■インバウンドで大きく左右される売り上げ。ただ一歩先は不透明!
日本におけるラグジュアリーグッズの売上に占める顧客割合を見ると、円安等の影響も相まってインバウンドに追うところが非常に大きいのが実情です。
「有難い」の一言ですが、一方で様々な要因で、明日も今日と同じような勢いで来店される保証はない、という点で、日本人のお客様以上に先行き不透明にならざるを得ない状況もあります。実際、昨対150%以上の来店があったかと思えば、翌月60%に落ち込むこともままあります。
その要因も複雑に絡むため、即座に手を打てるわけではありません。
すなわち、ただ有難いで依存してしまうことで、足元の基盤がもろくなっていくリスクも常に併せ持っています。
且つ、その購買傾向もどんどん進化を遂げています。
日本の若者同様
ITリテラシー(能力)が高い。自らもインフルエンサーになる。☞瞬時に体験が幅広く伝わる
選択する際、「本質」に価値基準を置く。☞その人のこだわりに響くかどうかが重要
オンタイム(ずっとつながっていて)で仲間とコミュニケーションをとる。☞画面越しに相談する第三者がいる
独自性を追求したがる。(社会も成熟し、個性尊重の時代に育った)☞自分をより引き立たせてくれるもの、など、価値にこだわる
少し前まで発展途上と言われたアジアの国々ですが、日本が失われた30年と言われる中、日本に来られるアジア系の富裕層~中間層では、上記の特徴が顕著に出るとも言われます。
たとえば「誰もが持っているもの」ではなく、「自分のこだわりに合うもの」、上昇志向も強く、買い物も受け身ではなく主導権をきちんと持つ。などなど。
当たり前のことですが、日本に世界中から様々なお客様がお見えになることで、市場に地殻変動や新たなインパクトをもたらしています。
■現在、そしてこれからのインバウンド対応に必要なこととは?
一方で、もしかしたら私たち自身、知らず知らず醸成している思い込みがこの地殻変動とずれている可能性もあります。
たとえば、「日本人のお客様の方が細かな点も含めいろいろこだわる。財布のひももきつい。だからしっかり話をし、信頼を得て、提案するという労力をかけていかないと顧客になっていただけない。」という前提で、スキルを磨き、情報を得てきめ細かな対応を心掛ける。
しかし他方インバウンドのお客様に関してはどこかで「所詮、短期滞在。一過性。日本人よりもこだわりが少なく、流行や見た目で気に入ったものがあれば買っていただける。だから(言葉の壁を除けば)日本人より接客は易しい」と錯覚することがある、ということです。
なぜならついこの間までそういう接客で売れていたから。
しかし、時代の流れ、他国のキャッチアップは想像を超える速さで進んでいます。
先日、あるブランドのスタッフ曰く
「アジアからいらっしゃるお客様はちょっと前と比べても、明らかにこだわりを明確に持っていて、妥協しない。素材等に関しても質問されるし、きちんと答えられないと購買につながらない。若いお客様ほど、トータルファッションを考えぬかれていて、インフルエンサー含め、情報も豊富。単に「人気ですよ」と言ってこちらが勧めたから買う、というケースは少ない」とのことだった。
これは単に顧客層の広がりによって財布のひもが以前ほどゆるくない、という要因だけではありません。
アジア各国は今や日本を抜く勢いでインターネットが生活の隅々に入り込み、物質的にも豊か且つ便利になっています。情報スピードも本当に早い。また学習熱もすごい。つまり常に最先端を目指す風土が醸成されているのです。
そんな中で育った人たちであることを考えると、学習スピードは何倍も速く、あっという間に日本も凌駕されつつあります。
すなわち過去の先入観や固定観念はすぐにくつがえされてしまう勢いで変化しているともいえるのです。
■どうもてなすと効果的?
パーソナライズがキーワード、と言われるように、今後AIのパワーも借りてより個別化、多様化が進みます。
だからこそ、インバウンドであっても「一過性」と割り切らず、それぞれのお客様とより個人的なつながりを作る努力が求められます。
たとえば、すでに中国語が堪能なスタッフは実践していると思いますが、中国から見えたお客様に対して製品の話だけでなく「中国のどちらから?」「これからどちらへ?」と聞くだけでも、個人的会話のきっかけになります。
中国も広い。地域によって言葉も慣習もタイプも異なる。そこに一歩深く興味をもって話しかけるだけで、人対人のコミュニケーションのきっかけが生まれるかもしれません。
ただ、その際必要になるのは、私たちの側にある程度の相手の国に関する知識・情報であり、それがないと話が続きません。「教えてください」も重要ですが、学んだことはスルーさせないでしっかり武器として蓄えていかないといけません。
となると、日ごろから少しずつでも店舗に来られるお客様の国について知識を得たり、シェアすることが意外と重要なポイントになります。
「旅行客で時間がなさそうだから・・」と無駄なくすませる接客だけでは、次につながりません。まずは一声かけてみて反応を見ることからスタートすることがチャンスにつながります。
たとえば、あるスタッフはそういう会話からスタートして、今では定期的に来てくださる関係だけでなく、友達もどんどん紹介してもらって優良顧客として育てています。「今度中国にも遊びに来て!私の家(豪邸らしい)に泊まっていいから」とも言われるんですよ、と笑っていました。
一見面倒なことのようですが、受け身ではなく目の前のお客様を通して他国の文化や世界の動きに興味を持つことが私たちの視野を広め、多様性への受容度を高めてくれ、お互いの架け橋の一歩になるのです。あなたのお店はいかがですか?
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