<項目>
・KPIとは店舗の健康度測定
・”できる店長”のUPTをアップさせる具体的方法
■KPIとは店舗の健康度測定
KPI(キー・パフォーマンス・インディケーション)は、特に店舗の健康度を測定するうえで非常に有効です。平均客単価、セット率、決定率などが細かく出ることで、何が強みで、何が課題かを素早く掴むことができます。
“見た目や印象”という感覚的指標ではなく、「数値による見える化」のツールとして、KPIは大きな武器です。KPIを意識することで「努力すればそれだけ着実に結果につながる」ということが体感でき、「もっとやれば、もっと素晴らしい結果になる」と信じて継続することが可能になります。
店舗の予算達成やビジョン実現のために、スタッフに負荷のかかる施策を展開しなければならない、という場面はよくあります。
「~のために~をしてください」と言えば、スタッフは指示通り動いてはくれますが、慣れないことは長続きしないことも多くあります。
その都度粘り強く注意・指摘してやらせる方法もありますが、お互いに心理的負担は増大します。
その時、スタッフにやらされ意識ではなく主体的且つ継続的に取り組んでもらうために活用できるのが、KPIなのです。
■”できる店長”のUPTをアップさせる具体的方法
店舗の売り上げ=入店数×買い上げ率×客単価(=商品単価×販売点数)
Aさんの店舗では、KPIについて学習する前は「店舗予算がいった、いかない」だけで一喜一憂していました。
が、KPIを毎週チェックするようになってから、Aさんは以下のような、より具体的な取り組みができるようになったといいます。
①売り上げが悪い時でも、いきなり焦って何らかの施策を打つのではなく、まずはKPIに分解して実態を掴む。すなわち健康診断を行う。
②そのうえで、何が強みで、何が弱みかをスタッフと共に見える化する。
③さらに「特に今はどこに手を打てば売り上げ改善につながるのか?」を絞り込む。
④最終的に重要課題を克服するための施策を一緒に考えて取り組む。
<具体例>
●自店舗のUPT(一客あたりの販売点数)1.18 ☞ 全店舗の平均1.22 ☞ 全体平均より0.04低い(同規模の店舗と比較しても低い)
→0.04は一見些細な差に見えますが、1か月のお買い上げ客数が平均300組であることから、もしUPTが1.22販売できていれば、366点販売できたはずです。しかし現実は、354点。その差は12点。商品単価が10万円であることを考慮すると、12個×10万円=120万円チャンスを逃しているということです。そのまま放置すると、年間を通しては、120万円×12か月=1,440万円の差となります。
→その重要性を確認した上でAさんは
①UPTを0.04上げるということはどういうことかを考える。☞ 1か月間でお買い上げいただけた300組のうち、2点お買い上げいただいている方が現状54人いらっしゃる。それを66人に増やす。つまり今より毎月+12名以上の方に2点お買い上げいただけるように働きかける。☞ 1か月を4週に分けて考えると、「毎週+3名の方に2点ご購入いただけるようにする」ということ。それを目標化する。
②1点で終わっているケースと2点以上販売できているケースを徹底比較し、その要因(候補)をいくつか洗い出し、一つずつ検討していく。
③結果的に”スタッフのスキルによって結果に差が出ている”とわかれば、スタッフの具体的なスキルの向上や積極的な行動を促す方法を考える。
(例)コーディネートの知識、納得感の高いお勧めの仕方、お勧めするタイミング、さりげないフォロー接客の仕方、そのための準備のあり方、などなど。 →それを現状に即し、個別状況も踏まえて支援計画を立てる ☞ スタッフがお客様に合ったスタイリングを考える力を磨くことになり、お客さまともしっかり会話して信頼を獲得することにもつながる、という意識あわせをして計画に沿って取り組む。
④KPIの推移を見ながらより効果的なやり方を研究する。そうすることで、環境が厳しくなってもきちんと顧客を創れるスタッフが育ち、店舗としても動じない強いお店になれる。UPTが高いということは、その証明にもなるため、一丸となってしっかり追いかける
AさんはUPTを「実力指標」ととらえ、アップを狙っていくという共通目標に対し、スタッフも意図をよく理解して積極的にお互いの接客に対するフォローも行っていました。
真の体力づくりと同じで、それが当たり前の習慣となり、店舗風土も変わっていきます。
KPIを診断ツールとして上手に活用しているAさんのお店は、“しなやかで、且つぶれない強さ”を感じさせるお店でした。
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