■No.2(アシスタントストアマネージャー(ASM)・店長代理・副店長)は、店長によって任されることがまちまちで戸惑う!
会社から正式に任命されたアシスタントストアマネージャー(ASM)でも、店舗、あるいは店長によって、任されていることや権限がまちまち、ということはよくあります。
店長は”店舗の業績を上げ続ける”という明確な責任があり、様々な判断においても店舗の最終責任者です。評価指標もほぼ定量化されていて、ある程度明確です。
それに比べてASMは、職務基準書(JD)に役割は記載されているものの、定性的なものが多く、且つ店長の考えによって幅があるため、ばらつきが出るというのが実情です。
その結果、NO.2は以下のような悩みを抱えがちです。
*正直、何をどこまでやればよいか分からず、結局その都度店長に言われたことをやる、という感じだった。1年ぐらいたってようやく、ここまでやればいいのかな、ということが自分なりに分かってきた感じ
*自分で判断して良いのかどうかわからないことも多かったし、判断して怒られたこともあるから、戸惑った
*店長不在時にNo.2としての判断を迫られたけど、どう判断して良いか分からず結局「店長が出勤したら」ということにした。するとスタッフから「何のためにASMがいるのか」と言われて苦しかった
*どこまで店長に報告して良いか分からなかった。当然業務上のことは報告するけど、スタッフが陰で言っていることを店長に報告するとスタッフは私に言わなくなる。ただ、中には暗に店長に伝えてほしいというケースもあって、バランスが難しい
*店長不在時に、特に問題は起きなかったからそのままにしておいたら、「ちゃんと報告して」と言われた。線引きが難しいと感じた
*店長不在時に、スタッフの一人が問題行動をとっていたため、他のスタッフから「注意してください」と言われた。ただ、店長でもないし、言い方も難しい。そう考えているうちにタイミングを逃して、スタッフが後から店長に「ASMはちゃんと注意してくれない」と不満を言っていると聞いた。
*店長からは「私が不在の時は任せたからよろしく」と言われるだけで、具体的な指示や指導はないから、毎回ふたを開けてみないと分からない
*百貨店の人に突然聞かれたことに答えられずにいると、「店長から聞いてないの?」と言われた。休みだから電話するのも‥とそのままにしておいたら後で怒られた
などなど。
要するにASMは
①店長やスタッフと比べ、自分で何をどこまでやれば責任を果たしたことになる、と明確にできない、あるいは状況を自分でコントロールできないストレスがある
②店長とスタッフの間に挟まって難しい立場と感じることが多々あるとのことでした。

■ASMの役割が不明でも店舗は回るけれど・・・
NO.2の役割が曖昧なままでも、お店自体は問題なく回っている、という状態はよく見られます。だからこそ、忙しい店長は、上記のようなASMの心の声に気づきにくくなります。つまり問題が表面化しないことが、問題なのです。ただ、そのまま放置すると・・・
●自分で適切に判断できない (判断基準が不明、判断の裁量が限定、でもマネージャーだからと言われる)➾ストレスが蓄積➾うまくいかないことが重なると、「自分じゃなくてもいいのでは」となる。
●「スタッフの時は気楽でよかった」と思い始め、役割に対するパッションが消えていく。
●「中途半端な位置づけで今後が見えない」という不満が静かに蓄積することで、店長とのパートナーシップが築けない。
ということが潜在的に進行していくことがあります。
表面的には問題がなくても、このままではASMと理想のペアを築くことは難しく、機能化や育成という点でも後れを取ってしまいます。
では、どうすればよいのでしょうか?
■できる店長のASM機能化ー2つの重要な実践ポイントとは?
お互いに役割認識に大きな乖離が生じないようにするには、まず何より大切なのは細かな業務の取り組み以前に「何のためにうちのお店にASMが存在するのか」「どうあることが理想なのか」をすり合わせることです。それも、ただ職務基準書にあることを共有するだけでなく、自店において具体的に「誰にとって、どういう価値を発揮するために存在するのか?」を多面的に洗い出すことが大切です。
なぜなら、
①お店の規模、スタッフの成熟度、店長の負荷、など、個別事情がある中で、役割を画一化できないから
例)都内のトラフィックが多く、売り上げ規模、スタッフ数も多い店舗におけるASMに求められることや裁量範囲と、地方店で地元固定客中心のある程度慣れたスタッフで構成されている店舗でのASMに求められる役割では、実態として大きな違いが生まれることがあります。
②”その都度、必要に応じてASMに指示を出せば・・”という考えでは、時間と負荷がかかりすぎ、ASMの成長が遅れてしまうリスクがあるから
です。
まずは大局的な観点で、役割をしっかり擦り合わせておけば、指示やフィードバックの効率も上がり、むしろ質を高めることにつながります。

では、できる店長は具体的にどのようにASMを育てているのでしょうか?しっかりした店長を複数輩出している店長に聞いてみると、重要なポイントとして以下の2つのことが挙がってきます。
1)ASMの位置づけと期待値を明確にし、共有する
ASMは、店長と共にリーダーシップ・マネジメント力を発揮して「店舗のビジョン・目標達成」を実現するという責任を果たすために存在します。
そのためには、目的に向けて店舗としてのPDCA(Plan-Do-Check-Action)のサイクルをきちんと回す必要があります。最終責任は店長ですが、店長も人間。強みと課題があります。それによってPDCAにムラが出てしまっては、強い店舗にはなりません。そこで、ペア体制をとることで、お互いに補完し合って安定的に店舗運営を行うことが可能になります。例えば、店長は計画立案(Plan)は得意だけれど、やりっぱなしになってしまうことが多いのであれば、ASMは、しっかりチェック(Check)をして、軌道修正(Action)をフォローする。あるいは、店長はスタッフをやる気にするのが得意だけど(Do)、計画(Plan)立案が苦手であれば、ASMは、KPI分析などを引き受けて、今何にどう手を打てばよいかのアドバイスをする、などです。
また、People Managementにおいては、どこまでの裁量を渡すかを決めて、それをスタッフとシェアしておくことが大切です。さもないと、ASMがスタッフに指摘をしても「店長でもないくせに」と思われて、効力が薄れます。そこで「店長が不在の時は、店舗管理(売上だけでなく、ルール遵守、接客クオリティ含む)においては、ASMが責任者であるから、ASMの指示に従うように」と事前に共有しておくことです。
逆に、ASMには、そのためにどういう判断基準を持って、どのように指導・管理すべきかを事前に教えておく、あるいは、具体的な事象に基づいて「あなたならどうする?」と聞いて、すり合わせておくことが求められます。手間はかかりますが、それこそが重要なOJTであり、育成であり、最終的に安定したお店運営を実現します。
2)店舗運営に役立つ情報を積極的に受発信する機能を発揮してもらう
上と下からいろいろ言われて板挟み、というのは受け身の発想が前提になっています。今の時代は”情報を握るものが、状況を制する”と言われるように、上からも下からも情報が集まるということは、そこに価値が生まれるということです。単に上からの通達を下に流す、下からの意見を上に流すのであれば、間を通さない方が効率が良く、誤解も生まれません。あえてASMを通すことに何の意味があるのでしょうか?そこに受け取った情報を価値あるものとして相手に渡す、という重要な働きが期待されます。
たとえば、スタッフから「店舗で今取り組んでいるキャンペーンについて、正直やる気になれない。店長にはこんなこと言えないですけどね」と打ち明けられたとします。それをそのまま店長に伝えるだけでは店長の仕事を増やすだけです。せっかくASMがいるのですから、スタッフにとっても、店長にとっても、お店全体にとっても価値を生めることは何かを考えることが大切です。あるASMはそう言われて以下のことを行ったそうです。
●特定のスタッフだけがそう感じているのか、他にもそういうスタッフがいるのかを確認する
●何がやる気を失わせているのかを探る(目的喪失?取り組み方?評価の仕方?など多面的に)
●何があると意欲、あるいは成功体験につながるのかを考える
●具体的な今後の取り組み計画(軌道修正案)を立てて店長に提案し、フィードバックをもらう
●了承を得たら、自分に権限を与えてもらうように交渉し、キャンペーンの軌道修正をする
●必要に応じて自分から店長にアドバイスを仰ぎつつ、キャンペーンを成功に導くことで、プロジェクトを進めるノウハウを身につける
●スタッフからは「相談して良かった」、店長からは「いろいろ気づいて、店舗を前に進めようとしてくれる」という信頼を得る
それが自信につながったといいます。
”ASMはあくまで出しゃばらず黒子に徹する”というのは昔の話です。今は、お店を取り巻く環境がめまぐるしく変わり、フレキシブルな対応が求められる時代。店長一人ですべてを掌握して、これまで培ってきたやり方でマネージするだけでは対応しきれないことが日々発生します。だからこそ、ASMの位置づけも進化せざるを得ません。まずはASMの習熟度に合わせ、何をどのレベルまで、なぜ期待しているのかをきちんと共有したうえで、業務を通して判断基準を確認し、任せる裁量を増やしていくOJT計画を立ててみましょう。そのASM育成ノウハウこそが、ブランドの資産形成につながっていくのです。
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