ラグジュアリーブランド店長ブログ

受け身なスタッフをプロアクティブな行動がとれるスタッフに育てる秘訣とは?:ブランド店長問題解決講座(52)

■プロアクティブにって、具体的に何をどこまでやればいいの?

人事担当の方や店長に”スタッフに期待すること”を尋ねると、かなりの割合で以下のキーワードが出てきます。
*もっと主体性をもって行動してほしい
*遠慮せず自分から積極的に動いてほしい
*自主的に判断して行動してほしい
*リアクティブ(受け身的)ではなくプロアクティブに!
要約すると、「まじめにきちんと仕事はやってくれるが、もっと店舗全体の動きに興味を持って、自らすすんでやることを見つけたり、フォローしようとしたり、改善の提案をするなど、良いと思ったことを行動に移してほしい」ということです。

しかし一方のスタッフの側からすると、”プロアクティブに”と言われても「自分がどこまでやっていいのか?」「自分がやることで、それが当たり前になってしまって業務負荷が増えても困るし・・」「率先して引き受けてできなかったら逆に迷惑をかけるし・・」「出しゃばりと思われたくない」などなど、主体的に、と言われるたびに「やりたいけれど‥」で終わらざるを得ない暗黙のハードルもあるようです。

一方で、プロアクティブな行動をとっている先輩スタッフがいて、店長からも後輩からもリスペクトされている環境であると、イメージがわきやすいだけでなく、模倣することで成長も速まります。
ですから、店長からすると「自主的・プロアクティブ」などやや抽象的あるいは、画一的な言葉を繰り返し使うより、具体的に率先してそういう行動をとるスタッフを一人創る方がはるかに効果的と言えます。

■プロアクティブとは?ーこんな時、あなたならどう行動する?Aさん~Dさんの対応例

たとえば、もしあなたがスタッフであれば、以下の指示を店長から受けた際、具体的に何をどうしますか?
「コンペティターの動向を知りたいので、百貨店の担当の方に売り上げ状況など聞いてきてもらえる?」

Aさん:素直にはい、と言って百貨店の担当者に聞いた数字を店長に報告する
Bさん:百貨店の担当者に数字を確認し、コンペティターの売り上げ変動について百貨店の担当者に質問し、コメントをもらう
Cさん:百貨店の担当者から数字とコメントをもらい、主要なコンペティターに行って、最近の売れ筋やその要因についてインタビューする
Dさん:Cさんの動きに加えて、自分でSNSをチェックし、より詳細な情報(お客様のレビューなど)をつけて店長に渡す

●Aさんは具体的な指示通りに動いている点では、きちんと仕事はしています。しかし、+αはない点がBさん~Dさんと違う点です。
しかし、店長としてAさんの仕事が物足りない、と思ったとしても逆にAさんからすれば「それならそこまでの指示を出してください」となりますから、多くの店長は仕方なく「お疲れ様」で終わり、「もっと気を利かせて欲しいな」と心の中でつぶやいているのではないでしょうか。
では、Aさんの仕事ぶりでは期待値に対し何がギャップを生んでいるのでしょうか?

大きな点を3つ挙げると
①指示の意図や背景に興味を持っておらず、「なぜそれが必要か」を指示を受けた時点で確認をしていない
②同じ仕事でも、「どうすればより喜んでもらえるか」という”次工程”の発想が希薄
③このままいくと、Aさん自身仕事に対し、徐々に面白味が感じられなくなり、こなすだけになる

●その点、Bさん、Cさんは「せっかくだから」「きっとこういう情報もあると助かるだろう」と自分でイメージをして、且つ、行動に移している点は素晴らしいといえます。もちろん、時間の制約もあるため、本当にそれが必要かどうかを確認することも必要かもしれませんが、ワンランク上を狙って行動する習慣づけは成長に直結します。

●Dさんレベルになると、”自分の強み”を活かして、SNSでチェックし、店舗全体に対してもコンペティターの様々な情報を提供することが可能になります。
店長自身忙しい、ということを考慮すると「助かる」だけでなく、本人も楽しんで仕事ができる状況をつくろうとしている点がユニークです。

■さらにワンランク上のプロアクティブさとは?何がスタッフをプロアクティブにさせるのか?

では、Dさん以上にワンランク上を目指すとしたら、あなたなら何をどうしますか?

そう、本当の意味で店長の指示の意図を汲んでいくと、たとえば「コンペティターに比べて、うちの店の売り上げ伸び率が今一つ。その主な要因は何かを知りたい」のかもしれません。あるいは、「コンペティターの売れ筋を知ることで、うちのお店でよりVM(ビジュアルマーチャンダイジング)を工夫できる余地があるかも」と考えているかもしれません。いずれにせよ、常に店舗予算達成を重要ミッションとしている立場からすれば、機会増や機会ロスに関連するホットな情報が欲しいところです。

●Eさんはそれも汲んで、「コンペティター○○の状況を詳しく聞くと、~が売れているとはいえ、~の分野では商品の品ぞろえが薄く、むしろうちのお店の強みを活かせます」「~を見ておられるお客様に先手で積極的にお見せするようにすれば、販売チャンスは増える可能性があります」「在庫を確認したところ、トライするだけの余裕はあると思います」と提案しました。

Eさんのプロアクティブさの背景にあるものは何でしょうか?

Eさんのように”プロアクティブ”な行動で相手の役に立つには、日頃から、相手の置かれている立場・状況・関心ごと・強み・弱み・期待していることを掴んでおくことが非常に大切になります。これは正直、入社して間もないスタッフには難しいことです。ですから、入りたてのスタッフはまずはリアクティブで良いので、指示されたことをきちんとやるスキルを身につけることが先決です。

しかし、業務に慣れてくると「相手の立場に立てるか、そして先手で行動できるか」は大きな格差を生みます。そういうスタッフを育てるのに、店長は”期待してる””待っている”だけでは無理なのです。大切なのは

①店長自身がやってみせて、モデルを提示すること(お客様に対して、会社に対して、スタッフに対して一日1回以上、プロアクティブな行動を実践する)

②日ごろから、スタッフに対し「+αでできることには何があるかな?それはどこに目を向けていると見えてくるかな?どうすればそれができるかな?」などの質問(コーチング)を行う。

「主体性を求めているのだから、いちいち教えるのはおかしい」「気づいてほしい」という矛盾した考え方をよく現場で聞きますが、様々な視点に気づき、経験を積む中で、より広い視野や先を考えて動くプロアクティブさが醸成されるのです。その手間を惜しんで結果だけを期待すると、期待外れという気持ちになり、それがスタッフに伝わって信頼感を失うことになりかねません。

ローマは一日にして成らず、です。ただ、成功した暁には、大きな相乗効果がもたらされます。スタッフと共に新鮮な発見をしながら成長していくこともローマへの旅を楽しむことにつながるではないでしょうか。

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