ラグジュアリーブランド店長ブログ

売上げが伸び悩むスタッフを見事に復活させるカギとは?:ブランド店長問題解決講座(26)

■努力が数字に結びつかないスタッフ、どうしたらいい?

意欲があるからこそ採用されて店頭で働くスタッフ。しかし、現実には販売スタッフは大きく2層に分かれます。
1つは、マスク越しではあっても「コロナ、大変でしたね~」という共感を含め、お客様と会話を弾ませ、着実に売り上げにつなげているスタッフ。
もう1つは、積極的にアプローチするものの、空振りに終わり、思うような数字につなげられていないスタッフ。
当然、前者は「次の人にも楽しく接客してお買い上げいただこう」という好循環に入り、後者は「次こそ!」という焦りから逆にスムーズに接客できず、空振り。それによる悪循環に入り、どんどんモチベーションの差が大きく開いてきます。
店長としては売れるスタッフに対してはほめる要素が多々あるのでさほど苦労しませんが、がんばっているのに成果が出ず、そのことでどんどんネガティブになっていってしまっているスタッフに対し、どのように対応すればよいか気を遣うところです。

「もっと~してみたら?」「○○さんはこうして売れたから、あなたもやってみたら?」「ポジティブに考えてがんばろう」とアドバイスすることは大切です。且つ、それで翌日からガラッと変わってくれるのであれば問題はありません。しかし現実には往々にして、「はい」「がんばってみます」「そうですね」と口では言っていても、行動が伴わず、店長から見るとそれがまた気になって仕方がない、という状況に陥ることもしばしば。
結局は「どんな風にサポートしてあげれば、このスタッフの売り上げにつながり、自信をもってもらえるのか?」「プライドを傷つけずにやる気になってもらえるか」をあれやこれや考えざるを得ませんが、当然答えは1つではありません。

ただ、このようなケースは店長にとっては、目先の数字だけでなく、スタッフが新たな環境下で売れ続けるために何が必要かを中長期視点で掘り下げて考えて対応するチャンスでもあるのです。
そのためには、まず事実をもとに「なぜがんばっているのに購買につながらないか」の要因を徹底的に洗い出すことが大切です。
努力の仕方だけでなく、努力の方向性そのものにずれはないか?何をやっていて、何をやっていないのか?日ごろの行動や接客を観察することで、本人も気づかない事実をきちんと見ていく必要があります。そのうえで、さらにその奥の要因を掘り下げられるかどうかがカギです。

■売り上げに伸び悩んでいるスタッフを見事に復活させた事例

私が伺ったその店舗では、顧客を創るためにも「お客様にアプローチしたあと、すぐ商品の話をするのではなく、アイスブレイクで心を開き、お客様がお話ししやすい空気を創ることが重要である」というトレーニングを行い、やり方も教えてきました。

理由として、以前はインバウンドで売れていたため、商品説明だけでも数字につながっており、それが当たり前と思っていた矢先に、コロナに見舞われ、インバウンドは消滅。日本人の顧客も少ないため、数字を上げるためには、基本から再度見直す必要がありました。ちょうど店長も替わり、新しい店長は粘り強くお客様との関係構築スキルを高めるべく、トレーニングに精を出していました。

にもかかわらず、私から見ても該当スタッフ(中堅・そこそこの売り上げで停滞)はアイスブレイクを丁寧に行っておらず、すぐに商品をもってきて説明に入っている、という接客パターンを変えられていません。結果、売り上げは年々下がっています。しかし、店長はそれを責めるのではなく、スタッフの接客を観察し、その行動の奥にある要因をいくつも洗い出してみたのです。たとえば、

*「涼しくなりましたね」とスタッフから声をかけても、お客様の方からははっきりした反応がないので、気まずくなり、「今日は何をお探しですか」といつものパターンに入ってしまっていることがわかりました。そこで、
→反応が薄い時の次の質問や話題が用意できていないのではないか?
→事前にお客様を観察して、「こういうパーソナルなお声がけをしよう」という準備をしていないのではないか?
→売り上げを意識しすぎて、スタッフ自身も心を開いてお客様とお話をしたい、リラックスしていただきたいという気持ちで臨むという“余裕”まで至っていないのではないか?・・・などなど考えられる要因を洗い出します。さらに、
→以前はインバウンドや目的買いの方がもっといらっしゃって、そこまでしなくてもスムーズに売り上げにつながっていた
→逆に「旅行中だから」と急がれるお客様も多く、「無駄に時間をかけてはいけない」という思いで接客をしていた
→アイスブレイクをしようとしても、話材があまりなく画一的になってしまい、自分でも面白くないと思ってしまう
→あまり効果的なアイスブレイクの体験がない、モデルも見ていない、見たとしても自分にはできないと思っている
・・・とその奥にある要因も影響している可能性は高い、と推察。

ただし、上記はあくまでそれは仮説の域を出ないため、該当するスタッフと対話をしながら「もしかして~ということはない?」と本音を確認してみたそうです。スタッフも思い当たることがあれば、「あ、それが原因かも」と自分の無意識の行動を振り返っていたようです。

二人は対話を通して一緒に手を打つべきポイントを絞り込んでいき、最終的には、「練習不足」という結論に至ったそうです。
すなわち「わかっているレベル」と「瞬時に自然にできるレベル」は大きく乖離しています。それを乗り越えるには「準備と練習」しかない。そこでアイスブレイクを本当のスキルにするためのゴールを設定し、プロセス目標を決めて取り組み始めました。プロセス目標とは、「毎週1回ロールプレイを行う時に、苦手なお客様役に対し、少なくとも2分間会話をとぎらせずにできるようにする」などです。

人の意識を変えるには、小さな成功体験を積ませ、自信を持たせる。その際、単なる偶然ではない成功体験につなげるには、やはりスキルの体得は必須です。効率よく体得するためには、「計画的に練習する」。そのためには、“ここ!”というポイント(ツボ)を押さえて、反復練習すること。店長はスタッフに無駄な努力をさせないためにも、スタッフの言動から掘り下げてそのツボが何かをクリアにする。それこそがスタッフの行動の変化、結果の変化、そして意識の変化につながるのです。

結果として、1か月たったころからスタッフのアプローチがより積極的且つ明るくなり、お客様も会話を楽しまれるようになりました。それに比例して決定率だけでなく、リピート率も改善がみられ、一番はスタッフ自身が手ごたえを感じ、自信をもってプロアクティブに接客に入るようになりました。私がお会いした時も、そういうオーラが出ていて、人は変わるものだなあ、と実感しました。

■復活のカギとは

店長の重要な仕事の一つが、スタッフの可能性を引き出し、環境に柔軟に適応できるように変革を促進することです。
今回のコロナ前・中・後のように従来の習慣だけで通用しなくなった時がそれに気づくチャンスです。
「あのスタッフはプライドが高く、自分のやり方にこだわって変化を受け入れない」「以前はバリバリやっていたが・・」いう声をきくことは多いのですが、変化適応のスピードにおいては個人差が出やすいのも事実です。ただ、これからもっともっと様々な変化が常態化し、スピードも増します。となればこの店長のように“スタッフの変化を効果的に促すスキル”を磨くことも、これからの店長により求められる重要なスキルではないでしょうか。

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