ラグジュアリーブランド店長ブログ

DX推進・AIによって店長の経験・勘はもう要らなくなる?:ブランド店長問題解決講座(39)

AIを使って”現場の思い込み・勘”から脱却せよ!

コロナ禍でDXという言葉が徐々に浸透してきましたが、実際に5Gがスタートするなど、Society5.0と言われる超スマート社会の実現に向けてすべてが動き出しています。さらにCahtGPTの普及によって、リアル(現実)&バーチャル(仮想)というOMO(オンラインとオフラインの融合)のレベルも越えて、仮想空間の中でそれすら意識せず日々暮らす世界が到来しようとしています。

もちろん、昨日今日で何かががらりと変わるわけではありませんが、たとえばリテールの世界でも様々なAIへの取り組みが加速しており、特に店長にとって大きいのはたとえばAIカメラを店舗に取り付けることで、「ご来店者の顔」「細かな動作」「客動線」「スタッフの対応」など今まではっきりとは見えなかった購買前後の活動(プロセス)がことこまかにデータで見えるようになることでしょう。

思い込み

もちろんこれまでもお客様の動きを「観察」し、「気配」を感じとれ、ということは言われてきました。それが上手にできるからこそ、お客様に合った適切なタイミングでの声掛けやサポートができるからです。しかし、人間による「観察」は当然ながら死角が生まれます。

それがこれからの時代は店舗のここかしこでAIカメラが作動し、詳細な顔認識、表情認識、視線認識(瞼の動きまでわかるものもある)、接触動作、動線などが、客観的にデータとして見ることが可能になります。

すでにこれらを導入している店舗からは、「現場から挙がってくる(定性的な)情報とAIカメラで収集したデータから浮かび上がる事実を比べてみると、“経験や勘”と“現実”に大きなずれがあることが分かった」という声も多々きかれます。そこで改めて客観的なデータをもとに、商品の置き方、見せ方、紹介の仕方を変えることで大いに売り上げ増につながった、という事例も続々生まれてきています。

中にはさらに進んでお客様との会話を自動分析し、何が購買決定の要因になっているかを抽出し、それを共有して全体のノウハウにしていこうという動きもあります。これまでは「スキルの高いスタッフはいるが、属人的でなかなか他の人に応用できない」と言われてきましたが、いわゆる「暗黙知」を「形式知」として見える化することを可能にする環境が一部整備されてきました。

ラストワンマイルをつなぐのは「人」!

 

ここまで聞くと、いよいよ「人」ではなく「なんでもAIに頼ったほうが売り上げにつながるのか・・」という結論に流れがちですが、はっきり言ってそれは違います。

もちろんAIカメラ等の導入によって人の複雑な動きもデータという形で可視化でき、そこから専門的な分析によってかなり絞り込まれたボトルネックや販売促進につながるポイントが導き出されます。

ただしだからと言って「AIが100%の答えを用意してくれて、店頭のスタッフは言われたことをやっていればよい」ということではありません。

むしろ、収集したビッグデータをもとにAIを使って専門家や本部が導き出した「この場所で、このタイミングで、こういうお買い物サポートをしたら良いのではないか?」という仮説に対し、刻々と状況が揺れ動く店頭で実際に多様なお客様を対象にお買い上げにつなげるには各スタッフがラストワンマイルのクオリティを生みだせるか否かがカギとなります。

個々のお客様の行動やしぐさの奥にある”その瞬間の心理”をキャッチし対応できるのは「人」でしかありません。そこに100%のマニュアルはありません。

それがしっかりできるようにするためには日ごろからスタッフにどういうスキルを磨かせる必要があるかを真剣に掘り下げ、且つ鍛えてこそ、店長の存在価値がより発揮されるのです。そこでは店長の接客経験・勘も有益です。

また、逆にデータを有効活用できるのも「人」です。

「うちのブティックでこういうことをやってみたら、お客様はどういう反応を示すか?」を考え、トライしたとしても、これまでは最終の売り上げにつながらなければその試みは「失敗」と捉えられることが多くありました。が、これからはプロセスが見えることから、より細かなお客様のリアクションを客観的に掴むこともできるようになります。ちょっとやり方を変えるだけで成功につながることも多々あるはずです。そこから新しいやり方を生みだすこともできます。

いずれにせよ、「どうすればよりお客様にとって“入って良かった”“欲しいものがあった”“楽しいので長居しちゃった!”“また来たい”という時間・空間を創り出せるか」という挑戦に終わりはありません。AIはその時に私たちの大きな武器にはなりますが、最終的にお客様にとって魅力に映るのは私たちの“パッション”やたゆまぬ努力でなのです。AIを使って新たな経験・勘を培っていきましょう!

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