ラグジュアリーブランド店長ブログ

リテールの販売職に未来はある?私たちが創る未来とは?:ブランド店長問題解決講座(32)

■デジタル革命(DX)が私たちにもたらすインパクト

コロナ禍で百貨店やモールが休業を余儀なくされていた状況もあいまって「ショッピングはオンラインで」というスタイルが定着しつつあります。
実際、出遅れていると言われていたファッション・アパレルの世界においても、ようやく各社重い腰を上げざるを得なくなりました。
中には「これからの時代、リアル店舗は今ほど必要ではなくなる」という見通しで、店舗を大幅に削減し、その資源をEC強化とリアル店舗との融合(OMO)にシフトさせる国産アパレルブランドも数多くあります。いよいよこの大きな時代の流れは不可避となり、これからリアル店舗の統廃合の活発化、それによる販売員の淘汰が現実化してきています。

デジタル革命

新規出店を行うことで顧客数を増やしてきた時代と違い、これからのリアル店舗は今以上に「質」の勝負となります。
しかしその「質」も、従来の延長線上での「感じの良いサービス」「行き届いた商品説明」「きれいなディスプレイ」・・という枠の中で洗練させる努力では徐々に限界が出てきています。なぜなら「それは当たり前のこと」であり、スマホの中では「より幅広い品ぞろえ」「バーチャルコーディネート」「アバター接客」など、わざわざ店舗に行かなくても完結できることが増え続けるからです。実物を見て、触るだけなら自分で取り寄せて試着して買ったり、返すこともできます(ようになります)。これまでのリアル店舗の中核機能はデジタルに見事にとってかわられる可能性もあります。同時に、作業もロボット等によって効率化していくため、当然、生産性から言えば、リアル店舗を抱えていても従来ほど人員はいらなくなります。いよいよ淘汰が現実化してきていると言っても過言ではありません。

■リアル(フィジカル)店舗に行く理由とは?

エンゲージメントクリエーター

振り返ってみると、デジタル技術が発達する前は「セルフサービス」というと、“サービスをカットして、その分コストを浮かせて安くします”というコンセプトが当たり前でした。スーパーマーケットしかり、飲食店やホテルなども、人を削る=不自由=その分の我慢料が値引きにつながる、が常識でした。
だからこそ高級と言われるところほど、お金をかけてでも人をしっかり配置し、「お客様を一人にしない」「人を介しておもてなしをする」ということに力を注いできました。しかし、この考え方が今大きく変わりつつあります。

セルフで完結できるということは、慣れてしまえば “自由で、誰からもわずらわされずに目的を達成することが可能で、それが満足につながる”、ということです。特にミレニアル・Z世代と言われる若い世代になるほど、その傾向が強いといえます。むしろそこに「人」がいて、そこを通過しないと目的が果たせない、というのは煩わしさになる時代です。どうしてもそこに「人」がいるのであれば、何らかのヘルプが必要、というときにさっと手をさしのべてくれる、あるいは速やかに目的にリードしてくれるため、そうでなければさほど必要ないという考えを持った人が増えてきています。

■店舗に行くのは「非日常の意味のある体験をするため」(物を買うだけならオンラインでも買える)

「非日常の意味のある体験」とは「販売員が寄ってきて売りつけるのでは・・」という不安を感じることなく、たとえば
① 店舗空間全体でブランドの世界観を体感できる
② デジタルサイネージで自分の好みの洋服を3Dで気軽に自由に試着し、イメージを広げられる
③ 実際の試着でサイズ感・質感・自己イメージなど着心地も確認できる
④ 「どれが本当に似合うのか」と迷ったら、プロフェッショナルなスタッフがパーソナル情報を踏まえて、「どういうシーンで着られますか?」「ご自分としてはどういうイメージを打ち出したいですか?」など「自然な会話」から、親身になって提案をしてくれる。また、感性を活かして「へえ~、なるほど」という新鮮な驚きや発見のある提案をしてくれる。そういう体験を通して、店舗に入る前よりも入った後で自分自身が素敵になっていくのを実感出来る。などです。

■未来志向で新たなチャレンジを!

そのためには、店舗はどんな空間を提供できるのか、どうすれば戸惑わずに楽しい体験を提供できるのか、など設計もオペレーションも変わってきます。
同時に私たちに求められる役割も変わってきます。
従来のように質問に丁寧に答えるだけであれば、チャットボットでも役割は果たせます。
そのステージに「人」がいることでどんな付加価値を生めるのか?を突き詰めて考えていくと、
①AIを超える“感性”を活かした「提案」
②パーソナルでエモーショナルな共感を伴う交流
③お客様のリアクションから、「もっとこういうこともできないか?」と考えて行動化する「創造力・企画力」
④個性を活かして人を引き付ける「発信」
等が挙げられます。

SNS今はSNSを通して、あるいはお客様の口コミを通してブランドはその奥の見えない多くの人とつながりを生むことができます。
上記のスキルを磨くことで「どうせ行くならあのお店」「あのお店には○○さんという人がいる」「あの人に会いに」という求心力につながる。それがエンゲージメントにつながることから、これからの時代「クライアント・エンゲージメント・クリエイター」というコンセプトで自分たちの活動をとらえなおし、それを前提に以下のような事柄を研究してスキルアップすることが必要です。

クライアント・エンゲージメントのレベルを進化させる課題は?
クライアント・エンゲージメントのレベルを進化させるチャンスとは?
クライアント・エンゲージメントのレベルを進化させる効果的なツールとは?
クライアント・エンゲージメントのレベルを進化させるツールの効率的な活用法とは?
クライアント・エンゲージメントのレベルを進化させるツールを活用したよりCSを高める接客法とは?

AIになったらどうなるの?と不安がるより、自分たちの未来を切り拓くためにも好奇心をもってトライしてみることが、より重要性を増しています。

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