ラグジュアリーブランド店長ブログ

新卒Z世代スタッフの能力を活かす3つのキーポイント!:ブランド店長問題解決講座(51)

■新卒Z世代は私たちほど忍耐強くない?

もはや年功は意味をなさない、と言われて久しいものの、それでもやはり実務の世界では”経験”がものをいう場面は多いものです。経験から学んだことは、未知の慌てふためく状況に出会ったときに、潜在意識から引き出され、思いがけず役に立つことが多くあります。特に接客・販売のように人を相手にする仕事は正解が常に1つ、ということではないため、経験は宝であり、応用を聞かせることで対応の幅も広がり、それが顧客や仲間の信頼につながります。
ゆえに、聞きかじった知識のみをインプットして「~すべき」という評論家と違い、実務者は同じことを言うのでも重みや説得力が違うのです。

店長もそれを痛感しているだけに、理解力が高く、学生時代に成功体験を積んで自己肯定感が高く、堂々と自己主張できる、いわゆる「できる新卒」はありがたいものの、心のどこかで「それだけじゃないんだな」という気持ちを抱くこともあるのではないでしょうか。

同時に、いわゆる優等生は白か黒かがはっきりしており、正義感に燃えているケースも多く、確かに正論だ、と思うことをまっすぐな気持ちで主張します。これも本来は「その通り」といいたいところですが、「そうはいかないのが世の中」と経験豊富な店長やベテランスタッフは心の隅で思ってしまったりしませんか?

オフィス(人事)からすれば、知的で上昇志向があり、ロジカルに分析でき答えを導ける若いスタッフは、今後の核メンバーとして大切にしたいと考えます。当の本人もそういう気持ちで目の前に問題があれば、いち早く解決して無駄を省きたいと焦る。私自身、振り返ってみて、20代はなぜか体内時計が「早く結果を出さないと・・」とプレッシャーをかけてきていたように思います。

学校と違い、職場では同じ事柄でも立場・価値観によって受け止め方は様々であり、且つたいていの人は自分の受け止め方が正しい、と信じています。そんな中で、一つの答えを押し付けても軋轢が生まれるだけで、解決したくてやっていることが逆に軋轢を大きくしたりすることも多々あります。
結果、Z世代のスタッフは「ここではせっかく理想をもっても思うようにいかない」と幻滅を感じたり、あきらめたり、「他の会社ならもっと自分を活かせるかも」という気持ちになる。その心理はうなずけます。

しかし、それを繰り返しているとブランドとしては未来の資産を失い続けることになります。且つ残っている中堅・ベテランスタッフは気が付いたら過去の延長線上の保守的なスタッフ、ということにもなりかねません。そこから固定的な組織文化が創られます。この理想と現実、短期と中期、若手とベテラン、などの対立をどう両立させればよいのでしょうか?

■新卒Z世代スタッフの能力を活かす3つのキーポイント

私は店長やベテラン側の意見、新卒や入社2~3年の若手スタッフの両側の意見を聞く機会に恵まれていますが、はっきり言って「どっちが悪い」とも一概に言えないというのが正直な気持ちです。
私も昔は新卒で若かった。そのころを想えば、むしろ職場に対する問題意識を素直に持って何とかしたい、と考える力があること自体、素晴らしいと思います。
問題は、せっかく若手がそう思っても周りが納得して動いてくれない、という大きな壁にぶつかったときの対応法です。
昔は「まずばりばり仕事ができるようになって初めてそういう発言力が生まれるのだから、まずは自分の仕事で実績を出せ」と言われました。
また「今は理想に燃えていても、そのうち現実が分かるよ。時が解決してくれる」とも言われました。
”長いものには巻かれろ””郷に入っては郷に従え”です。
ある若手が「長いものって何ですか?長ければいいんですか?」と食い下がっていましたが、確かに「長い」ということは昔と比べて今はそれほど価値を生まなくなっているという時代である、ということを一度立ち止まって考えてみる価値はありそうです。

そこで、様々なケースを見きてきて、まっすぐで正義感の強い、且つ自己肯定感も高い若手スタッフの強みを伸ばすには3つのポイントがあると考えます。
1.何事もまずは「見える化」を前提にすること
2.判断基準に一貫性を持たせること
3.「あなたが~なら実際どうする?それはなぜ?」という問いかけを行うこと

それぞれ、なぜ重要なのかについて整理してみましょう。

まずは1.「見える化」

分からないことでも、インターネットで調べれば何らかの答えがあるはず、という中で育ってきた若い世代からすれば、上司や先輩から「昔からこうだから」とか「マナーで決まっているんです」と言われても「なぜ?なぜ昔からこうなの?その答えは?」を知りたくなるのが当然と言えます。上司が答えてくれないなら、とネットで調べると様々な見解があります。上司が言っていることと同じであれば、「どうして説明してくれないの」と思うし、見解が異なれば、「どっちが正しい?」となります。ネットにはまことしやかに書かれていても信用できない情報もありますが、その内容と上司の言っている内容は同列で比較され続けているのです。お客様にきちんと「なぜこのバッグがこれだけの値段がするのか」と説明するのと同じように、その手間を惜しんではいけないし、まずは店長自身が「本当に納得してもらえるように根拠を示せるか」ということを考え続けることが求められる時代なのです。

次に2.判断基準の一貫性

若手は先述のように正義感が強い。いったん決めたことは一貫してもらわないといちいち上司にお伺いを立てないといけない上、失敗するリスクも高まる。これでは安心感をもって仕事に集中することはできません。自分がコントロールできないことに対してはモチベーションを上げにくい面があるのは当然です。だからこそ、ルールを守ることは大前提ですが、イレギュラーな対応をした際には「確かにルールは~です。しかし、この場合~という状況・リスクがあり、私としては~を考慮した上で、特別に~という判断をしました。特殊事情ではあるので、今後こういうことが起こらないように、~という対策を立てます」と説明していくことで逆にスタッフも大きな安心感を持てる上、上司に対する信頼も高まるのです。

3つ目. 問いかけ

これは教育上も非常に重要です。職場で問題と感じたことに対し、”長いものに巻かれろ”ではなく、正義感をもって「言わなければわかってもらえない」という気持ちから物申すで言って来てくれる若手スタッフもいます。素晴らしい勇気です。だから、やみくもに「10年経ってから言え」とはねつけるのは違うと思います。むしろ、そういうスタッフこそ強みを伸ばしてほしい。その時大切なのは「スタッフの視点からモノを見る」だけでなく「多面的なモノの見方ができるようになってもらう」ことです。
さもなければ、単なる評論家になってしまいます。
たとえばテレビやネットではいかにも「国民の声の代表」とばかりに、正論を振りかざす評論家も多くますが、実際には何が本当の正義か?は簡単には決めつけられません。なぜなら、物事は国民の視点からだけでは動かないからです。国家として、外交上、歴史上、地政学上、財政上、様々な中で何が最適かが議論され、時には誰かが我慢をしてでも大局的な視点で決断しなければならないこともあります。それが社会の実態でもあるのです。もちろん、お互いに主張することは大切ですが、それぞれ異なる立場の人から現状を見たらどう見えるのか?という視点を持ちながら物事を見ていける人材を育てることの方が、強くて柔軟な組織づくりにつながります。
だからこそ店長は「なるほど、あなたのそういう意見も重々わかります。ただ、もしあなたが~の立場で、~の状況に置かれていたら、どう考えてどう行動しますか?」と尋ね、視野を広げさせたり、深めさせる中で、幅をつけさせていく育成が重要なのです。

以上3つのキーポイントを紹介しましたが、若手がいろいろ進言してた際、「偉そうに・・」という受け止めではなく、「よくそこに気づきましたね」がまずは第一声で、そこから真意を汲んで、強みを伸ばす方向にリードできれば、意欲のある若手ほどぐっと伸びます。まさに成長期に良い師となる上司との出会いは彼らにとっては一生の財産なのです。

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