ラグジュアリーブランド店長ブログ

NPS(ネット・プロモーター・スコア)アップにつながる接客とは?:ブランド店長問題解決講座(33)

■ネット・プロモーター(顧客推奨)の威力とは?

 

Amazonで買い物するあなた。何かを買うか買わないか迷ったときには「レコメンド」を見て、Goodが多ければ、「よし!」という気持ちになって購入した、という経験はありませんか?また、自分でも気づかなかったものがレコメンドであがってきて「ああ、こういうものがあるのか」から、知らず知らず買っていた、という経験。周知のようにレコメンド機能は人の購買心理・行動に非常に大きなインパクトを与え続けています。

しかし一方で若者の中には「ネットの書き込みは裏でお金をもらって仕事として書いている人がいたり、そもそも信用できないものも多く紛れ込んでいる」とシビアに見ている人も増えてきました。そんな中で本当の意味で威力を発揮するのは、やはり信頼できる友達や知り合いの「~はお薦めだよ」と言うレコメンドと言えるでしょう。

以前はそのレコメンドパワーを利用しようと「お友達やご家族を紹介していただくと謝礼を差し上げます」という紹介キャンペーンがマーケティングでよく使われました。
しかし、人間とは不思議なもので、キャンペーンなど意図的な利害が絡むと逆に「紹介」に責任感が生まれて負担に感じたり、利己的に紹介していると思われてせっかくの良い関係性が壊れることを恐れ、期待ほど効果を生まないとも聞きます。

裏を返せば純粋に「私、これ好き」「あ、私も」という何気ない会話やつぶやきこそが、第三者の興味を引き出したり、試そうとする行為に導きます。そこには無理強いはなく、あるのは「いい体験をしたという情報をシェアしたい」という気持ちだけです。

これからの時代において、ブランドのお客様を増やしていく、売り上げにつなげていくには、こういう「いい体験のシェア=レコメンデーション」をにらんだ働きかけが重要です。
いい体験をしたと感じた人がそれを仲間にシェアする→自発的に「試したい」と思う人が出てくる→その人がブランドを試して、期待通りの経験ができる→さらに評判は広がっていく→そこで価値ある体験を提供し続ける→企業として期待した以上の成果が生まれる、というサイクルです。
それは会社としての努力もありますが、販売スタッフ、言い換えるとクライアント・エンゲージメント・クリエイターの存在価値が思う存分発揮された結果と言えます。

それを数値化したのが「ネット・プロモーター・スコア」、通称NPS。今では多くの会社がスタッフが自分の接客を振り返りできるという目的もかねて導入しており、実際に効果を発揮しています。0~10点という範囲でどの程度実際に知人に勧めたいか、を聞くものですが、同じ商品を買ってもそのプロセスにはお客様それぞれの思いがあるため、「これさえやっていればスコアが上がる」というものではありません。

では、安定して高スコアを上げている人は何が違うのでしょうか?

ロールプレイング撮影

■価値ある体験創出の具体例

私がお会いした高スコアを維持しているスタッフの話では、最初から数値を意識して接客をしているわけではない、とのこと。

実際にそのスタッフの接客を受けてみると一番印象に残るのは「会話の広がり、パッション、リード力」です。財布を見ていたはずなのに、気が付いたらバッグ、洋服、しまいには帽子、サングラス、といくらでも会話が広がり、気が付いたらショップ全体をスタッフと一緒に会話しながら回遊していました。結果、そのブランドの世界・こだわりを五感で感じることができました。お店を出るときには、特別な出会い、体験ができた満足感が深く残り”この特別感を誰かと共有したい!”という強い衝動にかられました。そうそこでNPSをつけるとすれば、文句なく「10点+α」です。

もちろん繁忙時間帯ではそれだけの時間をとることはできない、という制約もあるでしょう。しかし、今やすでにどのブランドも一定レベル以上の感じの良い接客をしてくれる中で、「誰かに強く勧めたい!」という気持ちにさせる”何か”を創り出さないとNPSも意味がありません。

そこでそのスタッフが工夫していることを参考にすると

お店や商品の随所にちりばめられているブランドのこだわり、素晴らしさをエピソードとして語る(たとえば、床材ひとつでも、サングラスの柄の曲がり具合でも、些細なところにブランドのこだわりがちりばめられてあり、そこに気付いていただくことで”特別感”をさらに感じていただく)

お客様と共感する部分を膨らませる(自分の話も入れ込みながら、お客様と同じ視点に立って商品を見ることで、一体感が生まれるうえ、会話も弾む)

③とにかく各アイテムにとじず、歴史、イノベーション、デザイナー、文化などあらゆるジャンルを通してブランドの素晴らしさを俯瞰いただけるよう、日頃からインプットを欠かさない。自分の感動体験を逆に自分がプロモーターになってお客様に伝える

そう、まずはスタッフ自身がネットプロモーターとして、確信をもってお客様に伝えることがスタートで、そのために「誰よりも広く、深くブランドの素晴らしさを掘り下げて、強い愛着を持つ」ということが原点であることを教わりました。

もちろんそれでもうまくいかないこともあります。ただ、その経験から、さらに何ができるのかを考え続けるからこそ、ブランドだけでなく、スタッフ自身の魅力が増し続け、ファンが途切れないのです。

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