今回は3回シリーズの2回目です。チームワークを阻害する要因①はこちら
診断法その②:チーム内の役割分担 & ルールは明確 且つ 公平と受け止められていますか?
一言で店舗の管理と言っても、管理すべき対象は多岐にわたります。その一つ一つがきちんとなされてこそ、お客様が期待する”ラグジュアリーブランドブティック”にふさわしい、安定感のある且つクオリティの高い運営が可能になります。そこで、私たちがアンテナを立てるべき管理対象をざっと挙げてみると・・
・予算進捗管理(店舗・カテゴリー・個人)
・販売計画進捗管理
・KPI進捗管理
・接客品質・スキル管理(育成管理)
・顧客管理
・商品管理・在庫/ストック管理
・ビジュアルプレゼンテーション管理
・クリンリネス管理
・什器・備品管理
・労務(シフト・勤怠)管理
・出納管理
・施錠・セキュリティ管理
さらに本来放置できないものとして「スタッフのモラール(意欲)管理」も項目として入ってくるかもしれません。
どれも重要なため、これらのどれか一つ欠けただけでもバランスが崩れ始め、店舗運営にひびが入りかねません。たとえば、店頭はきれいで商品もそろっているけれど、シフト管理がうまく行かず、必要な時に必要な人員が店頭におらず、チャンスロスを生む、などです。
当然これらすべての管理業務を「管理者だから」と店長が一人で担うことはできません。1つのことを管理するのでも、目標水準を設定し、その達成に向けてPlan(計画を立て)-Do(実行してもらい)-CHeck(結果を確認し)-Action(軌道修正する)を回す必要がありますし、そのためにも、話合い・データ収集・分析・発信含め、様々な取り組みが必要になります。さらにそこに、「イベントやキャンペーン施策」が入ってきたり、突然オフィスからレポートを要請されたりなど、常に時間に追われがちな中で、足元を崩さない体制づくりが必要です。となると、「管理業務は店長がやればよい、スタッフは販売するのが仕事」とばかりに店長任せにすると、途端にお店は回らなくなります。「チームとして、全員で役割を分担し合って協力して取り組む体制」なくして、店舗は成り立たず、だからこそ店舗では「チームワークが必要」なのです。
■できる店長が実践している適切な役割の与え方!
では、チームワークが良好なお店では、役割分担をどのようにやっているのでしょうか?
ある店長いわく、「最初はスポーツチームと同じように考えていました。つまり、攻めに強い人は売ることに専念してもらう、逆に販売は今一つだけど几帳面、という人には、バックヤードの業務など裏方の仕事、という感じで。しかし、これは間違いだと気づきました。なぜなら、そういう役割分担だと、接客回数も格差が広がりますし、会社としての個人評価でも売り上げを重視されますから、バックヤード業務の人はさほど評価されません。そこに当然不公平感が生まれ、全体の関係もぎくしゃくします。そこで考え方を変えました。スポーツのような短期決戦ではなく、1年を通してチームも個人もどう成長し、安定した運営と売り上げにつなげられる店舗にできるか、そこにじっくり向き合うことが大切だと分かったのです」とのこと。
そこで、その店長が行ったことは以下の通りです。
①各役割を遂行するには、どういうスキルや動きが必要かをかみ砕いて書きだす
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②それらのスキルを磨くことが、個人とチームの成長にどうつながるのかを書きだす
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③誰にどういうスキルを身につけてもらいたいかを考え、どの役割を振るとそこにつながるのかを考える
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④メンバー全員の分担表を作成した段階で、負荷の偏りがないかを確認する。多すぎる場合は、お互いに補完する体制を考える
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⑤「仮に」という前提で、分担表をスタッフに見てもらいつつ、何を期待しているかを伝え、そのうえで、スタッフの意見を聞き、調整をする
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⑥調整が終わったら、「役割」「担当者名」「具体的に行うこと(週・月サイクル)」「達成目標」を全体に明示し、その進捗をお互いに見えるようにする
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⑦慣れていない点に関しては、誰に聞けばよいかを明示しておく(さもないと、正しい仕事の仕方が浸透しない)
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⑧定期的な面談を通して売上だけでなく、担当している役割の取り組み方についてもスタッフの成長度合いを確認し、必要なアドバイスやフィードバックを行う
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⑨役割分担は固定ではなく、半年~1年ごとに見直すことで、お互いの業務内容も理解できるようにする
上記のことを行いながら、店長は気づいたそうです。「まさに、これはスタッフにマネジメントスキルを身につけてもらう絶好のチャンスだ!」と。
管理=マネジメントです。イコールPDCAサイクルを回すことです。ただこれは頭ではわかっても、関係者を動かしながらやるとなると様々なスキルを磨く必要があります。いきなり店舗を任されて、さあ、マネージャーですから、と言われてもどうしていいか分からなくなるケースもしばしばあります。そのぐらいマネジメントはスキルがないと難しものです。そこでスタッフであってもそれぞれ任された役割分担の中で、マネジメントの経験を積んでおくことは、キャリアアップをするうえでも自分の自信・財産になります。
「もちろん、そうはいってもお互いに優先順位が異なったり、頼まれたことをやっていないことで店舗内で軋轢が生じることも多々あります。が、そこは店長が入って調整しつつ、”次回からどうすればよいか”を双方に考えてもらうようにしています」とのこと。その際、まずはルールに即しているかどうかを確認し、ルールが曖昧であれば明確にし、徹底する。ルールが現場に即していなければ、変更する。店長いわく「口約束ではなく、ルールを決める。しかし、ルール通りに行かない時にどうするか?そういうことが一番店舗運営上のノウハウになりますから、まさに勉強料です」。
一方で、前述のように店長に負荷がかかりすぎて店頭に出る時間を奪われてしまうという悩みもしばしば聞きます。ただ、目の前に溜まっていく業務を片付けなければ・・という想いだけで走っていては、いつまでも状況は変わりません。
「強いチーム」を創るという一段高い視点で見た時に、本来どうあるべきなのか?スタッフに仕事を任せることで、最初は負荷がかかって愚痴も生まれるかもしれないけれど、それを乗り越えてマルチで業務をこなせるスキルを修得してもらうことが、結果的にマネジメントスキルとして本人の成長につながるとともに、マネジメントスキルを身につけたスタッフが多いこと自体が店舗のプラスになる、と考えて全体像を描くのが店長の役割でもある、と私自身教えられました。あなたも一度点検してみませんか?
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