ミレニアル世代とは?
2019年のラグジュアリーグッズの売上高を見ると、その35%はミレニアル世代が占めており、今後2025年にはそれが45%に上ると試算されているという。特に最近はこの若年層の伸びが著しく、売り上げアップにも貢献しているとのこと。
ミレニアル世代とは「1981年から1996年に生まれた人」と定義されるように、2020年時点では24歳~39歳の層である。
実際、日本でブランド製品を積極的に買っていくインバウンドも中心層は中国をはじめとするアジアの20~30代のお客様である。
特徴としては、「デジタルネイティブ」という環境に育ち、以下のように、それまでの古い(?)世代(現時点で40代以上の層)とは一線を画す価値観・ライフスタイルを持っているといわれる。
ITリテラシー(能力)が高い。自らもインフルエンサーになる。
選択する際、「本質」に価値基準を置く。
オンタイムで仲間とコミュニケーションをとる。
社会課題への意識が高い。
脱・会社依存。
独自性を追求したがる。
日本が失われた30年と言われる中、中国では経済躍進の中で豊かさを享受してきた一人っ子世代がちょうどこの世代に当たる。特に日本に来る富裕層~中間層では、その特徴が顕著に出る。
「誰もが持っているもの」ではなく、「自分のこだわりに合うもの」。
上昇志向も強く、買い物も受け身ではなく主導権をきちんと持つ。などなど。
当たり前のことだが、若い世代を通して地殻変動が市場に新たなインパクトをもたらしている。
中国のミレニアル世代のお客様に求められる対応とは?
一方で、もしかしたら私たち自身この地殻変動に気づかず、過去の延長線上の思い込みで接客をしている可能性がある。
たとえば、「日本人のお客様の方が細かな点も含めいろいろこだわる。財布のひももきつい。だからしっかり話をし、信頼を得て、提案するという労力をかけていかないと顧客になっていただけない。」という前提で、スキルを磨き、情報を得てきめ細かな対応を心掛ける。
しかし他方インバウンドのお客様に関してはどこかで「日本人よりもこだわりが少なく、流行や見た目で気に入ったものがあれば買ってもらえる。だから(言葉の壁を除けば)日本人より接客は易しい」と錯覚することがある。
なぜならついこの間までそういう接客で売れていたから。
しかし、時代の流れは速い。先日、あるブランドのスタッフ曰く
「アジアからいらっしゃるお客様はちょっと前と比べても、明らかにこだわりを明確に持っていて、妥協しない。素材等に関しても質問されるし、きちんと答えられないと購買につながらない。若いお客様ほど、トータルファッションを考えぬかれていて、インフルエンサー含め、情報も豊富。単に「人気ですよ」と言ってこちらが勧めたから買う、というケースは少ない」とのことだった。
これは単に顧客層の広がりによって財布のひもが以前ほどゆるくない、という要因だけではない。
中国は今や日本を抜く勢いでインターネットが生活の隅々に入り込み、物質的にも豊か且つ便利になっている。情報スピードも本当に早い。また学習熱もすごい。つまり常に最先端を目指す風土が醸成されている。
そんな中で育った人たちであることを考えると、学習スピードは何倍も速く、あっという間に日本をも凌駕していく。
すなわち過去の先入観や固定観念はすぐにくつがえされてしまう勢いで変化しているともいえる。
ミレニアル世代、どうもてなすか?
ミレニアル世代はより多様化が進む。固定観念では通用しない。だからこそ、インバウンドであっても「すべて一過性」と割り切らず、顧客とより個人的なつながりを作る努力が求められる。
たとえば、すでに中国語が堪能なスタッフは実践していると思うが、中国から見えたお客様に対して製品の話だけでなく「中国のどちらから?」「これからどちらへ?」と聞くだけでも、個人的会話のきっかけになる。
中国も広い。地域によって言葉も慣習もタイプも異なる。そこに一歩深く興味をもって話しかけるだけで、人対人のコミュニケーションのきっかけが生まれるかもしれない。
ただ、その際必要になるのは、私たちの側にある程度の相手の国に関する知識・情報であり、それがないと話が続かない。「教えてください」も重要だが、学んだことはスルーさせないでしっかり武器として蓄えていかないといけない。
となると、日ごろから少しずつでも店舗に来られるお客様の国について知識を得たり、シェアすることが意外と重要になる。
「旅行客で時間がなさそうだから・・」と無駄なくすませる接客だけでは、次につながらない。まずは一声かけてみて反応を見ることからスタートすることがチャンスにつながる。
たとえば、あるスタッフはそういう会話からスタートして、今では定期的に来てくださる関係だけでなく、友達もどんどん紹介してもらって優良顧客として育てている。「今度中国にも遊びに来て!私の家(豪邸らしい)に泊まっていいから」とも言われるんですよ、と笑っていた。
一見面倒なことのようだが、受け身ではなく目の前のお客様を通して他国の文化や世界の動きに興味を持つことが私たちの視野を広め、多様性への受容度を高めてくれ、お互いの架け橋の一歩になるのではないだろうか。
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