ラグジュアリーブランド店長ブログ

スタッフの”評価”に対する不満を生まないために押さえるべき3つの重要ポイント:ブランド店長問題解決講座(55)

■スタッフの自己評価と店長評価にギャップ・・・スタッフのモチベーションを落としたくないジレンマ・・

多くの店長から聞く悩みの一つに「スタッフ評価」の公平性の難しさがあります。スタッフがつけてきた自己評価が、こちらの評価と比べて高い場合、上司としては、自己を客観視してほしいという気持ちの一方で、モチベーションを落としてほしくないという葛藤が生まれます。数値で表せる部分は評価基準が客観的で動かしようがないため問題はありませんが、数値以外のいわゆる「コンピテンシー評価」あるいは「行動評価・能力評価」という分野においては、何をどう見るか、という点においてどうしても主観が入るなど、あいまいな点が多くあり、認識のギャップが生まれやすい傾向があります。

人間である以上100%店長評価が正しいとは言えず、且つ、勤務中スタッフの一挙手一投足を客観的にみているわけではない、という後ろめたさもあり、スタッフ自身が「私は~もしました!」と強く主張すると、店長としても「見落としがあったかもしれない・・」という気持ちも芽生えやすくなります。そこでつい、「では・・」と譲歩や妥協を始めると、すべてにおいて自分の判断に迷いが生まれやすく、それが他のスタッフにも波及し、結果的に評価に対し、店長自身、確信が持てなくなる、ということもあります。手続き上、採点をして人事に結果が上がっていくものの、評価の時期が近付くと店長の心理的な負担が大きくなるという悪循環に入ってしまうこともしばしばあります。

その気持ちは私の体験も踏まえ、よくわかります。評価によって確かにスタッフのモチベーションは多かれ少なかれ影響を受けます。上下で評価が一致していれば、問題はありませんがギャップがあったときどうするかを店長としてしっかり準備をしておかないと、その場しのぎになるリスクは高く、それが組織の信頼の背骨を揺るがすことにつながります。ではどのような準備をしておけばよいのでしょうか?3つのポイントで整理しましょう。

■ポイント1:期初にコンピテンシー項目に関し、具体的な行動目標を共有していますか?

まずは、あいまいな部分を早い段階で極力排除しておくことです。コンピテンシー評価は総括的な表現であるため、どうしてもあいまいになりがちです。そこで、各人の役職やグレードに応じ、店舗の中で担ってほしい役割(期待役割)、次のステップ(グレード)に行くためにできるようになってほしいこと等を踏まえて、
●特にどういう状況下でどういう行動を強化してほしいかと、その理由
を個々のスタッフに応じて店長から「期待値」として伝えます。
それに対し各スタッフが自分で強化すべき行動目標を掲げ、それを共有しておくことで、より公平に評価できます。

たとえば、”グレードをワンランク上げるには、自分の予算達成だけでなく、店舗の予算達成のために、現状を把握して、積極的に販売促進の提案を行ってほしい”という期待値に対し、スタッフが「毎日店舗の売り上げ状況をチェックし、〇〇のカテゴリーに関しては、着実にチームとして予算達成できるよう、他のスタッフのサポート、および競合状況リサーチ、提案を行い、毎週その効果を確認する」という行動目標を立てたとします。結果的に年間のカテゴリー予算を達成できなかったからダメ、ということではなく、そういう行動が習慣として身に付き、1年前に比べ、店舗全体の売り上げに対し常にアンテナを立て、積極的に貢献行動を起こせるようになったかどうかを評価する、ということです。

■ポイント2:何をどのレベルまで達成すると、どういう評価になるか、どうすればそれが達成できるか、を共有していますか?

次に、
●何をどのレベルまでできたら、どういう評価になるかを確認しておきます。

たとえば、ぬけなく、当たり前に、継続して提案ができ、その提案のうち、50%以上がその後の売り上げにつながったら、最高レベルの評価にします、などある程度の目安を伝えておくと、スタッフも理解しやすく、自己管理もできるようになります。
ただしそのハードルが高すぎると、「そこまではできない」という気持ちになりがちなため、「チャレンジすれば達成できないことはない」というレベルを話し合って設定することが大切です。当然人によって「できる、できない」のハードルは異なりますが、現在のグレードなども勘案して、「あなたの現在のグレードからいうと、成長のためには、このレベルを期待する」というラインを決めることは重要です。また、逆に「どうすればそれが達成できるか」について、一緒に作戦を立てることが何より重要です。梯子が見えなければ、登ろうとはしませんが、「こうすればできるかもしれない」という道筋が見え、且つできるようになれば、正当に評価してもらえる、という動機づけもしやすいタイミングであることを生かして、丁寧に計画を立てます。その結果として、1年後、all or nothingではなく、「最高評価には至らなかったものの、~に関しては、確実に1年前よりもできるようになりました」とお互いに達成を喜べる状態にリードできます。

■ポイント3:月に1回は立てた行動目標に対し進捗を確認し、サポートしていますか?

1年は長いです。スタッフからすれば、1年後に結果を知らされるのでは「それならその都度言ってくれればもっと早く軌道修正できたのに」という気持ちになりがちです。店長にしても評価の心理的負担を減らすには、年に1回結果のフィードバックをするのではなく、毎月進捗を確認し、軌道修正を早めに行える体制を作っておく方が効果的です。且つ、その都度状況を確認しているため、認識のずれも生まれにくく、評価に対する納得感や自分自身の確信も揺るぐことが少なくなります。

結果的に、評価の負担を減らすには、実は「期初の目標設定」が非常に重要であり、且つそれをこまめにフォローすることが一番の近道です。「忙しいのに一人一人にそこまでやるの?」という気持ちもあるかもしれません。しかし、「評価」は先述のようにスタッフのモチベーションに大きな影響を与え、且つそれをスタッフ成長促進の武器にできる、という最大のチャンスでもあります。それをないがしろにして、スタッフの継続的、あるいは角度のついた成長は望めません。言い換えると、評価という武器をスタッフにとってのやりがいや励みに効果的に活用できる店長こそが、組織全体から見ても、存在価値の高い店長といえます。

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