■チーム力は店長だけの責任?ーこのままでは店長がつぶれてしまう!
これまでは、「チーム全体がうまくいくかどうかは店長の責任であり、店長のスキルにかかっている」ということが強調されてきました。
店長はスタッフよりお給料もたくさんもらえて、権限も使える。だからこそ、自分だけの売り上げではなく、業績を上げられるチーム作りが重要なミッションでした。
しかし、今や店長を取り巻く環境として想定以上に新たな変化が押し寄せ、過去の成功体験も役立たないといわれます。
たとえば
・足元を見ても、人手不足で多様な雇用形態のスタッフを動かして成果を追求しないといけない。
・スタッフは流動性が高く、以前のようなロイヤルティを期待できるわけではない。
・残業制限があり、労働時間は減ったとはいえ、その分生産性も問われる。
・プロとしてはお客様以上に新鮮な情報を常にインプットし続けないといけない。・・・
・そんな中で、”プレッシャーをものともせず、仕事を楽しむ姿勢を見せ、スタッフが憧れるような店長であってほしい(少なくともそのようにふるまってほしい)”と期待されれば、相当に自分のモチベーションを高く保つ努力をしないといけない。
ある意味プロとしてかなり高い基準をクリアしなければならない状況に置かれています。
しかし、冷静に考えると、肝心のそのリーダーがつぶれてしまってはもともこもありません。
部下スタッフからは「店長のように大変な責任は引き受けたくない」と思われ、チームのモラールも低下します。ひいてはお店の雰囲気にも悪影響が生まれます。
また、リーダーがつぶれてしまう会社となれば、人も集まらない、などなど「誰もいい思いをしない」という結果で終わってしまいます。
では、この状況をどう乗り越えればよいのでしょうか?
現実的には、リーダーシップやマネジメントを店長にだけ頼って高い成果を上げられる時代ではありません。
店長が持つ情報も、アイディアも、スキル(知識)も人間である以上限られています。昔は変化が少なかったので、過去から蓄積した武器で十分対応できる状況もありましが、今のような混とんとした中では、店長だけに頼るのは危険すぎます。
大切なのは、チームメンバー一人一人が持つ独自の情報、アイディア、スキル、知恵、発想、すべてを結集して武器として磨き、価値を最大化する体制づくりです。且つ、その際、店長の指示を待つのではなく、一人一人がチームの目的のために、自らの強みを軸に影響力を発揮し、関係者を動かすことがスピードの時代には非常に重要です。
すなわち、店長に限らず、スタッフ一人一人が”リーダーシップ”に日ごろから磨きをかける。マネジメントスキルも同様で、一人一人が店舗全体のマネジメントのあり方を正しく理解し、主体的に動ければ生産性は上がります。そのためにも、まずは自己の管理、及び自分の担当業務において、「マネジメントをする」という自覚をしっかり持って日々取り組むことが実は非常に重要になっています。
「とりあえず自分の担当分はやり終えました」で終わるのではなく、「計画―実行―確認―修正」(Plan-Do-Check-Action)を意識し、どうすればもっとうまくいくのかを研究することで、スキルが磨かれ、店舗全体の計画推進のためのサポートがタイミングよくできるようになるのです。
■接客もリーダーシップ!
実は店長依存を創り出す背景に「リーダーシップとは上から下へ発揮するもの」という固定観念があります。しかし、そもそもリーダーシップとは「影響力」=「ある一定の方向に向けて人を動かす」という広い意味があります。考えてみれば、接客もお客様に対する「強制力」ではなく「影響力」であり、すなわちリーダーシップと言えます。同僚に「これをやりましょう!」と働きかけて協力を引き出すのも、上司に「~を試しにやってみませんか?」と提案したり、オフィスや取引先に「これからは~していただけると非常に助かるのですが・・」と折衝するのも、広い意味でリーダーシップと言えます。
このように日ごろから360度のリーダーシップを発揮できるスタッフが多くなれば、店長自身はもっと先を見て、もっと大きな視点で、もっと大きな対象に向けてリーダーシップを発揮できるようになります。すると、関係者全体がハッピーになる確率が大幅に増えます。
「優れた店長をどう発掘するか」「どうやって優れた店長を育てるか」という課題も重要ですが、一方で優れた店長にさらに優れた相乗効果を出してもらうためにも、「スタッフ一人一人が今、ここから、360度リーダーシップを発揮できるよう何をどうサポートすべきかを研究しよう!」という取り組みも見落としてはならないのです。
成果をあげるには、人の強みを生かさなければならない。弱みからは何も生まれない。
結果を生むには、利用できるかぎりの強み、すなわち同僚の強み、上司の強み、自らの強みを総動員しなければならない:ピーター・ドラッカー 『経営者の条件』
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