■店長の責任は一人で引き受けるべきもの?
店長、特にブランドを担う店長が引き受ける責任は一言で言えば”重い”です。
簡単に誰でも今日から引き受けられる程度の責任であれば、現職店長も苦労を感じずにすむでしょう。
でも現実には、チャレンジングな店舗予算の必達が求められます。且つ、ブランドを担う分、顧客サービスレベルを含め、そのプロセスにおいて人、モノ、お金、時間、空間、情報の活用の仕方などあらゆる面で高い基準が求められます。
あるコスメブランドの店長が「いろいろなスタッフの考え方があり、それぞれに良かれと思って発信してくれたり、行動してくれたりしますが、それによって逆に考え方の違いでチーム内に軋轢が生まれたりして・・店長としての判断を求められますが、私も正解を持っているわけではないので、悩みながらの決断を下すことがあります。結果、後で本当にあれで良かったのかなあと悶々としたり・・でも、そういう雰囲気はスタッフの前では出せませんし。店長は孤独だなあって一人になったときにふと思ったりします」とのこと。
恐らくスタッフにはそういう悩みを感じ取られないように努めているのでしょう。
その奥には「店長として頼りにされる存在でなければならない=弱みを見せるわけにはいかない。なぜなら、そうするとみんな不安になってしまうから」という想いがあると推察されます。
今でも多くの本に、「優れたリーダーとは、部下から尊敬されるべきで、リーダーが優柔不断で決められないとか、リーダーが部下の前で弱音を吐くなど言語道断」というニュアンスで書かれていますし、決断力やポジティブな姿勢を見せることはリーダーには必要な要素であると思います。
一方で、時代の変化がここまで大きく、かつスピーディーだと、以前求められていたことがそのまま当てはまるわけではないということも事実です。
状況は刻々変わる、店長がすべての情報を瞬時にインプットできているわけではない、以前成功したやり方をとったら、今回は効果がなかったなど日常茶飯です。
そういう中で、店長だから、という理由で、あらゆる情報から必要な情報を的確に抽出して、的確なジャッジをして、成功確率の高い手を打ち続けるなど、スーパー店長でも至難の業です。
それをやりきろうとすれば、無理が生まれ、できないことが山積し、自信を無くして終わり、となります。それをいくら隠そうとしても、スタッフが見抜きます。店長は無理しているな、と。
難易度が高まり続ける中、求められる責任を一人で引き受けようと気負うこと自体に無理があります。
PDCA(Plan-Do-Check-Action)のサイクルを回すのでも、Planの変更を余儀なくされる状況、スタッフの多様化によって、任せ方もいろいろ気を遣わなければならない状況、人が足りずチェックが行き届かない状況、など、安定の時代とは異なる状況下で、店長一人で先を見通し、足元をしっかり管理し、などを一人でしょい込むことはむしろ店舗運営を行う上では、リスクと言える時代に入っているのです。

■誰と責任を分担し合えばよいの?
1.チームと責任を分担し合う
まずはチームとして責任を分担し合うという考え方が重要です。ただしいきなり丸投げではなく、店長として「自分でやれることとやれないこと」をきちんと仕分けて、やれないことに関しては、誰にどうしてもらうことで、責任が果たせるかを考えて、相談を持ち掛ける、サポートを依頼して任せるという働きかけも重要な店長としてのスキルです。
私が初めてチームリーダーになった際、スタッフはほぼ全員年上で、私よりもキャリアを積んでいるメンバーが大半でした。実質的な”名ばかりリーダー”です。
しかし、だから何もしない・できない、では私の存在意義がありません。会社からはチーム業績の向上や、リーダーとしての振る舞いを期待されましたが、メンバー個々に「私に何を期待しているか」をヒアリングすると、「別に特別期待なんかしていない」というそっけない返事。やっぱり期待されていないんだ、と落ち込みましたが、よくよく聴いていくと「リーダーだからって無理して頑張る必要はないよ。必要なことはフォローするから。それより、チームに貢献したいって思いは皆あるから、こうやって一人一人の想いを汲んで、やりたいことをやらせてもらえれば一番有難い」という答でした。
そういうチームのあり方もあるんだな、と考えさせられました。
それからは肩ひじ張らず積極的に「私としては~と思うのですが、○○さんなら、こういう時はどう判断しますか?それはなぜですか?」と聞いたり、おっちょこちょいな部分を「リーダーの癖にダメだなあ」と笑いながらフォローしてもらったり。
その分私も、このチームがどこよりもハッピーなチームになるには何が必要かをとことん考えました。皆がハッピーでいること、チームに誇りを持てていることが、私の一番の頑張りの源泉でしたし、自分がどう見られているか?など気がついたら気にしなくなっていました。
メンバーに恵まれたといえばそうですが、店長だから偉い、店長だから何でも知っているということはない時代です。スタッフ個々に自分より優れた点がある、その優れた点はチームのために活用させてもらう、という考え方が結果的にチームのハッピーにつながるのではないかと思います。
2.上司と責任を分担し合う
スタッフは新人ばかりで相談しづらい・・などメンバーからのサポートを引き出すことが難しい状況下では、一番要になるのは「直属上司」です。
もともと上司と部下は責任共同体です。お店のあるスタッフが責任を果たせなければ、チームでフォローし合いますし、最終的には店長の責任として、どうすればそのスタッフが責任を果たせるかを真剣に考えるでしょう。それと同じように、上司(リテールマネージャ、エリアマネージャー、スーパーバイザー)は、複数の店舗を管理していますが、一つのお店が責任を果たせなくても仕方がない、とは言えません。どの店舗もしっかり責任を果たしてもらえるようにするのが上司としての責任です。ですから、自店の責任を果たすためにも積極的に上司の持つノウハウやパワーを活用する、ということは店長に求められるスキルの一つでもあります。
ただしその場合、「どうすればいいですか?」と依存するだけだと、ただでさえ忙しい上司ですから「自分で考えて」と言われます。
上司を責任共同体、協力者として巻き込むには、きちんと情報を収集、分析したうえで「○○について、私としては~がベストと考えます。なぜなら~だからです。ただ、それで本当に死角がないのか?を教えてください」「それを実行するうえで~が障害になりそうですが、その場合~という支援をお願いすることは可能ですか?私としては~というメリットのために~というやり方が一番いいと思っているので、是非~をしていただきたいのですが」など、下準備をして依頼することが必要です。
しっかり考えたうえでの相談であれば、上司も「そこまで練り込んであるなら」と行動に移しやすくなります。
またうまく行った際には「おかげさまで」というお礼をしっかり伝えることで、「この店長のためにもっとできることはないか」を考えてもらいやすくなります。

■「巻き込み上手」の店長がもたらすメリットとは?
「私で本当にいいのかな」「店舗の状態が思ったようになっていないことに焦りを感じる」「マネジメントって本当に難しい」という店長の悩みをお聞きするたび、「その謙虚さがむしろ店長に選ばれた理由かも」と素直に思います。
「私がなって当然」という自信満々ほど逆に怖いものはありません。なぜならうまく行かないと必然的に周りに責任を押し付けがちになるからです。
ただ、謙虚すぎて反省ばかりでは前に進みません。その時は、原点に戻ることです。「私が店長でいること、私の存在意義って?」を自問自答してみてください。誰のために存在するのか?誰にどんな価値をもたらすことができたら、自分がそこにいた意味になるのか?を考え抜いてください。
私もマネージャーをしている時にトンネルに入って出口が見えなくなった経験は複数回あります。「私だから思うようにいかないのでは?」「別の人がやった方がずっとうまく行くのでは?」と悩みました。ただ、その際一人のスタッフが「一緒に働けて良かったです。頑張ろうと思えました」と言ってくれた一言にどれほど勇気づけられたか。
大きなことをいきなりやることはできないにせよ、一緒に働く仲間やお客様に「あなたで良かった」と言ってもらえる、幸せに感じてもらえることが、結局は一番のやりがいになる、それは顧客づくりと共通していると感じます。
チーム、関係者がこの店長と一緒に働けて良かったという状況づくりのために、肩ひじを張ることにエネルギーを注ぐより、一歩でも前進するために自己開示をしながら「巻き込み上手」になる方が、責任を果たすことにつながりやすく、一体感も生まれる。そのメリットは遥かに大きいと実感します。

★関連記事→アシスタントストアマネージャ―(No.2)を戦力化する3つのツボとは?:ブランド店長問題解決講座(69)
★お勧め本→Kindle&ペーパーバック出版!【ラグジュアリーブランド店長として輝き続けるための 5つの問い】,『新しい店長のバイブル~業績を上げ続ける店舗はこうして創る!』(PHP)
★ラグジュアリーブランド研修についてはこちら→ラグジュアリーブランド研修シリーズ




