランドとして店舗として、当然できること、できないことはありますが、固定観念を打破して「試着ってこんなに楽しいことなんだ」という体験をしていただくことで、口コミ効果が生まれ、次のお客様に広がっていく、ということを念頭に置いて創意工夫することが、自分たち自身、仕事を楽しむことにもつながります。

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