ラグジュアリーブランド店長ブログ

リピート(再来店)率向上の極意とは?:ブランド価値を高めるサービスデザイン(3)

■激変の中でお客様争奪戦は益々シビアに・・

経済の低成長が続き、若者人口が減り続ける中、日本におけるビジネスの将来を考えるとリピーターを創ることは重要課題であり、多くの店舗で再来店(リピート)率を上げるべく様々な努力を重ねています。
競合店がひしめく状況下で選ばれ続けるためには、”囲い込み作戦”として新作のご案内はもとより、イベントへのお誘い、特典のご用意、パーソナルなおもてなし、など年々対応もレベルアップしており、高い基準の中でのお客様争奪戦となっています。

争奪戦

しかしどのお店を選ぶかを決めるのはお客さまです。
お客様は日々様々なブランドからたくさんの情報通知や勧誘を受けます。スマホには24時間365日ひっきりなしに情報が流れ込んでいます。
各ブランドのインフルエンサーも魅力的な発信をし、レヴューもいろいろ。目移りしても仕方がない状況です。
環境もめまぐるしく変わる中、自店舗の再来店率を上げるには何が必要でしょうか?

あるブログに「お客様を囲い込むなんて古い発想。だってお客から見れば囲い込まれたくもないし、それを感じると逃げ出したくなる」というコメントがありました。そう、知らず知らず私たちは「自店舗でいかにお客様を囲い込むか」という命題に縛られ、「お客様を逃がさない」という想いに取りつかれてしまっていたりします。しかしこれはあくまで売る側、企業側の発想であり、狭い領域での評価指標です。

お客様の側に立ってみると、“買い物ぐらいは「自由」にしたい。自分がいいと思うものを選びたいし、必要以上に介入されたくないし、縛られたくない。せっかくたくさん選択肢があって、だからこそ買い物も楽しいのである“と考える人も多くいます。
であれば、大切なのは目の前のお客様を何としても顧客として自店舗に縛り付けることではなく、当店にわざわざいらっしゃったお客様には「他にはない価値を感じる体験ができた」と実感いただき、その体験をお友達に広めてもらうことで、自ブランドや自店に好意や興味を持っていただけるお客様を増やすことではないでしょうか。

■急がば回れ!お客様の記憶にとどめてもらう体験をゼロベースでデザインするには?

その場ではすぐ購入にならなくても「どうしようかな」「何か欲しいな」と思ったとき、これまでのポジティブな情報の積み上げによって「せっかくだったら○○を見てから考えよう」「●●で買おうかな」と頭に浮かべてもらう、そういう人の母数が増えることで結果的にブランド全体の売上アップに貢献できます。ブランド店 店頭接客 コロナ後

これからの時代は、リアルとネットの融合が前提となるため、「オンラインサイトからではなく自店で買ってもらわなければ!」と限られた場だけで何とかしようとしても限界があります。本当の意味でお客様の行動や心理を理解した上で、ブランドとお客様の接点すべての中で、自店舗が果たす役割を再度見つめなおし、デザインしなおすことが必要になります。

エンゲージメントクリエーター

たとえばSNSでつながる世界では”新鮮な情報、自分だけが知っている情報、皆にとって役立つ情報”を発信したい、という欲求を持っている人が多くいます。「インスタ映え」というキーワードはまさにその心理を投影しています。その人が「へえ~」という情報やリアル体験がそこにあれば、SNSに投稿され拡散につながる確率は高い。SNSのつながりは一つのコミュニティであるため、同じように共感したり、へえーと思っていただけることが多いからです。
最近はネットで下調べをして来店するケースが多く、ある程度のブランド知識や商品知識、売れ筋などはすでに理解している人が多い中、それを超えてあなたのお店で“今日来ていただいたお客様”に提供できる「へえ~」は何でしょうか?

自分達にとっては当たり前のことかもしれませんが、お客様の立場に立ってみれば「へえ~」と思うことは多々考えられます。

たとえば見るからにブランドに慣れていないお客様との会話の中で「実は私上京したばっかりだからちょっと緊張してて・・・」「え、就職で、ですか?おめでとうございます。お差支えなければどちらから?」「仙台です」「え、仙台ですか?実はうちには仙台出身のスタッフが2名もいるんですよ!」「へえ~」「二人とももうすっかり東京人ですけど」「私もそうなれますかね」「きっと。東京生活で困ったことがあったら何でも聞いてくださいよ。仙台出身のスタッフと一緒にお教えしますよ」「ありがとう」

こういうやりとり一つでも、その人にとっては「東京で思いがけず××で親切な店員さんに会った」という“つぶやき”になるかもしれません。「いいね!」がつくと、より自分がいいと感じたお店への愛着が強まる。それも人間心理です。(実際、これは新入社員研修でミステリーショッパーを行ってもらったときのエピソードです。彼女はこのブランドが好きになったので、通勤バッグを買いました。ファーストブランドという位置づけで考えると、“今は不安だがあの店員さんから買うことで、このバッグを持つと明るい気持ちで仕事に向かえる気がしたから奮発する”とのことでした。それを聞いていた周りの新入社員も「へえ~」と好印象を持った様子でした)

あるいは「みんな知ってる?●●はこうやって組み合わせると~というコンプレックスを解消できるんだよ。今日店員さんに教えてもらった裏技!」なども「へえ~」の体験です。ということは私たちは自店で販売している商品の知識だけをインプットしていては限界があります。
お客様がどういうことに困っていたり、どんな情報を欲しがっているか、あるいはどんなことに興味を持っているかを掴んで、それに対応できる幅広い知識や人脈を日ごろから蓄えておくこともこれからの時代には重要な武器になります。(そんな時にもデジタルツールは強い味方!)
そのためには、常に私たち自身が高い情報アンテナを立て、お客様からもたくさん生きた情報をいただく貪欲さも必要です。

エンゲージメントクリエーターリアルな場面でインタラクティブ且つエモーショナルな会話ができる貴重な機会を与えられているのが店舗の販売スタッフ、言い換えるとクライアント・エンゲージメント・クリエイターです。
お客様の生活や買い物をより豊かなモノにするために、目の前のお客様にとって価値ある体験をデザイン・提供することで自ブランドが展開する世界へお客様をいざない、長期にわたってブランドとの絆をぐっと深めることができます。

DX,AIの進化は私たちをサポートしてくれますが、”感情を汲み取って対応する”、ということは確かにロボットではできない、プロのスキルが求められる素晴らしい仕事なのです。

★関連記事:サービスデザインでブランド価値を高める(2)

★お勧め本→ 『新しい店長のバイブル~業績を上げ続ける店舗はこうして創る!』(PHP)

★ラグジュアリーブランド研修の情報はこちら→ラグジュアリーブランド研修

PAGE TOP