■店舗ビジョンってそんなに大事?単なるスローガンではないですか?
昨今、店舗の売り上げ目標達成がスタッフにとって重要ミッションであることはほぼ浸透しています。そのためにもお客様に満足いただける接客をし、再来店を促す必要がある、ということも分かっています。しかし、毎年毎年それを繰り返す中で、年度初めという大切な時期に「あ~やれやれ、やっと怒涛の1年が終わったと思ったら、またゼロからのスタート。相変わらず高い予算達成に向けてひたすら走り続けないといけない」という声を聞いたりします。
スタッフの中でもすでに顧客の基盤を持っている人は気持ち的にもゆとりがあり、「今年は去年よりさらに何ができるか」という方向でチャレンジしやすいのですが、入社年が浅いとか、なかなか顧客が創れないスタッフにとってはプレッシャーも大きく、「もし数字が出せなかったらどうしよう」という焦りを感じるタイミングでもあると考えます。
そういうときこそ店長はスタッフが目標に対し前向きに行動するよう動機づける必要があります。やり方はいろいろありますが、その中で数字、数字と追い立てるのではなく「店舗ビジョンを掲げて皆がそれを達成したい、と思ってもらえるようにする」ということが重要である、という認識も広まっています。
そもそも店舗ビジョンとは3~5年の店舗の将来構想ですが、それが店舗の将来を方向づけます。ビジョンが明確かつ効果的にに打ち出されることで
●どのようなお客様にどのようなサービスをしていくべきかが明確で、そこに集中することでより効果的な顧客づくりにつながる
●自店の強みや環境変化の機会をうまく活用できる
●ビジョン実現に向けて日々努力を重ねることでスタッフのスキルアップやモラールアップにつながる
ということが証明されています。
しかし、店長研修で「あなたの店舗が掲げているビジョンは何ですか?」とお聞きすると
*○○でNO.1の店舗になりたい
*悲願の売上○○をクリアしたい
*スタッフが楽しくやりがいのある店舗にしたい
*お客様に愛される店舗にしたい
等々が出てきます。
店長自身がそういう店舗にしたい、という想いを持っていることは素晴らしいことですが、重要なのはそれが本来の機能を果たし、本当にスタッフ一人一人にとってパワーの源泉になっているか?ということです。
実際、店長が上記のような内容を掲げ、ボードに貼り付けたりしていても、スタッフにとってはそれが「単なるスローガン」でしかなく、「そうはいっても目の前の売り上げが大事ってことでしょ」で終わっているケースが残念ながらほとんどなのです。
■ビジョンが“単なるスローガン”になってしまう主な理由
ではなぜそういう乖離が起こるのか?様々なケースを見てきて主に以下の3つが挙げられます。
<スタッフから見て>
1.いつまでに、何が、どのような状態になっているのかがはっきりしない(具体性がない)
2.それを実現したら自分にとってどういう状態になっているのか、どのようなメリットがあるのかが描けていない(他人事)
3.「皆で絶対実現したいね」という機運が店舗にない(やってもやらなくても関係ない)
いかがでしょうか?あなたの店舗のビジョンはいつの時点で実現しているのでしょうか?その時は店舗・お客様・関係者・スタッフは具体的にどういう状態になっているのでしょうか?店長だけでなく皆で達成しようという声掛けが当たり前にできているのでしょうか?
中には「会社が○○というビジョンを掲げているから、それに沿ってやらなければならないから」という前提でビジョンを掲げている店舗があります。店長自身それが腑に落ちていないこともあります。その会社のビジョン自体が「3~5年後に売上○○円規模のブランドになる」というものであると、スタッフからすれば「それが何か?」という受け止め方にならざるをえません。
■ビジョンをスタッフのパワーの源泉にする3つのポイント
しかし、ビジョンが本当にスタッフの中で共有されると、一体感・パワーの面で素晴らしい威力を発揮します。
実際私が過去所属した組織では社長から年初に以下のビジョン発表がありました。転職したばかりでしたが、内容が新鮮だったのでよく覚えています。
「皆で、◎◎年にはこの会社を~といわれる会社にしていこう!そうすれば、働く私たちも大いに誇りが持てる。そうなれば、多くの優秀な人たちも入ってきて、益々お客さまにも高い品質のサービスを潤沢に提供でき、会社は好循環に入れる。そのためには、まずは~を一丸となってクリアしなければならない。その目安が今年の売上●●円への挑戦である。易しい課題ではないが、知恵を出し合って新しいことにトライすることで、私たちは大きく飛躍できる。是非それを皆で証明しよう。ハードな1年になると思うが、それが達成できたあかつきには、皆で~へ旅行に行こう!そこで思いっきり楽しもう!」
社員一同の表情から「やるぞ」という気持ちが読み取れ、新米ながら、「この組織の一員として全力投球で頑張って少しでも貢献したい」という気持ちにさせられました。
怒涛の一年が終わってみたら、目標が達成でき、皆の表情からは成長実感や自信が感じられ、楽しい旅行でさらに結束力が高まりました。何年も記憶に残るいい経験でした。
このようにビジョンをスタッフにとってパワーの原動力にするには3つのポイントがあります。
1.「何のために」を会社・店舗・スタッフ・お客様・関係者の観点でとことん掘り下げて考える
ー自店がどう変化・変貌することで、誰にどんなハッピーをもたらすことができるかを多面的に考え、絵にする。その際、自店の強みを活かせる方向性を考慮する
2.ビジョンは簡単に実現できるものではない。だからこそ、そのための課題を洗い出し整理する
ー課題は自分たちでコントロールが可能なもの、成長につながるものに絞る
3.課題達成のために、まず何にどう挑戦する必要があるかを明確に示し、「やればできる!」という心理を醸成する
ーあれもこれも、ではなく「これをやれば、こうビジョンに近づくし、できないことはない」という根拠を示す
それを明確にすることで、チャレンジ意欲の高いメンバーが「やりたい」という気持ちで行動を起こすようになります。また、その動きを支援することで店舗全体に良い機運が生まれます。
是非戦略的ビジョンでスタッフ・関係者を明るい未来に導けるよう、日々忙しい中でも大局観を持ち続けましょう!
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