協力し合えるチーム(店舗)は高い成果を出すことが可能です。逆に一人一人がある程度スキルを持っていても、お互い仲が悪い、無関心、という雰囲気があると強みの発揮にブレーキがかかり、期待通りの結果が出ない、ということは日常茶飯起こっています。
では、店長としてチームづくりをうまく進めるには何が大切なのか?これまで多くの店舗をまじかに見てきて3つの要素を抽出してみました。
1.チームづくりがうまくいく要素(1):「チームの成功が自分の成功」という考え方を刷り込む
店長にとっては「チームの成功こそが自分の成功」という考え方は当たり前のことであり、実際それで評価をされるという現実もあります。
しかし、スタッフ個々にとってはそれは決して当たり前ではありません。
毎年新入社員研修で行う意識調査でも「一人一人が与えられている業務をきちんとこなせば、おのずとチーム全体の成果は上がる」と考えている割合は7割近くにのぼり、評価においても、「個人評価」がより強調される側面があります。
ちょっとした考え方の違いにしか見えないようですが、実は優先順位トップを「個人」に置くか「チーム」に置くかで日ごろの仕事への取り組みにも非常に大きな違いが生まれるのです。(以下の表参照)
与えられたことをきちんとこなせばおのずとチームの成果は上がると考えているスタッフに見られる傾向 | チームの成功を最優先に考えて、自分がやるべきことをやると考えているスタッフに見られる傾向 | |
1 | 自分の売り上げを達成するために努力する。できなければ自分で何とか努力してやろうとする | チーム全体の売り上げを達成するために、今何が必要かを考えて動く。周りのスタッフの動きにも関心を持つ |
2 | 自分の担当業務をミスなくきちんとこなす。できなければ自分で何とか努力してやろうとする | チーム全体のオペレーションがうまくいくように自分の責任を果たしつつ、困っていることがあれば積極的に相談する |
3 | 下手にでしゃばるとチームの調和が崩れる可能性もあるので、まずは自分の役割を果たすことに専念する傾向 | チームの中での自分の立ち位置、役割を考えて積極的にできることはやろうとする。失敗したらしたで、反省して次に生かす |
店長から見れば、どちらもまじめに仕事に取り組んでくれる有難いスタッフですが、「チームの成功ありき」という視点をもってもらうことは、チームの成功にとってだけではなくスタッフ自身の成長にとっても価値が生まれます。ゆえに、店長はそのことを自覚して、スタッフに日ごろから「チームの成功こそが、あなたの成功」ということを刷り込み、チーム全体の状態をこまめに共有することが重要なのです。
2.チームづくりがうまくいく要素(2):スタッフの「なぜ?」を放置しない
次の要素として、「納得して働ける環境づくり」が重要です。スタッフの不満の多くは、「それって、おかしいんじゃないですか?」に集約されます。
たとえば、些細な「なぜあの人ばかりほめるの?」「なぜこんな忙しい時にトレーニングを受けなければならないの?」「なぜお客様にそこまでしないといけないの?」という不満が積もって「それっておかしいんじゃない?」ひいては「うちの会社・お店はおかしい」という大きな不信感につながることがよくあります。
ただよく聞いていくと「おかしい」の背景には会社・店長とスタッフとの間で「見ているものが違う」ということが往々にしてあります。つまり、会社や店長は「今後のことも考えて」「全体の利益から言うと・・」「及ぼす影響を考慮すると」という視点に立っていますが、スタッフは目の前のことで忙しくそこまでの余裕はありません。だから認識ギャップが生まれるのですが、それを放置しておくとチームづくりに亀裂が入ってきます。逆にスタッフと店長の間でそういうギャップが生まれた時こそ認識をすり合わせるチャンスです。面倒なようでもスタッフの小さな「なぜ?」をきっかけにして長期的視点・大局的視点で見るとどうなるかを理解してもらうための働きかけが人が育つ強いチーム作りにつながっています。
3.チームづくりがうまくいく要素(3):感謝の言葉をきちんとかけあう(行動目標化の効果)
私もこれまで正直「この人とは相性が合わない」と思う人とチームを組まなければならない状況を経験しました。その時は想定以上にストレスを感じました。なぜなら細かいことは無視すれば良いのですが、意外と無視できない。「どうしてそんなことをするんだろう」「なぜ~できないんだろう」と自分と違うところばかりが目について、勝手にフラストレーションをため込んでいました。徐々に顔を合わせて一緒に話をするのもおっくうになってしまい、「これではいけない」と自分に言い聞かせる毎日です。しかし、ある時思いました。「どうせ一緒にやらなければならないのであれば、何とか状況を良くすることはできないか」と。難しいことは続きそうになかったため、すぐにできそうなこととして「いいところを見つけたら必ず”~がすごい”、”~が素敵”、”~してもらってありがとう”など具体的に言葉に出して相手に伝える」と決めました。且つ、それを行動目標化し、「必ず1日2回以上はいいところ、感謝すべき点を見つけてほめる」とし、できていたかどうかを帰り際日々チェックするようにしました。すると不思議なことに「あ、率先してごみを捨ててくれている、今だ!」と相手のいいところを見つけられると目標達成に近づけるため嬉しくなり、感謝の言葉を伝えた後は「やった、1つクリア」と密かに自分に合格点をあげていました。邪道なやり方かもしれませんが、それを1か月、2ヶ月とやっていくうち、相手が嬉しそうにしてくれると自分も嬉しくなったり、逆に相手から自分の行為をほめてもらったり、「いつもほめてくれてありがとう」と感謝され、自分が以前より寛容な人間になれた気がしました。そして何より「チームで~をしましょう」と言う場面では、皆がポジティブにどうすればいいかを話し合う雰囲気に変わっていました。
特に魔法はありませんが、やはり同じ時間を同じメンバーで過ごすのであれば、ストレスを感じずにやりたい、その時はまず自分の出方を変えるのが一番早いうえ、効果も大きいということです。
今日やって、明日結果が出るというものではありませんが、人間一人では生きられない、という前提がある以上、「どこでも誰とでも楽しめる自分づくり」のためにもこの3つのポイントは一度トライする価値はあると考えます。
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