ラグジュアリーブランド店長ブログ

Z世代スタッフとの価値観の違いを乗り越え、チーム力を最大化する4つのポイントとは?

■Z世代には、これまでの常識が通用しない?私たちがZ世代スタッフに合わせなければならないの?-店長の悩みは続く・・

近年、ラグジュアリーブランドの多くの店長が頭を悩ませているのが「Z世代スタッフとの価値観の違い」です。”世代差”と言ってしまえばそれまでですが、これまで、ブランドの世界観のアピール、顧客との関係構築、スタッフの育成などの基盤を強化しつつ、ブランドの発展を第一に頑張ってきた店長世代からすると、「ここまで頑張ったからこそ、今がある」という自負もあります。ですから、”日々市場環境が目まぐるしく変わる中、これまで同様、いえ、それ以上に頑張らなければその先のビジネスの発展はない”という良い意味での危機感、あるいは気概が知らず知らず体に刷り込まれているといっても過言ではありません。しかし一方、社会に出て数年のZ世代は、より個を尊重し、多様化を進めてきた時代に育っており、「皆で同じ方向を向いて頑張ろう!」という連帯意識を強く持つ必要性が上の世代ほどはなかった層とも言えます。(学生時代は部活も強制ではなく、コロナ時期はまさに他とは関われなかった世代)。もちろん、Z世代ということでひとくくりにはできませんが、これまで”多様な人と連携しながら同じゴールを目指すという経験が比較的少ない”スタッフに対し、店長として、どのようにチームへの貢献意識や売上への貪欲さを育てればよいのでしょうか?スタッフ側に悪気がないだけに、難しい問題です。そこで、できる店長が行っている4つのポイントを紹介したいと思います。

1. Z世代の価値観を理解する

できる店長いわく、「”Z世代の考えていることは理解不能”とか”あの人たちとは分かり合えない”で済ませず、まず、Z世代のスタッフが持つ価値観を興味を持って理解することが重要です。全員とは言わないものの、たとえば以下のような特徴を持っているという前提でスタッフを見ると、日頃なぜZ世代のスタッフがそういう言動をとるのか?という理解が深まります」とのこと。

  • 仕事は”自己表現の場”であり、人生の一部ではあるが全てではない:バーチャルも含め仕事以外に”自己表現の場”(推し活、ゲーム、ダンスなどの趣味・・)がある場合は、仕事はそのための資金稼ぎの場となる。そうなるとタイパが重視され、無駄に思えることをさせられたり、残業は意味はない、となる。あくまで自分ありきで、組織ありきではない。ただ、どうせなら、仕事においても自分の興味のあることややりたいことに携われる確率が高ければ、それに越したことはないと考える傾向が強い。
  • 目的意識が強い:意味が分からないことをするのは時間の浪費。何のためにこの仕事をするのかが明確でないと、積極的になりにくい。
  • 柔軟な働き方を求める:ワークライフバランスを重視し、過度な競争よりも快適な環境(コンフォートゾーン)を好む。スキルアップや成果を出す重要性は分かっていても、歯を食いしばってまでする努力は自分にとって意味が見出しにくい。

できる店長が言うには、こういう価値観を踏まえると、”悪気がある”とか”仕事に対する心構えができていない”ということではなく、「何に価値を置くか」の違いであり、彼らは彼らの常識の中で生きていると受容的に受け止められるようにもなる、とのこと。同時に、”自分の価値観が絶対”という考え方を反省する機会にもなるという言葉は、私自身にも響きました。

となると「お店の目標だから」と、単に売上目標達成を当然のこととして発信しても乗ってはこない、ということは分かるため、彼ら・彼女らが納得できる形、あるいは、一人一人が大切にしていることと連動させて、店舗の目標を共有することが不可欠です。

2. チームの一員としての意識を育てる

Z世代のスタッフに「チームのために貢献したい!」という気持ちを強めてもらうには、店舗のビジョンやミッションを彼らが【共感できる】と感じられるように落とし込むことが重要です。以下は、できる店長がやっている例です。

●ブランドのストーリーをリアルなエピソードを添えて、感動を持って伝える
Z世代では「親がこのブランドバッグを持っている」など、幼いころからラグジュアリーブランドを身近に感じて育ってきている人も多く、”ある程度知っている”という前提でブランドを見ています。しかし、本当の奥深さまでは分かっていないことも多く、だからこそ単に知識としてではなく、店長や先輩が「実際に誇りに思っているこのブランドが大切にしている価値観・お客様に提供している特別な体験」などを、具体的なエピソードを添えて伝えるようにしています。こちらのパッションが素直に伝わり、「私もこの感動をお客様に伝えたい」という気持ちになってもらうことで、自らより深く学ぼうとする姿勢が見られるようになることも多々あります。

●チームメンバーからの賞賛・感謝を体験してもらう
自分の接客が売上につながったり、お客様から感謝されたりする経験は重要ですが、そうすることでチームメンバーが喜んでくれたり、感謝をしてくれるという経験はさらにインパクトを持ちます。日ごろフォローしてもらうことが多いだけに、”もしかして足手まといかも”と悩むスタッフにとっては、逆にチームに対し役に立て、且つきちんと「助かった」「ありがとう」「○○さんのおかげ」「勉強になります」等のフィードバックは、着実にチームの一員としての自覚を育てます。

●個々の強みを活かせる環境づくり
Z世代は個人のスキルや得意分野を活かした働き方を好むため、「この人はSNSが得意」「この人はコーディネート提案が上手」など、個々の強みを評価し、役割を持たせると、より意欲的に取り組むようになります。実際、それは他のメンバーにとっても非常に役立つことが多いのも事実です。先輩たちが「まだ何も知らないくせに」ではなく「教えてあげることも多いけど、教えてもらえることも多い」という気持ちで接するだけでも、Z世代にとっては自分の居場所が実感でき、価値を感じられる職場と映ります。

3. インセンティブと評価を最適化する

がつがつ売上を上げるためにこの仕事を選んだのではなく、お客様におもてなしをしたい、喜んでもらいたい、と考えているZ世代は多くいます。その人たちに売り上げを通しての貢献意識を高めるには、「頑張って成果を出すことで、自分自身にとってのメリットが実感できる」という仕組みが必要です。

  • 目標達成による具体的なメリットの提示
    がつがつしたくない、の裏側には「誰かを出し抜いてまで」「お客様に嫌われてまで」「だめだったときに惨めな思いをするぐらいなら」などの自己防衛が働いています。ですから、それらの自己防衛を溶かしていく必要があります。たとえば、「個人ではなく、チームとして売上目標を達成したらインセンティブがある(みんなのためにも頑張ろう)」「お客様にとってもメリットが生まれる目標である」「自分でもがんばれば達成可能な目標と思える」「目標達成のためのサポートが明確にある」などの仕掛けが必要です。それがうまく行くと、素直に打ち込んでくれ、且つ成功体験が次の意欲につながります。
  • 成果の見える化とフィードバックの強化
    成果は自信につながります。「良かったね」だけでなく、売上や接客の成功事例を可視化し、「このスタッフのこういう提案が〇〇万円の売上につながった。それは日頃からこういう努力をしていたから」など、具体的なフィードバックを定期的に行うことで、「私の強みはこれなんだ」と自覚してもらい、その行動を強化してもらえます。

4. コミュニケーションを強化し、信頼関係を築く

Z世代は育ってきた環境にもよるのだと思いますが、トップダウン型の指示よりも、対話を通じた納得感のあるコミュニケーションを重視します。そこで、

  • 定期的な個別ミーティングの実施
    「どんなキャリアを築きたいか」「仕事を通じて何を得たいか」など、個々のスタッフと対話し、モチベーションの源泉を理解しておきます。
  • フラットな関係構築
    一方的な指示ではなく、「あなたのアイデアを生かしたい」と伝え、共に店舗を良くしていく仲間としての意識を育てると、柔軟なアイディアをどんどん出してくれたりします。

この2つのポイントはこれまで以上に重要になってきていると感じています。

■Z世代スタッフへの推し活(推しへの愛情を深める)が、育成を成功に導く?!

いかがでしょうか?Z世代のスタッフを「目標達成に主体的に貢献してくれるチームプレイヤー」に育てていくには、
①価値観の違いをどう埋めるか?ではなく、違って当たり前、という前提で相手の価値観とその背景を理解し
②彼・彼女らが共感できる働き方をデザインする取り組みが鍵になります。
ブランドの魅力を共有し、個々の強みを活かしながら、彼らにとって働くことが「自己実現の場」となるよう導くことが、店長に求められる新たなリーダーシップといえます。店長の悩みが続くということは、同時に、店長の挑戦も続く。だからこそ、お店、組織の発展につながっていくのです。
できる店長いわく、「あれこれ考えて働きかける中で応援したい気持ちも強まって・・・それはある意味、推し活に共通する要素かもしれません(笑)」

★関連記事→Z世代が求める価値ある接客サービスとは?~一客入魂~:ブランド店長問題解決講座(75)

★お勧め本→『新しい店長のバイブル~業績を上げ続ける店舗はこうして創る!』(PHP)

★ラグジュアリーブランド研修の情報はこちら→ラグジュアリーブランド研修

PAGE TOP