ラグジュアリーブランド店長ブログ

できる店長がやっている、Z世代新卒の強みを引き出して活用する「カギ」とは?:ブランド店長問題解決講座(88)

■新卒は世間の風潮をそのまま映す鏡!

私達が実施する新入社員研修ではスタート時に「ビジネス基礎意識調査」というアンケートをとります。企業活動に対して、あるいはチームワークや今後の自分のキャリアについてどう考えているかをセルフチェック方式で回答してもらうスタイルですが、新卒はある意味フィルターを通さず世の中の風潮をそのまま映す傾向が強いといえます。
たとえば個人差はあるものの「仕事観」「リーダー観」では以下のような特徴が見られます。
①仕事・会社は「決められたこと、言われたことをまじめに忠実にこなすことでうまくいく」「こつこつ改善をしていけばうまくいく」
②リーダーの重要な役割は「チームが和気あいあいとやれるよう波風が立たないようにみんなの調整役をきちんとやること」
など、リスクを冒してでも何かにチャレンジする、というよりどちらかというと「守り」の考え方が強い、という傾向が言動を通しても見られます。
昨今は「誰一人取り残さない」(SDGsの理念)という教育を学校で受けてきていること、デジタルネイティブでリアルな対面での軋轢を避けるなど、ますます「人にやさしく」という風潮は強まっていると実感します。

接客業を職業として選んでいるだけに、リテール業界では上記の傾向は特に顕著に現れていると推察されます。が、一方で「ビジネスはより価値を出せる者だけが生き残っていける世界」であり、そのためにも「大局観・多面的なモノの見方、多様性への対応力、など高い期待の中で自己成長できる自分でなければならない」「守りだけでは価値は相対的に下がってしまう。お客様はより新しいもの、より優れたものを欲する。そのためには革新、すなわちリスクテイクしてでもチャレンジする、新たな道を切り開くという強さが必要」という現実があります。この最初の切り替えがしっかりできないとせっかくの才能も開花せずに終わってしまう、という危機感も改めて感じます。

では、どうしたら新卒にその重要性を少しでも理解してもらいつつ、積極的な行動を引き出すことができるのか?多くの店長がぶつかる壁ではないでしょうか?そこで、まずは新卒の強みに目を向け、それをどう活用していくか?というステップで考えてみましょう!

■活用できる強み

①コミュニケーション意欲の高さ

新卒はコロナ禍で大学、あるいは高校でオンライン授業を経験しているからこそ、その対比でリアルのコミュニケーションの価値を実感していると言えます。
実際に感想を聞くと「対面研修は、五感を通じて会社の人たち、同期の考えていること、雰囲気も分かる。自分がどう見られているかも体感できる」という安心感につながっているようです。
オンラインではたとえば休憩中にどこまで会話してよいのか躊躇もあります。また、言葉と本音がどこまで合致しているのか、という不安もあります。
対面研修では、そこまで気を遣うことなく、目的達成に集中することができます。
また、様々なタイプの人と協力して課題を達成する中でチームワークを築く体験や接客販売のロールプレイングでの感情の機微を汲みとる練習など、ワンランク上の体験ができるのがやはり対面ということを実感できている人が多いようです。

②ロールプレイングへの抵抗のなさ

接客・販売研修では応対スキルの向上のためのロールプレイングの回数が多くなります。後で振り返りができるよう「ビデオ撮影」も行います。ベテランスタッフからよく聞く「ロールプレイングは緊張して本来の自分ではなくなる。だからロールプレイングはやりたくない、やっても効果がない」という反応と大きく異なり、新卒は「そうするものだ」と素直に受け止めて当たり前にチャレンジします。また結果を踏まえて反省点を洗い出し、次にやるときには改善しようとします。
理由として
①ロールプレイングに対するネガティブな先入観がない。メリットを教えられれば素直に言われた通りチャレンジしようとする
②就活を含め、自己アピールをしてビデオに撮って送る、という経験をしてきている
③デジタルネイティブ世代で、どう見られるか、どう見せるか、というビジュアルコミュニケーションが浸透している
④配属後自分がちゃんとやっていけるか、という不安感を払しょくするには理屈よりも実践、やってみることが大切、という意識が強い
などが挙げられます。これは今後のスキルアップにおいて大きな促進材料になると考えます。

③アイスブレイクへの抵抗のなさ

コロナを通してオンラインショッピングが増えている中、あえてリアル店舗での販売スタッフを目指す理由として「単なる販売員ではなくブランドの価値を伝えられる人」「せっかくご来店されたお客様に素晴らしい体験を提供できる人」になりたい、という発言が多く聞かれます。
新しい時代の「販売スタッフの役割」を自覚している割合が増え、販売業というよりホスピタリティ業として受け止めています。
特にラグジュアリーブランドとなると敷居も高く、お客様も緊張されている中でいかに自分たちの働きかけでリラックスした会話ができるか、ということを重視する傾向が強くなっています。
ロールプレイングを行っても、お天気の話、パーソナルな質問、共感の相槌、など商品説明に走らず、個人的な会話のキャッチボールを大切にしようという傾向が強まっていて、率先して世間話をしようとします。
「商品を売る前に自分を売れ」ということは古い時代からよく言われてきましたが、新卒にとっては接客・販売を通して「自分」という存在をしっかり受け止めてほしい、という素直な承認欲求や自己実現欲求と絡んでいるようです。接客を単なるルーティンではなく、目的的にお客様との会話を通して価値をいかに共有できるか?と貪欲に関わっていこうとするこれまでにない新しい流れを感じます。

■できる店長がやっている、強みを活かした新卒定着・戦力化のカギとは?

これらのことから、下手に目だったり、失敗したくはない、波風を立てたくない、という守りは強いものの、逆に丁寧に安心感を持たせる環境を創ることで、その中でのチャレンジや工夫は面白がって素直に取り組む傾向が強いと言えます。
店長が、何とか新卒に積極的にチャレンジしてもらおうと「とりあえず、これトライしてみて!」「何かいい提案はない?遠慮せずに言ってみて!」という投げかけるだけでは、逆に尻込みしてしまう新卒は多いと推察されます。積極性を引き出すうえで重要になるのは実は「指示の出し方」だからです。
新卒からの信頼が厚い、あるできる店長曰く、「これは、こういう意義があって、こういうやり方が基本なんだけれど、先輩のやり方を見て、次に自分でやってみて、もし、もっとこうしたらどうかな?と思う点があれば、箇条書きでいいので、私にメモしたものを共有してもらえますか?あくまでアイディアレベルでいいです。素直な視点、お客様の視点で考えてみてください。逆に、こういう点は今のままでいいと思うことも教えてもらえると有難いです」という前提条件を付ければ、自分の存在価値を発揮しようと、それこそ一生懸命取り組んでもらえ、新しいアイディアも引き出せます。その分店長としての負荷も若干かかりますが、徐々に新卒自身、指示の意図を自分で先読みしたり、プロアクティブに考えられるようになってくること自体が、店長にとっての喜びになってくると思います、とのこと。そして一言、「気がついたら、私自身、一人一人に合わせた指示の出し方を研究することで、チームがマネージしやすくなったことを考えると、まさに新卒に新しいマネージの手法を教えてもらっているようなものです。」と笑っていました。あなたのお店ではいかがですか?

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