■うちのリテールマネージャーは現場からの信頼がない?
あるラグジュアリーブランドで販売スタッフとしてスタートを切ったAさんは、いずれはマネージメントに携わりたい、という強い想いもあり仕事に邁進してきました。頑張った結果、この春、晴れて目指していた店長職に抜擢されました。任されたお店は少人数ということもあり、スタッフ一人一人と意識的にコミュニケーションをとり良いチーム作りを心掛けてきました。おかげさまで数か月経過した今「やるべきことをきちんとやっていけば、このお店も昨年以上の実績が出せる」という確信がもてるようになりました。
そこで、先日上司にあたるリテールマネージャーが店舗に立ち寄った際、時間をとってもらい「スタッフもせっかく頑張ろうという前向きな気持ちになってくれているので、ついてはこういうサポートをしてほしい」ということを伝えました。その際リテールマネージャーから「考えてみる」と言ってもらえたため、Aさんはスタッフにもそれを伝え、「会社も協力してくれるようだから、是非昨年越えにチャレンジしよう!」とポジティブなメッセージを送り続けました。
しかし、数週間たっても依頼したサポートの動きが見られないため、Aさんとしては「忙しいから忘れてしまっているかもしれない」と不安になり、再度「先日の件ですが・・」と確認を入れました。その際リテールマネージャーからは「他の店舗のことで忙しくて、そこまで手が回らない。そもそも確約したわけではないし、まず自分たちでやれることをとことんやってみてほしい」と言われました。また、「Aさんの店はもっと○○の商品が売れるはずだから、そこに注力して売り上げをつくってほしい」と言われました。期初に何をどれだけ売る、ということを確認し合ったにもかかわらず途中で突然方針がころころ変わることにもAさんは戸惑いを覚えました。先輩店長にさりげなく相談してみると「Aさんはまだ店長経験が浅いから分からなかったかもしれないけれど、うちのリテールマネージャーはそもそも現場から信頼されていないから」と言われ正直ショックを受けました。また、このような些細なすれ違いが数回続いたことで、Aさんは徐々にリテールマネージャーに対して「上司なのに~してくれない」「どうせ△△と言われるなら、言っても仕方がない」と思ってしまい、気がつくと最低限のホウレンソウしかとらなくなっていました。
■リテールマネージャーを良きパートナーにする5つのポイントとは?
レポートラインからすると、リテールマネージャーは店長の上司にあたり、評価者でもあります。また、上司である以上、指示には従うよう期待されます。
しかし、上下関係とはいえ、現実には”店長ースタッフ”という関係性とは異なる関係性が私たちとリテールマネージャーの間には存在します。
たとえば
★共通目標を達成するために、それぞれがマネージャー(管理者)として自律的(専門的)に自分の役割・責任を果たすことが前提となる
★日ごろ一緒にいない分、意識的にお互いに必要な情報提供・支援をしあうことでよりスムーズに共通目標達成に貢献する
★お互いに説明責任・報告責任を果たし、速やかに変化や問題に対処できるようにする
など、あくまで”自立”を前提に、お互いに専門領域で強みを発揮し合い、共通目標を達成する関係性です。
店長は自店舗のスタッフ育成に負荷がかかりますが、リテールマネージャーはエリア全体の業績に責任を持つなど網羅する領域は広く、大変さは同じです。
それを考慮すると、「上司だから~してくれるはず」という考え方で相手に期待をしてしまうとAさんのような状況に陥ってしまいます。
そうではなく「仕事上の重要なパートナーとしてどう動いてもらえるようにするか」を考えて相手を動かすスキルを磨く方が実ははるかに効果的です。
たとえばAさんの状況であれば以下の5つのポイントを押さえて行動するだけでも、関係性は飛躍的に良くなります。
①リテールマネージャーが店舗に立ち寄るのを待つだけではなく、自分から必要なタイミングで必要な情報を提供する。そのためのツールをフル活用する
(週報・月報・イベント等の報告の際に、店舗の+面、予想される問題点、解決の取り組み、必要な支援などを端的に伝えるスキルを磨く)
②状況変化に先手で対応できるよう、会社から発信される情報が自店に与える影響を紐づけて考える癖をつける。分からない点はポイントを絞って具体的に質問する(~があるということは、自店でも~の準備をしておいた方がよい、ということでしょうか?など)
③Give & Take:自分から助けを求めるだけでなく、リテールマネージャーの置かれている状況を把握する。そのための情報収集を意識し、支援できることは積極的に提案する
(今、何でお忙しいのですか?何か店舗としてできる支援はありますか?)
④支援を依頼する際は、それを行うことによる会社全体・相手にとってのメリットを明確にする
(~という支援をしていただくことで、~ということにつながり、結果的にそのノウハウを展開できます。ひいてはそれが~につながります)
⑤できていないことを責めるのではなく、どうすれば可能になるかを一緒に考える
(依頼したことが難しいとおっしゃるのは、要因として何がありますか?私たちでできることはありますか?)
Aさんが本当に店長として成功したいのであれば、スタッフのためにもお客様のためにも、最も深く関係するパートナーであるリテールマネージャーと良好な協力体制を作れるスキルを磨くことが近道です。先輩店長のアドバイスも貴重ではありますが、より大局観をもってみんながハッピーに働ける環境づくりに向けて、まずはネガティブな先入観に支配されず、新しいやり方を目指すことでリテールマネージャー自身にも良い影響を与えることができるのです。
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