前回のブログで、信頼関係構築にあたって店長として越えなければならない4つのハードルの1・2を確認しました。
今回は後半のハードル3・4について一緒に考えていきます。
ハードル1・2を超えて、スタッフの中に「感じがいいうえに、やるべきことをきちんとやるリーダーだな」という安心感が生まれ始めました。安心感が生まれれば、それだけ余計なストレスを感じる必要がなく、業務に集中できます。では、上司に対し現状で本当にすべて満足か?と言われるとそうではありません。「やるべきことはきちんとやっているけれど・・別に何か”特別”という感じはしないね。まあ、こんなものっていうか・・」という心理です。
もちろんそれで大きな問題になることは少ないのですが、お互いに決められたことをきちんとやって・・というレベルで安定してしまうこわさがあります。
本当の部下の成長、店舗の成長を味わって「この店長のもとで働く経験が役に立った」という実感を持ってもらいたいのであればもうひと踏ん張り必要です。
それが第3のハードルなのです。
【ハードル3】自分にとって本当に一緒に働けて良かったと価値や意義を実感できる上司かな?(価値や意義はスタッフによって異なる)ー その期待に応える出方をする
ここが本当に難しいハードルで、惰性では到底超えられません。また一度うまく行ったからと言っていつでもうまくいく、というものでもない、というのが現実です。
しかし、だからこそこのハードルを越える努力をすることは、スタッフや店舗の成長だけでなく、リーダーとして店長自身の成長に大きくプラスになると考えます。
難しいことだけに、様々なタイプやキャリアの部下がいる中で、いきなり焦って全員の信頼を勝ち取ろうとする必要はありません。まずは一人ずつ着実に、というステップを踏む方が成功確率は高いと考えます。
先日話をした店長も「まずはチームで影響力のある人に対し、より深い信頼関係を築くには?を考え、じっくり腰を据えて取り組もうと決意し、結果的に1年かかりましたが、今では心から頼れるパートナーになってくれて、本当に助けられています」と言っていました。
具体的に行ったことを聞くと、以下の7つのポイントが挙がりました。
①その人自身のことを深く知りたかったので、面談の際などに興味関心をもっていろいろな質問を重ねていった。(例)いつごろからなぜファッションに興味を持ったの?など
②それに関連して、将来どうなりたい?これから先は?ここで働く一番の動機は?など「教えてほしい」というスタンスで共感しながら聴いていくことで本音を掴めた。
③そこからどの程度仕事に対してパッションを感じてやっているのか、一番意欲の出る動機づけのポイントは何かなどを掴んでいった。
④できるだけそのスタッフの強みが活きるような仕事の割り当てや業務の依頼をし、その際も「~という強みがあるから」という言葉を添えるようにした。
⑤逆にリーダーとして自分自身が今抱えている課題も共有し、助けてほしい時には率直に「~をお願いしたい」と弱い面も見せた。
⑥お願いしたことをしっかりやってくれた際には、心から「あなたがいてくれて本当に助かった。私自身本当にありがたい」と言葉で伝えた。
⑦すべてにおいて「一緒に~しましょう」と伝え、失敗した時も「一緒に解決しましょう」というスタンスを貫いた。
この状況下で心が動かないスタッフはいないのではないか、と思わせる店長のエネルギーの注ぎ方です。且つ、操作ではなく、店長として本当にパートナーとしてやっていきたいというパッションがその原動力です。だからこそ、それを感じ取ったスタッフの前向きな姿勢がチームにポジティブに伝染し、徐々に「今回の店長で本当に良かったね」というムードが店舗に生まれました。もちろん実績によって裏打ちされる必要はありますが、やるべきことをやっているという基盤の強さがあるため、成功確率は高いと言えます。
【ハードル4】非常に充実している。できればこのままの状態が続くといいな・・
最後のハードルは信頼関係も構築でき、皆で協力して共通目標に向かって協力して取り組める状態の中で生まれるハードルです。できるだけいい状態は崩したくない、というのが人間の心情です。が、そこに溺れてしまうと知らず知らず”守り”が強くなるリスクがあります。店長という立場で、中長期先を見据え、スタッフ一人一人の成長も考慮した際に、「あえて変化を受け入れてどこまでやれるかを試してみよう」と揺さぶりをかけることで、適度な緊張感を維持し、停滞させないという姿勢がカギになります。
具体的には人事異動や担当替えを機会に新たなチャレンジをさせる、新人を受け入れる、ストレッチ目標を設定する、など自ら変化を起こし、試行錯誤の中で協力的にやらざるを得ない状態を創り出すということです。
「常に成長する姿勢を失わない」すなわち、部下と共に成長しようとする姿勢を見せる背景には、誰もが一人の人間として皆未完成であり、お互いに助け合ってこそ価値を出せ合える、という深い理解があります。
実際に私もそういう店長に何人もお会いし、「私一人ではできないことを一緒にチャレンジしてくれる、このスタッフたちこそが私の宝物です」という力強い言葉を聞いて、”いい出会い”とはこういうことを言うのだ、と教えらています。
★信頼される店長とそうでない店長を分ける4つのハードル(前半)
★おススメ本→ 『新しい店長のバイブル~業績を上げ続ける店舗はこうして創る!』(PHP)
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