ラグジュアリーブランド店長ブログ

派遣、アルバイトはチームの一員?それとも・・チームパワーアップにつなげる3つのポイント:ブランド店長問題解決講座(77)

■ミステリーショッピングをしたら、接客してくれたのはほぼ派遣スタッフだった!

先日ある会社からミステリーショッピングを依頼され実施したという知人から「事前にスタッフの名前を知らされず、訪店した際、真っ先に声をかけてくれたスタッフに接客をしてもらった。そのフィードバックを返したら、8割が派遣スタッフだと後で分かって苦笑いだった」という話を聞きました。知人曰く「それが今の実情だと思う」とのこと。

アフターコロナ&円安も相まって訪日客が記録を更新するレベルでショッピングに来てくださる有難い状況で、どこのブランドもスタッフ不足で悲鳴を上げている状態と聞きます。コロナで”不特定多数のお客様を相手にする仕事””土日休みではない仕事”を希望しない人も増え、ただでさえ販売員不足が深刻化しており、ここへ来て会社同士の引き抜き合戦も熾烈になり、人材は枯渇状態。結局、頼れるのは即戦力となってくださる派遣スタッフやアルバイトスタッフ。入れ替わることによる負荷は若干かかるものの、新卒とは異なり概要を理解してもらったらあとはOJTでOK。日々感じよく接客してもらえるだけでも本当に有難い存在です。だからこそ派遣・アルバイトの方も、社員同様に、気持ちよく働いてもらえる環境を創る責任が受け入れ店の店長には期待されます。

一方、当の店長の皆さんもそれぞれに悩みはお持ちです。もちろん「想定以上に今回来ていただいた派遣スタッフが意欲的で、感謝、感謝です。私たちも学ぶ点が多く、できれば長くいてほしい」という声も聞く一方で、「うちでは20代の派遣スタッフが多いけれど、正直、社会人としての基礎的な考え方やマナーをしっかりとは学んできていないためか、知らないまま仕事をしている印象がある。それでは困ると思って注意をしたいが、注意された経験も少ないのか指摘すると落ち込んで委縮してしまう。かといってさりげなくフィードバックをしても、なかなか行動が変わらない。派遣という立場を考えると、会社も異なるため、どこまで踏み込んでいいのか、しつけも難しい」という悩みも聞きます。
同じ会社に所属しているわけではない、という壁が、遠慮となって率直なコミュニケーションを阻害している面もあるのも事実です。
ただ、現実には契約形態、経験年数に関わらず、お客様から見れば「ブランドの代表」であることに変わりはありません。それがブランドイメージや店舗のサービスの良し悪しを日々創り出しているのです。
特に店舗は忙しければ忙しいほど、スムーズなオペレーション・接客を行うためにもチームワークが求められます。ですから必然的に、社員・派遣・アルバイトの区別なく、チームワークを築く必要はあります。では、どうすればよいのでしょうか?

■派遣・アルバイトもチームワークを求めている!

先日伺ったブランドの店長と話をしていて、非常に気づかされることがありました。
「私は今でこそ店舗責任者を任されていますが、もともと派遣でここへ来たので、派遣の人の気持ちもよくわかります。うちでは派遣のスタッフも社員も”やろう!”と言ったことに対して素直に前向きに取り組んでくれるので、本当に助かっています。派遣から社員に推薦したいと思う人が多く、実際多くの人が社員になってくれています」とのこと。
そこで、どうしたらそういう状況が生まれるのか、より詳しく話を聞いてみると以下のようなことが見えてきました。

●派遣のスタッフに対しても「メンター」をつけて、基礎をきちんと共有する。ただし、一方的に「うちではこうしてますから、それに従ってください」だけでなく、「疑問や質問があれば遠慮なく言ってください」と伝え、必要に応じて”なぜそういうやり方をしているのか”についても共有する。そうすることで、派遣スタッフ自身の経験も生かして、自主的に判断してやってもらえるまでの期間が短くなる。

●勝手な判断や誤った判断については、社員・派遣に関係なく、厳しく指摘しなければならないときは厳しく言う。なぜなら、ここでの経験がそのスタッフの将来に関わることを考えると、中途半端にはできないから。

●そういう時に誤解や曲解が極力生まれないよう、日頃の声掛けを非常に大切にしている。チームの一員として、関心を持っていること、ここでの経験を意味あるものにしてほしい、と言うことを分かってほしい、という想いがあるから。

そう話しながら、店長自身が「契約形態は違っても、遠慮せずに同じチームの一員として接してきたことで、逆にうまく行ったことが多いと思います」と振り返っていました。

一方の派遣スタッフにインタビューすると、「店長には本当に一杯叱られました!」と明るく笑って共有してくれますし、「ムカッと来なかった?」と質問すると、「言われてみればおっしゃる通り、と言うことばかりで、多少自己嫌悪で落ち込んだりはしましたが、次からこうしよう!と切り替えました。でも正直、それまでは派遣で数社で働いていましたが、ふわふわした感じで、”こういう風にやればいいのかな”程度で何とかやりくりしてきた状態でした。が、今の店長に鍛えてもらったおかげで、ここでは他のブランド以上に沢山のことを吸収できています」とのこと。固定客も創れるようになり、安定して数字も取れるようになったことで、さらにこの仕事が好きになり、ずっと続けていきたいという気持ちになっているとのこと。その派遣スタッフ曰く「正直、私自身、好きなブランド、そうでもないブランドもあります。でも最初にそのブランドが好きか、そうでないか、よりも、そこで出会う上司や社員の人たちを通してよりそのブランドが好きになる、ということが分かりました」と言う言葉が印象的でした。

■見えない疎外感こそが最大のブレーキ要因!

店長自身の話の中でもう一つ印象的だったのは、「派遣スタッフは仕事をしに来ているのだから、きちんと契約通りの仕事をしてくれたらそれで十分」と思いがちですが、やはりそれだけでは、なかなか本人のモチベーションにつながらないものです、と言う言葉です。
ミスもなく、納期通りきちんとやってくれているのだから、特に声をかける必要性も感じなくなってしまうことはよくあります。
しかし、店長自身、自分の過去を振り返りつつ、「私も派遣時代はそれなりに責任感もありましたから、ミスをせず、きちんと期待通りの仕事をしようとしていました。ただ、ふと気が付くと、決められた時間にお店に行き、淡々と仕事をこなし、終わったらさようなら、の繰り返し。お客様との会話の中で楽しいこともありますが、特にシェアしあうこともなく、自分の中にしまって終わりです。仕事は安定していましたし、問題はない。特にそれ以上自分から積極的に・・という気持ちもありませんでした(求められている感じもなかったですし)。でも今から考えると、”店舗の一員として働く”という観点から言えば、もっとできることはあったと思うし、もっと前向きに仕事をしても良かったと思います。その時期、もったいないことをしたかも・・、とも思います。その時は意識はしませんでしたが、もしかしたら見えない疎外感は感じていたかもしれません。
それが、ここに派遣されたことで、社員との区別もあまりなく、「この店舗どうしたらいいと思う?」など当時の店長がどんどん質問して来られるので、私も何とかいいアイディアがないか一生懸命考えるようになりました。おずおずと、「こういうのはどうでしょう」というと、店長が目を輝かせて「さすが!よそも良く知っているから助かる!」と言ってくれたり、他の社員さんに「今度来た派遣の○○さんは、△△に強いから、皆も学んでね」と言ってくれたりして、ああ、仲間だな、と思いました。仕事は確かに楽しくなりましたし、もっとこうしたい、ああしたい、と言う気持ちにもなりました。だから上司には感謝してます。とのこと。

■派遣・アルバイトもチームの一員として相乗効果につなげるための3つのポイント

これまでインタビューしたり、実際に見聞きした中から、派遣・アルバイトの方々の存在をチームの相乗効果につなげるための3つの実践ポイントを紹介します。
1.店舗として何を目指しているか、大切にしている価値観は何か、等に関し、まずは店長が 1 on 1 でしっかり伝える。且つ、その価値観に沿った行動を期待していることを伝え、疑問や不安がないかを聞き、解消しておく。

2.徐々に働きぶりが分かってきたところで、「より良い店舗にするためにどういう”役割”を担ってほしいか」を伝える。派遣なのだから(誰にでも同じように)とにかく販売してくれればいい、業務をこなしてくれればいい、ではなく、その人自身の強みを踏まえて、たとえばブランドの顔として、あるいはチームワークで相乗効果を出すためにも、こういうアイディアがあれば教えてください、など期待していること、頼りにしていることを具体的に伝える。それが本人にとっての存在価値になる。

3.日々の声掛けを大切にする。してもらったことに対する感謝、「もっとこうしてもらえるとさらに良い」というフィードバック、お客様情報のシェア、称賛、時には叱責、プライベートな話など、”よそ者”ではなく”身内”として、関心を持っている姿勢を態度・言葉で示す。

人は接点が多いほど、愛着が強まる傾向にあります。「私のお店」と思ってもらえるようになれば、契約形態に関わらず、頑張ろうという気持ちが強まります。すでに実践されているかもしれませんが、派遣同士のコミュニティでもいいお店は評判になりますから、トライする価値は大いにあります。
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余談ですが、近くのコンビニの髪を金色に染めた学生バイトのお兄さん(ちょっとこわもて)は、いつ行っても誰よりも元気よく「いらっしゃいませぃっ!」と声を出し(居酒屋みたい)、一人一人に「ありがとうございっす!」と声を大きくかけながらレジをし、「今キャンペーン中ですが、これいかがっすか?」と店中聞こえる声で堂々とPRし、じっとしていることがありません。(ご近所でも評判)
結果的に彼が来てから、他のアルバイトもテンポよく、元気よく声を出すようになりました。私などは落ち込んだ時、そのお兄さんの元気にパワーをもらいます。「できれば大学卒業してもいてほしいな」と思える存在です。本人も偉いですが、そうさせている店舗マネージャーも動機づけが上手だな、と感心させられています。

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