ラグジュアリーブランド店長ブログ

お店がピンチの時こそ店長の出番!危機を乗り越えられる店長は何が違うのか?:ブランド店長問題解決講座(27)

■ピンチの中の好循環と悪循環ーあなたのお店はどちらですか?

日本は「オーバーストア」と言われて久しいですが、コロナを通してよりはっきりと「生き残り組」と「敗退組」の明暗が浮き彫りになったのではないでしょうか。
コロナ前のインバウンド景気があるうちは、ブランドや店舗格差もそれほどはっきりとは見えず、「どこもそれなりにお客様が入っている」という光景が当たり前でした。
しかし、コロナでインバウンドの波が去ると、同じ百貨店やモール内でも、お客様が入っているお店と閑散としたままのお店の差がはっきりと表れています。
すなわち一概に「コロナのせいで・・」ともいえないシビアな現実がそこには存在したのです。

ブランド店 店頭接客 コロナ後コロナで家にいる時間、大半の人はネットとつながる時間が長くなりました。そこでいろいろな情報に触れ、興味のあるものはより深く調べ、
そのうえで“必要と感じるところに目的的に行く”、という買い物パターンが以前より増えた、と思われます。
そこで入店いただく確率を高めるには、事前に何らかの情報による接点が存在し、且つそこに何かしら魅力を感じていただくという点がより重要になってきています。

●好循環の例

コロナ中も待ち行列ができているお店のスタッフの話を聞くと、コロナ前に比べると、“ここに来る意義”を感じてこられているお客様、すなわち「待ってでも入店したい」というお客様が多いといいます。
もちろんブランドイメージや広告、メルマガ等の威力もありますが、それだけに依存するのではなく、個々のスタッフによる個別アプローチ(電話、メール)の効果も大きいといいます。
「正直、以前はインバウンド対応の忙しさもあって、なかなか個々のお客様と丁寧にコンタクトをとる時間がなく、購入後そのまま休眠になっていた方もいらっしゃいました。でもあえて今回情報を整理して、それぞれのお客様向けに、ご挨拶や様子伺い、以前した会話などをもとにパーソナルな話題も入れたお電話やメールをしたところ、ご来店につながっているケースが着実に増えました」とのこと。
「それを通して、逆に改めてお客様と久しぶりに会話する楽しい接客も味わえ、とても勉強になっています」という声を聞く。まさに好循環に乗せた好例です。

競争が厳しい中では、メガブランドと言われるところでも、ただ受け身で待っているだけ、では津波のような広告競争の中で求心力は徐々に衰えていきます。ネットを超えた”人対人”のかかわりについて、再度掘り下げてアクションプランを練ることが求められるのです。

●悪循環の例

一方で、「過去に顧客管理を丁寧に行ってこなかったので、いざ働きかけるとなると・・・」という悩みも聞きます。
情報がない、担当者も変わっている、そこまで近しい距離でもない、となるとパーソナルな働きかけも狭められてしまいます。
すると、“待ち”の体制しか作れず、ひたすらご来店を待つしかない。
ところがご来店数自体も1日数組と限られているため、空いた時間が多くなり、モチベーションも保ちにくくなります。
たまにお客様が入店されても、ぐるりと見まわしてあっさり帰って行かれるとよけいに落ち込んでしまう。
そのうち「来ないものはしょうがない。手の打ちようがない。どうしようもない中で、売れるものも売れない!」という想いが強化されてしまい、売り上げ進捗が悪くても「どうすべきかのアイディア」が浮かんでこない、という負のサイクルにはまってしまう、という実例も見聞きします。

現実には、前者と後者、すなわち好循環と悪循環の二極化がはっきりと進んでいると感じます。

■お店がピンチの時こそ、店長の出番!不可能を可能にする店長のワザ

私の好きな言葉に「転んでもただで起きない」ということわざがあります。
子供はもちろん、大人になっても、あるいは”その道のベテラン”と言われるようになっても、何かで転ぶことはあります。
用心のために「転ばぬ先の杖」「石橋をたたいて渡る」という注意も必要ですが、注意していても転ぶときは転びます。
特に、今回のコロナを含め、天災その他環境要因によって吹き飛ばされ、転ぶことも現実にはあります。
となると、今求められるのは、思いがけず転んでしまったときに「どう考え」、「そこからどういうアクションをとるか」ではないでしょうか。

そういう時、「わたしの不注意のせいで転んだのではない!」と周りに主張し続けるだけの店長もいます。
転んだまま誰かが起こしてくれるのをじっと待っている店長もいます。
あるいは、「痛い、痛い」と泣き叫んでいるだけの店長もいます。
痛さを我慢して立ち上がったものの、そこからどうしてよいのかわからない、という店長もいるなど、十人十色です。

ただ、その中で「転んでもただで起きない」店長は、その経験から、「転びそうなリスクを事前にどうキャッチすればよいか」「この程度では転ばない強さ、しなやかさを持つには?」「転んでもかすり傷程度で終わるよう、日ごろから鍛えておくべきことは?」・・など、“次に備えてやるべきこと”を考え、実行可能な状態を創ります。すなわち、過去の経験はすべて未来に活かすためにある、という前提で物事をとらえる力を持っているのです。

過去、リーマンショック初め、いろいろな環境変化をポジティブに乗り越えてきた店長は、共通してそういう貪欲な吸収意欲と、それをより良く生かす戦略思考をもっています。

そんなことを考えているときに、先日ある店長が話してくれたエピソードが非常に心に響きました。

「コロナで入店数は明らかに減りました。正直、これまで多くの人に入店いただいて当たり前、という状態だったので、店舗として顧客はそれほどいらっしゃらない状態した。しかし、会社から、予算は昨年並みかそれ以上達成するようにと言われました。

ただ、“できないことはない”と思いましたし、ある意味“良い機会だ”、と思いました。☚ここがポイント!

なぜなら、本来自分としてはもっと顧客づくりに力を入れたい、と思ってきたのですが、それが忙しさの中で流されていた面もあったので、より本気でやれるチャンスが来た、と思ったからです。スタッフにも危機感が芽生えたのが最大のチャンスです。

そこで、そこから、何をどうすべきか?をディスカッションしあいました。
“これからは顧客様を創ることなくして、お店の未来はない!”、という前提で考えると、やるべきことでやっていなかったことがスタッフからもいろいろ出てきました。それを整理した上で、「これをより楽しくするには?」という工夫を入れて、アクションが定着するようにしました。

一例を挙げれば、予算達成のためにも、一点販売して満足していたのを、コーディネートを楽しんでいただいて複数お買い上げいただこう、と掲げました。

しかし、コーディネート知識が乏しいスタッフはどうしても尻込みします。

その壁を突破するために、チーム内で“突撃隊”を創り、空いた時間に店頭に立っているスタッフのところへランダムに行って、「今から●秒で、これに合う商品をピックアップし、お勧めを言ってください」と伝える。スタッフがコーディネートしたものを写真にとり、チーム内でLINE共有し、それに対して皆がフィードバックしあうのです。実はその取り組みには「一石五鳥、十鳥の効果」(スキルアップ、情報共有、競争意識、満足感、成長意欲・・・)が埋め込まれています。結果として、そのお店は予算をしっかり達成でき、スタッフにも自信がついてきています。

考えてみれば、「スタッフの主体性」ということが叫ばれて久しいものの、それが浸透すればするほど、リーダーの出番は少なくてすみます。では、最もリーダーが必要とされるときは?と考えると、やはり今回のような想定しない危機の場面です。そういうときに真価を発揮できるリーダーになるためにも、「転んでもただで起きない」精神はおおいに役立つのではないでしょうか。

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