■店長の3つのタイプとは?
時代の変化とともに、上司と部下の関係性も大きく変わり、”四の五の言わずにやれ!”という「トップダウン」はもはや過去の遺物と化し、今は部下一人一人の強みを生かし、部下が主体的に行動するのをサポートするために上司がいる、ということが共通認識になりつつあります。ゆえに、上司の重要な役割として、部下が期待される成果を出せるよういかに”効果的な支援者になれるか”、ということが重要になっています。
その際、私が見てきた店長の支援のスタンスややり方に3つのタイプがあります。前提として、どのタイプの店長も部下の成長の重要性は理解しており、そのためにも自分が熱心に対応しないといけないことは重々理解しています。
タイプ1:管理・チェック中心の支援
●よく見られる行動パターン
①あるべき姿を明確に設定し、そこに到達できるよう働きかける。
②できていないことに対し、「これではいけない」とばかりに、どうしたら速やかにできるようになるかを考え、具体的な指示・行動を出したがる。
③部下がそのやり方に戸惑い、自分なりのやり方をしようとすると、「それでは効率が悪い。このやり方が一番いい」と押し付ける傾向にある。
④できているかどうかをこまめにチェックし、成果が出るまで、粘り強く同じことを言い続ける。
⑤指標が改善されるなど結果が伴うことで、自分のやり方に対する自信をさらに深めていく。改善が見られないと部下のやる気を疑いがち。
●基本的なスタンス
①あるべき姿に到達させることが、部下にとってもハッピーなことで、そのために最もいいやり方を教えてあげなければならない
②遠回りさせたり、違うやり方で失敗することは部下にとっても良くないことで、それを見過ごしにはできない
③結果が伴えばやる気は出る、だから結果が出るまで言い続けることが親切。さもないと途中で挫折してしまう可能性が高い
④これまでにもこのやり方でうまくいったので、汎用性のあるやり方であり、それが自分の責任を果たすことになる
タイプ2:優しい保護者タイプ
●よく見られる行動パターン
①基本的に部下がやりたいこと、興味があることに取り組める環境づくりを大切にする。部下がその環境に適応し、前向きに取り組む様子を温かく見守る。
②困ったことが出てきたとき、あるいは出てきそうになると、すっと手を差し伸べてヘルプしようとする。常に快適な環境にいられるよう配慮する。
③部下の不満にも耳を傾け、自分がどう改善してあげられるかを考えて、手を打つ。
④進捗が思わしくなく、目標未達成で終わったとしても、部下が前向きに取り組むこと自体に意義があると考え、良い点をほめて意欲を継続させようとする。
⑤部下が余計なことを考えなくて済むよう、余計な情報は与えず、自分のことに専念できるように配慮する。
●基本的なスタンス
①部下自身が前向きに仕事や目標に取り組むことが何より最優先。結果はいづれついてくる。
②そのためにも、ほめたり、障害物を除去したりしてあげるのが上司の役割。
③結果が伴わなくても落ち込んだりしないよう、励まし、良い点に目を向けさせることが大切。
④上司はプレッシャーをかけたり、あれこれ介入せず、優しく見守ってあげることで、部下はのびのびと力を発揮する。
タイプ3:部下の課題達成の伴走者
●よく見られる行動パターン
①様々な角度から、部下の成長課題(成長するために今一番取り組むべきこと)を一緒に考え、設定する。
②その課題を達成する意義、達成のためのアクションプランを一緒に考え、設定する。
③上司として、どのような支援ができるかを考え、約束し、あとは部下の行動を見守る。
④部下が約束したこと、やるべきことをやっていないときには、きちんと指摘し、その理由と対策を考えさせ、再スタートさせる。
⑤部下自身に目標達成をあきらめさせない。
●基本的なスタンス
①部下自身が主体的に設定した目標・課題を達成するプロセスで成長がみられる。ゆえに、どのような目標・課題を設定するかが重要である。
②設定した目標・課題に対して集中して取り組めるよう、アクションプランをしっかり立てさせることが重要。
③意義を認めて決めたことは、妥協せずにやりきらせることが成長を促す。
④自分で設定した目標をやりきるサイクルを習得させることが継続的な成長と自信につながる。
■あなた自身はどのタイプに近い?
部下自身に対し「どのスタイルが好きか」と聞けば、成熟度や置かれている状況も異なることから、様々かと思います。ただ、前提として、上司と部下は親子関係ではなく、チームの共通目標を達成するために、主体的にアクションプランに沿って行動する責任があります。その中では「何を達成するのか」「どのように達成するのか」「そのために何が一番大事なのか」をお互いに深く考え、統合しておくことが不可欠です。
その軸がない、あるいはあいまいなゆえに、上司としては熱心に支援しているつもりでも、結果として「せっかくこんなに面倒を見ているのに、部下は期待に応えてくれない」「こちらの親切を仇にして返す」という空回りや不満につながってしまうことがしばしばあります。
そういう意味で、タイプ3の「部下の課題達成の伴走者」というスタンスは将来にわたって部下の成長を促す基盤になります。
私自身もいろいろな上司のもとで働いて感じたことは、実は”一番安心感がある状況”というのは、”上司に好かれているか””評価されているか”という他者視点のみに振り回されることなく、今の自分の達成すべき目標、課題、計画が上司と共有できており、それをベースに上司と常に進捗上のいろいろなことを話し合って仕事をしていた時だと思います。叱られたり、ほめられたり、もありますが、「この道で間違いない」という軸がぶれないことが一番の安心感の砦であると実感します。そういう意味でも定期的に自分の支援スタイルをセルフチェックする際の参考になればうれしいです。
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