■有能なアシスタントストアマネージャに恵まれるかどうかは運次第?
アシスタントという言葉を日本語に訳すと「補助」や「助手」。メイン(主役)が目標を達成できるよう、本人だけではカバーしきれない部分、すなわち足りない部分や弱い部分を手助けする、あるいは指示を受けてフォローを行う役割です。あくまで出しゃばりすぎず、目立たず、でも”気配り”はできる、という人が重宝されてきた歴史があります。
中にはそのレベルでとどまらず、ワンランク上の「補佐」として、メイン(主役)が正しい判断ができるよう、あるいは判断を誤らないよう、必要な情報を先手で提供するなど、戦略的なパートナー(参謀)の役割を担うレベルの人もいます。
このように「いてくれてそれなりに助かる」レベルから「頼りになって、なくてはならない存在」レベルまで様々というのが実情です。
アシストする側は一見表からは見えにくい存在のため、その重要性も今一つピンとこない面もあるかもしれません。
が、野球にたとえると、実はピッチャーの補佐役であるキャッチャー(捕手)の実力は相当に重視されます。
「キャッチャーが優秀なチームは勝率が上がる(安定する)」ということがデータでも証明されています。
キャッチャーはピッチャーのコンディション及びグラウンド全体を冷静に見渡してどういう球を投げさせるかを戦略的に考えてリードする役割で、目立ちにくいものの、チームを勝利に導くけん引役です。つまり、ピッチャー同様チーム全体において非常に重要なポジションです。あなたのお店のNo.2も同じです。
店長から見て、良いアシスタントストアマネージャーに恵まれるかどうかは”運”や”相性”という声を耳にすることもあります。しかし本当にそうなのでしょうか?それではいつまでたっても組織は安定しません。
そこで安定した店舗基盤を創るためにも、有能なアシスタントストアマネージャーを計画的に育成するステップを3つに整理してみました。

■アシスタントストアマネージャー育成の3ステップ
【第1段階】店舗管理の実務をマスターしてもらう段階
アシスタントストアマネージャー(ASM)になりたてだと店舗管理(数字・モノ・お金の管理、労務管理、本部・取引先とのやり取りなど)自体が初めてです。ですから、マネージャーとしての”判断業務”を任せる前に、まずは管理業務のルーティンを正確かつスピード感を持ってこなせるようになってもらうことに注力する段階です。先述のキャッチャーで例えると ピッチャーが投げたボールを、とにかくこぼさず「捕球」できる状態です。
この段階では、ASMからすれば指示されてやっていることと全体のつながりはまだ見えていないかもしれません。が、まずはミスなく完了させることに集中してもらうことで、逆にゆとりを創り出すことができます。
ただこの段階でスタッフ時代より強調しないといけないのは店長とのホウレンソウの重要性です。「もうASMなのだからいちいち報告は不要」という判断は禁物です。ASMだからこそ、従来よりこまめに報告、連絡、相談を行ってもらうことで、意思疎通も深まり、ミスも未然に防げて、成長が早まるのです。
【第2段階】先回りと提案でプロアクティブを目指させる段階
第1段階が進むと、余裕が生まれてきます。そこで、点でやっていたことがお互いにどういうつながりになるかを整理して伝えます。やっているからこそ、その意味も伝わりやすくなります。そこまでくると、次は指示される前に「次は何が必要か」を予測し、主体的に動く段階です。ここから単に「私がいない時にやっておいて」という補助を超え始めます。そこで改めて店長として何を目指しているのかという「ビジョン・目標」をしっかり共有します。それを実現するために、何ができるか、という視点でASM自身に、「やりたいこと・やれること」を洗い出してもらいます。
たとえば、店舗で取り組んでいるキャンペーンの進捗が計画通りいっていないことに対し、要因を分析し、結論として「取り組みの意義は店長から発信されているけれど、スタッフごとに受け止め方や理解度も違うので、再度個別に落とし込んで、もっとポテンシャルを発揮してもらい、必達を目指す」というタスクを自ら掲げて実行に移してもらうということです。
そのために店長はASMに対して
①スタッフの状態にアンテナを立ててもらう
②問題があればまず自分で原因を洗い出して対策案を立て
③たたき台で良いので、提案・相談をする
④そういうプロアクティブな行動を奨励する
ということはしっかり伝えておきましょう。あわせて
⑤提案の効果性と実行性で成果につながればきちんと評価する
ということも伝えておきましょう。
【第3段階】パートナー(理想のペア)として同じ視座を持ってもらう段階
この段階では、ASMは店長と精神的にほぼ対等になり、店長不在時にも安心して任せられるとともに、チームやプロジェクトをリードするうえで「頼れるパートナー(補佐/参謀)」に至ります。
リーダーである店長も人間である以上、当然完ぺきではありません。そこにASMがいてくれることで、より安定感のある納得性の高いリーダーシップが発揮できます。それはスタッフのためでもあり、お客様満足にもつながります。逆に、常に店長が手いっぱいで、相談できるパートナーもいないと、お店の停滞につながってしまうリスクもあります。ASMが育つことで、それを回避することができるのです。
なので、ASMはお店のビジョンの実現という大きな目的のために、リーダーの弱点をカバーし、リーダーが気づいていないリスクを未然に防ぐ存在として機能します。単なる仲良しではなく、時にはリーダーの暴走を止めるために「耳の痛い正論(NO)」を言う覚悟で理想のペア体制を目指すのです。
キャッチャーに例えるとピンチの時にはマウンドに駆け寄ってピッチャーを落ち着かせ、励まし、試合全体を勝利へ導く「正女房役」と言えます。
同時に、この段階はASMに「店長になってほしい」という声がかかれば、すぐに通用するレベルです。ASMが栄転でいなくなることで、むしろ店長の方が一瞬心細くなるかもしれません。ただし、ここまでASMが育ってきたプロセスでチームには大きな財産を残せるのです。すなわち、ASMの成長するプロセスを見せてきたことで、スタッフにも良い影響が及ぶのです。ASMの成長はそのまま組織の成長につながります。「あの人のようになりたい」というロールモデルを示すことができれば、店舗には次のASM候補が生まれやすくなります。戦力となっているASMを手放しても、次のASMを育てることができるという風土づくりこそが、店舗の安定基盤につながっているのです。
■あるディレクターの言葉:「必要なことは、ASM時代に学んだ」
スタッフ➾ASM➾SM➾リテールマネージャー➾リテールディレクターというキャリアを持つAさんと以前話をしていた時、「大事なことはASM時代に学びました。あの時期がなくて、いきなり店長をやれ、と言われていたら今の自分はないと思います」という発言がありました。具体的に聞くと「当時ついた店長に手取足取りマネージャーとは、ということを教えてもらい、いかに自分の視野が狭かったか、判断がずれていたか、甘い考え方だったか、を痛感させられました。厳しい店長でしたが、おっしゃっていることはごもっともで、反省半分、悔しさ半分で、「次こそは!」という気持ちで、トライし続けました。2年ほど一緒にやらせていただいたところで、他の店の店長にならないかというお話をいただいて、異動しました。厳しくしつけてもらったおかげで、異動先では自分がある程度思い描いた通りのお店作りができました。それがあって今につながっています。ただ、あとで聞いたら、次の店長候補を誰にするかという相談をRMから受けた際に、当時の店長が「Aさんならしっかり期待に応えてくれるだけでなく、他の店長もリードできるようになると思います」と推薦してくれたと聞きました。ASMという時期は、試行錯誤もできる時期で、受け身ではもったいないと思っています。店長の胸を借りて、やってみたいことにトライしてみたり、壁にぶつかったときの打開策を学んだり、有意義な時間です。だから私はいきなり店長になるよりも、ASMを経験した方がいいよ、と後輩には言っています」と熱く語ってくれました。

■成長段階を進めるためのポイント
あなたのお店のASMは3段階のどの段階でしょうか?
第1段階から第2段階に至るには「余裕を持って、周りをしっかり観る。視野を広げさせる」
第2段階から第3段階に至るには「店長と同じ視座(経営者目線)を持たせる」
ということを前提に日々働きかけることが、ステップアップの鍵になります。
その際、何より有効なのはOJT(On The Job Training)です。
店長として、なぜこういう判断を下すのか?あなたならどういう判断を下すか?をリアルな場面で一緒に考えるようにすることが最も実践的なトレーニングになります。
同時に、ASMと短くても深いコミュニケーション(問いかけ・傾聴含む)を図り、その判断基準やアイディアに耳を傾けることで、実は店長自身が様々なことに気づかされ、視野を広げることにつながっていくのです。店長として成長していくにあたっても、ASMの存在は貴重なのです。
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