ラグジュアリーブランド店長ブログ

会社方針がコロコロ変わる!スタッフのやる気維持のコツは?:ブランド店長問題解決講座(104)

■トップが変わるとそれまでの方針も大きく変わり、ついていくのが”大変”!

”大変”とは、文字通り大きな変化を伴う事態で、何らかの摩擦が起こり、負荷が発生することを指します。
市場環境が変化し続けるのだから、自分たちも変化しなければ、という想いは、今の時代は店長にもスタッフにもある程度刷り込まれていることでしょう。中でも、ラグジュアリーブランド業界は多くが外資系ということもあり、トップ(CEO)の大半は3~5年、早ければ2年程度で交代するのがほぼ当たり前の状態です。従来のやり方がベストである、ない、に関わらず、トップが替わると新たな方針が打ち出されます。なぜなら、往々にして新しいCEOは、戦略・組織を革新し、売上拡大という成果を出すというミッションを与えられて着任しますから、何も変えないということは、仕事をしていない、ということと同じ意味になるからです。たとえこれまで着実に業績を伸ばしてきているブランドであっても、新CEOには”さらなる飛躍を”という期待がかけられますから、やはりあえて変化を起こすことこそがミッションともいえます。
当然、経営サイドに立つマネージャー、すなわち店長も、その意図を正しく汲んで、スタッフを新方針の実現に向けてリードし、成果を出すことが求められます。
ただ、現実には
*前社長の方針に基づき新たな体制・システムにも慣れ、スタッフも手ごたえを感じ始めたころに、トップ交代。”また一から”という気持ちになります。スタッフからも『前に取り組んでいたことはどうなるんですか?せっかくここまでやってきたのに・・。新任のCEOからは「過去に縛られるな」と言われてしまって。一生懸命やっても、どうせ数年したらオフィスの顔触れが変わって、また一からになるんじゃないですか?』とも言われて。正直、疲れます。
*「前任のCEOは”店長はしっかりマネジメントをするように”とのことだったので、管理ウエイトを高くしてきましたが、新CEOは、”店長も店頭に出て率先して販売するように”とのことで、売上を重視されるようになりました。どちらもおっしゃっていることはよくわかりますが、こうコロコロ変わると、なんだか振り回されている感じもします
という声もあります。
店長は会社とスタッフの間に立って、なぜそういう変化を起こすのか?を現場に浸透させる役割責任があるだけに、店長自身がぶれてしまうと、トップの考えも現場に正しく伝わりません。中途半端な取り組みは成果を生まず、現場は良くなるどころか、疲弊していく、という皮肉な結果になることもあります。では、できる店長は、変化に対しどう向き合い、且つ、店舗の発展につなげているのでしょうか?

■変化に振り回されるのではなく、自店の未来は自分で描く!

スタッフの育成に定評があり、お客様サービスにおいて百貨店からも高い評価を継続して得ているあるブランドの店長に話を聞きました。もうベテランの域に入りますが、その間にCEOの交代は約6回。1年で替わってしまったこともあるとのこと。新しいCEOが赴任するたび新しい方針が出て、それにのっとって店舗をマネージすることが必要でした。何が一番大変だったか?と聞くと、「スタッフに変化の意義を正しく理解してもらい、行動を変えてもらうこと」だったとのこと。
「一方的に『やってください』というだけでも、うちのスタッフは素直なので『わかりました』とやってくれます。ただ、それでは成長はしません。一つ一つの取り組みに意味があります。その意味を理解して行動することで、もっとこうしたらという工夫も生まれ、楽しく仕事ができます。そのためには、まず私自身が新しい方針の意図をどこまで深く汲み取れるかが重要です」。

その際、中心軸に置いているものがあります。それが”お客様にとって”です。その軸だけは絶対にブラさない、ということを決めて、とことん考えるとのこと。そこで、具体的にどういう考え方で、思考を深め、スタッフと共有しているのかを聞くと、以下の3つ指針が浮き彫りになりました。

■指針1:すべては「現在&将来のお客様にとってどうなのか?」

今自分が任されているブランド、及び店舗は、なぜ存在できるのか?を突き詰めていくと、シンプルに”お客様がいらっしゃるから”。どれだけ一生懸命取り組んでも、それがお客様にとって価値を生まなければ、お客様は去って行ってしまう。そうすると、お店は存続できない。それでは自分がここにいる意味がない。結局自分の真の評価者はお客様。そのお客様にとって価値を生むことであれば、一生懸命取り組む意味は出てきます。ですから、方針が変わって新しい取り組みが出てくると、お客様にとって価値を生むためにはどうしたらよいのかをあれこれ考えて、それをスタッフに伝えるようにしています。

■指針2:一定期間やってみて、どうしても成果が出ない時には、「こうしたらもっと良いのでは?」と提案する

もちろんそれでも成果が出ないことはあります。私たちの力不足もありますが、現場にいると、お客様ニーズと方針が乖離していて、”このままやり続けても、期待される成果にはつながらない”ということが見えてくることがしばしばあります。その時は、「これはやっても意味はない」ではなく、「どうすれば意図する成果に対しもっと近道があるか」を考えて、リテールマネージャーに提案したり、テスト的にやらせてもらえないかと相談します。もちろん反対されることもありますが、結構粘ります。なぜなら、成果が出ないかも、という気持ちで取り組むことで、本当に成果は出なくなりますし、何よりスタッフのエネルギーが無駄になります。「上が言ったから変えられない。仕方なくてもやるしかない」というのは責任転嫁にすぎません。店長である以上、私がスタッフに対して責任を持っています。ですから常に「責任は自分でとる」という覚悟で、経験を踏まえてやらせてください、と言います。リテールマネージャーも私の気性を知っているので、関係者からOKを取り付けてくれやすいですし、実際それで成果が出れば、上司も会社もハッピーになれますから。

具体例を聞くと、従来は「決定率(購買率)」が重視されていましたが、トップが替わって「担当顧客の来店予約獲得数」をカウントする、という方針が出ました。新作の入荷案内やキャンペーンなどのお知らせの際に「いつならお越しいただけますか?」と確認し、予約をいただくというもの。しかし、そこまで踏み込んだ接客をしてこなかったスタッフにとっては、むしろ押し付けのようになり、断られることが続いて意欲をなくしてしまいました。OJTも行いましたが、腰が重いのです。そこで考えたのが、予約獲得率を上げるための3つのポイントです。すなわち

①「自己開示の有無(お客様がご自身のことについてお話しくださったかどうか)」
②「試着回数(1回以上)」
③「次回の予告(○○ごろ、~が入りますから、その時連絡してもいいですか?の許可をとる)」です。
この3つは予約獲得率とかなり相関関係があると思ったので、いきなり「予約をとれ」ではなく、この3つがどれだけできたかをカウントして、結果として予約率にどういう変化があったかを見る、という取り組みにしました。
ただし、定着するまでに時間がかかるため、上司には「●か月間は、数字につながらないと思いますが、許してください」とお願いして、焦らず着実に取り組む計画に変更しました。すると、スタッフは自分たちで工夫しながら試着にリードしたり、お客様ごとに流れを事前に組み立てたりするようになってくれて、最終的には数字が安定してついてくるようになりました。

■指針3:”人はその人の5分の1の能力があれば批判できる”を肝に銘じる

正直「なぜ今この方針?」と思うことはあります。ただ、その時は自分に言い聞かせます。「では、自分だったら完璧な、成果がすぐに目に見える形で跳ね返ってくる方針が打ち出せるか?」と。ある程度このブランドを知っていて、お客様のことも分かっているつもりです。でも、見えていないことも多々あります。他店の状況、本国の中長期的なグローバル戦略、百貨店との交渉など。未知のことが山ほどある中、関係者(ステークホルダー)を考慮して、成果を厳しく問われる立場で方針を打ち出すことは大変なことだと思います。批判をするのは楽ですし、いくらでも説得力のある反対意見は言えます。しかし、結局は内部で批判し合っているうちに、お客様はよそのブランドに行ってしまうリスクがあります。私はこのブランドが好きで、守りたい、という気持ちがあります。ですから、批判に回すエネルギーは、「何ができるか」に向けるようにしています。

話を聞きながら、「自店の未来は会社次第」ではなく、会社は方向性を示しはするけれど、それにのっとりつつどのような店舗にするかは、店長次第という芯の強さが伝わってきました。

■コロコロ変わる方針の中に、変わらないものを見つける力!

もう20年近くブランド業界にいて時代の変化も、ブランドの変化も、そして人の変化もつぶさに見て来た店長。ただその中でも変わらないものもある、とのこと。且つ「それはこれからも変わらないと思います」と言います。

「私が思うのは、役職などではなく、一人の人として接していくことの大切さです。たとえば、CEOだから偉いし、言いたいことが言えない、ではなく、CEOだからこそおそらく悩みも深い。そこに対してどういう役に立てるのかを一生懸命考えていく。すると、相手もこちらを理解してくれるようになり、そこからいい関係性が始まります。それだけではなく学ぶことも多々あります。あるCEOが会社を離れて数年たったころ、百貨店でばったり会いました。当時は結構強く出られる方で、怖い存在でもありましたが、”あの時はいろいろ助けてくれてありがとう”と言ってもらえました。それぞれが会社を良くしようという想いは持っています。ただ、それぞれの視点からは見えないこともたくさんある。だから足りないところはお互いに補い合う、というのがチームですから。

もちろん、私にも苦手なタイプはいます。できれば近づきたくないな、と思う上司も(笑)。感情ですから仕方がないですが、逆にそこは外資系のいいところ。「一生じゃない、一瞬」と割り切っています(笑)。一瞬と思うと、気も楽になり、その一瞬の中に、それでも自分がいてよかったと思ってもらうには?を考えます」

この店長のようにそれぞれの立場に思いをはせることができる広い度量こそが、「大変」を柔軟にチャンスに変えられる原動力なのです。

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