ラグジュアリーブランド店長ブログ

できる店長はOJTで差をつける!:ブランド店長問題解決講座(53)

■”スタッフのポテンシャルを引き出せ”ってどうすればいいの?

よく「スタッフのポテンシャルを引き出せ」と言われますが、どうすればそんなことができるのでしょうか?また、本当にそんなことができるのでしょうか?

そんなことを考えていた際、高校生が取り組むあるプロジェクトの新聞記事が目に留まりました。ざっくりいうと「ある商業高校で、特別授業枠を使って、1年間で「デザイン思考」をベースに自分たちで制服を刷新する」という取り組み。チームごとでコンセプトを練りこみ、それを形にしたお披露目会が行われた様子が写真に納まっていました。プロジェクト責任者曰く、最初はあまり乗り気でなかった生徒たちを動かすには見えない苦労もあったが、終わってみると生徒の側にも学校側にも大きなインパクトをもたらした、とのこと。
改めて「制服は何のために、誰のためにあるのか」という本質論から始まり、「どうあるべきか」という目指すべきゴールを設定する。ゴールに向けて、何をどうすればよいのかの道を明確化し、障害を乗り越えて達成する、というプロセスを体験する中で生徒たち自身、ポテンシャル開発につながる気づきがおおいに得られたようです。今後は制服のデザインだけでなく、SDGsも踏まえ、素材へのこだわり、メンテのしやすさ、不要になった際の再生などさらなる発展形も企画されているとのこと。その記事を通して、同じ体験をしてもらうにしても、やはり企画する側の準備の丁寧さが効果性を大きく左右すると感じました。
企画する側が、このプロジェクトを通して、誰にどのような効果をもたらしたいのか、そのためにどういうプロセスを踏む必要があるのか、リスクマネジメントはどうするのか、などなど検討項目は山ほどあり、且つ、それを数多くの関係者と交渉しWin-Winに持ち込む、そして進捗をしっかり見守り、効果性を検証し、次につなげる。先述のように生徒も大変だったと思いますが、企画側がその何倍もエネルギーと知恵を使うからこそ、何とか成功に導けたのです。

そこまで大きなスケールでなくても、店長として日々のOJTを通してスタッフに「体験から多くのことを学んでもらう」という場面は多々あります。そこで本当にOJTを効果あるモノにしようと思ったら、やはり教える側、導く側にそれ以上の構想や準備が必要なのだと考えます。

◆OJT効果は準備で決まる?!

たとえば店長がある中堅スタッフに対して「次回の顧客イベントのリーダーをやってもらうことで、リーダーシップ力を磨いてほしい。それがステップアップにつながる」と考えたとします。その際、往々にして以下のような会話から始まることが多いのではないでしょうか。

店長:「毎年やっているイベントだから、ある程度はわかっていると思うので、今回はあなたがリーダーとして、予算達成に向けて皆に協力してもらってください。もちろん、私も店長として積極的にヘルプするので、分からないことがあれば、いつでも聞いてください。」
中堅スタッフ:「はい。不安もありますが、できるだけがんばります」

当の中堅スタッフがもともと主体的でリーダーシップ力があれば、おそらく店長の期待通りリーダーシップを発揮し、その結果も伴うことで、本人の自信にもなり、安心してマネジメントを任せることもできるように成長することもあります。

しかし、まったく逆で、頑張っている割にイベント準備が思うように進まず、他のスタッフも不満、店長も期待はずれ、何より本人が失敗がトラウマになり、リーダーを引き受けることに苦手意識を持ってしまうこともあります。その結果、店長自身が「ちょっと○○さんにお願いするには早すぎたかも。もうちょっと~してくれると思ったけれど、意外とできないんだな」というレッテルを貼ってしまうこともしばしばあります。これでは、本当に誰にとってもメリットを生みません。

本当にある経験から将来の可能性につながるものを沢山学んでほしいのであれば、任せる側(店長)がその何倍も下準備をしておく必要があります。

そこで、効果のあるOJTを行うという定評がある店長に話を聴いたところ、以下の3つのポイントを押さえてスタッフの成長を促しているとのことでした。

①今、そのスタッフに「何をなぜ学んでもらう必要があるか」を整理し、その人のレベルに合った課題を選ぶ
②課題達成(結果だけでなくプロセスも含む)の意義(メリット)を本人と一緒に考え、統合する
③達成シナリオ、想定されるリスクと乗り越え策、進捗確認の仕方、ヘルプ体制を事前に確認し、見守る

たとえば上記のイベントリーダーを任せる場合も店長として
*「今後~を目指したいと考えていると聞いて、あなたの強みである~を活かし、逆に弱みである~を強化するためにもイベントリーダーにトライしてもらいたいと思っているけれど、どうですか?なぜなら、イベントリーダーを経験することで、~が学べるからです」
*「イベントのゴールとして、売り上げ予算の達成だけでなく、特に”新規の顧客様を増やす”、”今まで集客がゼロだったスタッフに1名動員してもらう”という2つのことに注力してもらいたいと思っています。なぜなら、~。ただ、もっと他のチャレンジ目標の方がいいということであれば、あなたの考えを聞かせてください」
*「いいアイディアですね!では今回はその2つの要素を入れた目標設定としましょう。そのためには、まずは計画が大切ですから、ラフ案でもいいので、これまでの経験を踏まえて、自分でイベントまでにやるべきことを洗い出して計画書を作って持ってきてもらえますか?そこで作戦を一緒に練りましょう。私以外にもこの人の意見も聞きたいというスタッフがいれば調整しますから、遠慮なくいってください」

店長はそのスタッフがどういうポイントなら興味を示すかを事前に考え、またどんな強みを活かしてもらえそうかを想定して課題を提示しています。
且つ、一方的ではなくスタッフの意見を取り入れることで、一緒に取り組む、という体制を作っています。
当然店長も忙しい中、もしかしたら自分でやった方が早い、ベテランに任せた方が早いかもしれません。それをあえて負荷をかけて何度も話し合いをするというのは実際に大変なことです。ただ、投資した分効果も大きい、というのが体験学習であり、貴重なOJTです。
単なる知識ではなく、経験・体験は人によっては一生の財産になるからです。

そういう意味で、店長はスタッフのために舞台をつくる役割も担っているのです。

■店長自身の原動力は?・・尊敬する○○店長のようになりたい!

では、その店長はなぜそこまでスタッフのために頑張るのでしょうか?それも併せてインタビューしたところ素直な回答として

「以前の上司に私自身がそのようにOJTをしてもらい、だからこそ今の自分がいるのです」「その恩返しをスタッフにしてあげたい、という気持ちです」

もちろん業績のため、評価のため、という観点もありますが、それだけではなかなか枠は超えられません。先述の高校生プロジェクトも、「もっと可能性を開花するきっかけをつくれないか?やってみたら想像以上に素晴らしいことが起こる可能性があるなら、やってみようじゃないか!」という未来の可能性への挑戦です。その挑戦があるからこそ、新しいやり方が生まれたり、発想が進化するのです。
自分を一言で表すと?という質問に対し店長から即座に「チャレンジャー」と返ってきました。OJT名人店長は、陰の大変さすら、チャレンジの面白さ、醍醐味に変えるパワーの持ち主でした。

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