ラグジュアリーブランド店長ブログ

不安定な時代に店長に求められるレジリエンスとは? :ブランド店長問題解決講座(22)

■コロナ休業後のお客様の反応は店舗の実力を表すリトマス試験紙!

緊急事態解除を受け、百貨店、モール及び各ブティックとも様々な感染防止対策を打ってお客様をお迎えする運びとなりました。
ある百貨店担当者は、「お客様・従業員ともに絶対に感染を出さない!」という強い責任感と決意のもと、“これでもか”と言われるレベルまで徹底的にこだわって感染対策を実行していました。
見慣れた光景になったサーモグラフィー、消毒剤、マスク、手袋、フェイスシールド、レジ前のビニールカーテン、ソーシャルディスタンシングの指示シール、ロッカールームの拡張、エレベーターの分散利用、・・・。それでも100%安全とは言い切れませんでした。そんな環境下でも、ふたを開けてみると百貨店は開店前から行列ができ、ラグジュアリーブランドを中心として入場制限をしなければならないほどお客様が来店してくだいました。

 

これは一体何を意味しているのでしょうか?

お店までの移動も含め、感染リスクは存在します。しかし、来店されたお客様にとっては、感染リスクリスク以上に「そこに行くことによる価値」がまさっている、と感じられるからこそ、“あえてお店に行く”という行動力につながっているのです。

ゆえに、今の時期に来店されている方は、「何となく来ました」ではなく「意思」をもって来てくださっている方が圧倒的に多いといえます。実際「再開してみたら、これまで以上に購買率、購入単価とも上がっている」という声も複数店舗から聞きます。

では、その“そこ(店舗)に行くことで得られる価値”とは例えば何でしょう?まず思い浮かぶのは以下の2つです。

①直接五感( 手(肌)ざわり、香り、微妙な色、大きさ・バランスなど)で体感しないと購入できない商品を求めている
(例)自分にとっては高額品で失敗できない商品、個別コンサルが必要な商品(服、シューズ、化粧品など)で試着が必要

これらは、ネットでも購入できるが、実物ではないという「リスク」が存在します。だからこそ、リスク回避のためにも実店舗で実物を試したいと思うのです。

②買い物のプロセスにおける空間、時間という演出・贅沢感を体感したい
(例)自分を尊重し、もてなししてくれる、お店の演出で豊かな気持ちになれる、自分で検索するのではなく見ている中で”感性”に合ったものを選べるなどの満足感を求めている

特に「自粛疲れ」の反動でこういう欲求が高まっている時期ということも反映しています。

この時期にわざわざ来店してくださったお客様の反応を通して、私たちは改めてお客様が店舗に本来何を求めていたのか?それを本当に必要としている方々とはどういうお客様なのか、はっきり目にすることができました。
接客ができるありがたさも、顧客との関係構築の重要性も、こういうことがあってより深く見つめなおすチャンスになりました。

しかし一方で私たちは「来店されていないお客様」すなわち「見えないお客様」についても想いを馳せなければなりません。
もしかしたらこれを機に「わざわざ出かけなくてもすんでしまう。ネットも意外と便利ね」と感じている方もいらっしゃる可能性もあります。
あるいは「このブランドの方がサイトが充実していて、ネットでもここまでのサービスをしてくれるなら、こちらもいいかな」と心変わりしている人もいるかもしれません。さらに「マスクをして社会的距離を意識しながらの買い物って以前ほどリラックスできない」と魅力を感じなくなっている方もいらっしゃるかもしれません。

コロナ同様、見えないだけに、知らないうちに地殻変動が進んでいくように、お客様が離れていっている怖さもあります。

そう考えると、再開直後以上に、再開後しばらくして、という“これからのお客様の反応”こそが、これまで私たちがこれまでに行ってきたことへのリトマス試験と言えます。

■今こそ発想を柔軟に!

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ニューノーマル、ニュースタンダードと言われる中で、「では、何をすればお客様にとって魅力を生み出し続けられるのか」の正解は一つではありません。多くの企業・ブランドが試行錯誤途中。中には突飛なアイディアもありますが、トライしないことには見えてきません。

「夏でも蒸れないマスク」「直接触れずに操作できるタッチパネル」など、ニーズに即した商品開発のスピードは目を見張るものがあります。この数か月でも世界的にDX(デジタル革命)はすさまじく進んで、ライフスタイルの変化を促進しています。

が、一方で難しいのは「人の考え方(価値観)」です。これは昨日、今日できたものではないだけに、意外と手ごわい。

たとえば、お客様のお戻りが少ない状態が続いても、これまでの接客のあり方を見つめなおすというより、「まだコロナ明けだから・・・」で終わらせてしまったり、「景気が回復すればインバウンドもそのうち戻ってくるかも」と甘い期待を抱いて受け身から抜け出せなかったり。そのうち「うちはECが弱いから仕方ない。他ブランドは~もやってるけど、うちは遅れているから・・」と他部門のせいにしたり。
これでは、コロナ危機をチャンスとして生かすどころか、退行現象を誘導してしまい、さらなる格差が広がることになります。

今必要なのは、新たにトライしている事例をどんどん吸収して、「そんなことも可能な状況なのか!」と自分の思考の限界を打ち破っていくことではないでしょうか。ライブコマース、接客予約制、ZOOM等を使ったパーソナル接客、販売個々のSNS発信等が、これまで以上に表舞台に躍り出てくるかもしれない。
新しいことにどんどん取り組んでいるところは、“新しいことをやっても成功するかどうかわからない”“新しいことなんか思いつかない”、ではなく、とにかくまず何かテーマを決めて取りかかれば「成功させなくてはならない」という気持ちになり、そこから初めて生きた知恵が生まれてきて進化していくことを知っています。そういう責任を引き受け、チャレンジを楽しむ人材が、ニューノーマルの時代を担っていくのではないでしょうか。

そのためには、「こういうことをしたらどうか」というアイディアを思いついたらメモしておき、それに関する情報を集め、周りの意見も聞きながら、アイディアを徐々に現実化し、提案していく。可能性があれば試行錯誤して、そこから学ぶ。

それは、これからの組織にとってもプラスになります。
休業期間で充電でき、リフレッシュできている今だからこそ、過去や身の回りのことだけにとらわれすぎず、視野を広げ柔軟な発想で新しい時代に向き合うチャンスでもあります。そんな柔軟な考え方ができ、行動に移すことこそが「レジリエンス」なのです。

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