■顧客づくりのカギとなる”チーム接客のクオリティ”はどうやって測定すればいいの?
ブランド店長として、短期的な目標達成はもちろん重要ですが、そればかり追いかけていては常に不安との闘いで、且つスタッフも疲弊してきます。そこで、強い店舗づくりの背骨として、お客様との長期的な関係性(LTV:Life Time Value)を向上させることが必要です。そのためにはスタッフ全員で協力し合ってお客様をもてなす、というチームとしての接客力がカギになります。ただ、本当にお客様に喜んでいただけるチーム接客ができているかどうかは、どのように測定したらよいのでしょうか?売り上げにつながってこその満足!を強調しすぎると、ついついスタッフも「今決めてもらわないと」という気持ちから押し売り的になりがちです。逆に「(今日はお買い上げがなくても)次の来店につながればいい」としてしまうと「今日売れなくても、また来てくれる可能性(希望)があるから」で流されてしまうリスクもあります。この線引きが店長としての悩みどころ、という話もよく聞きます。そこで今回はスタッフがチームとして”確実にお客様に寄り添った接客”ができているか否かを可視化するためのKPIについて、できる店長はどのように設定しているのか?について、いくつか例を挙げてみました。
●大きなフレームのKPI例
1.チーム接客による購入率(%)
- 目標: 複数スタッフが関わった接客の購入率を単独接客の成約率より 5〜10% 高く設定
- 理由: チーム接客ならではのスムーズな提案やフォローアップによる満足度のアップ、購買意欲の向上を目的として設定
- 効果:接客に関わったメンバー全員で「お客様に喜んでいただける接客を!」という共通のパッションを持ち、協力し合える
- 前提:チーム接客を推奨し、全接客数に対するチーム接客率の目標を設定。且つ、必要なトレーニングを実施しておく
2. 顧客満足度アンケート(チーム接客専用)
- 目標: 「スタッフ同士の連携が良かった」と回答する割合を 85%以上 に設定
- 理由: お客様がスムーズな接客を受けていると感じることで、リピート率向上につながる
- 効果:どうすれば85%以上を達成できるか?を考える中で、いろいろな意見が出て、協力し合えるようになった
- 前提:会社が実施しているアンケートにチーム接客に関する質問を入れてもらうよう、事前に根回ししておく
3. チーム接客のリピート率
- 目標: 1回の接客で複数スタッフが対応した顧客のリピート率を ●%以上 に設定(1か月以内、3か月以内、6か月以内で測定)
- 理由: お客様がスタッフとの関係性を築き、次回来店時も同じ店舗を選ぶ確率を向上させる
- 効果:実際にお戻りがあった際に、最初の接客をしたスタッフのうち一人でもいることで、お客様はオープンマインドになっていただきやすい
- 前提:スタッフ間でお客様情報を見える化し、「次にご来店があった場合、~をする/~をしない」ということを共有しておく(そのためにも、顧客対応履歴(試着アイテム、購入履歴など)が適切に共有されている割合を 90%以上 に設定)
●細分化したKPI例
1. 接客リレーのスムーズさ(例:待ち時間の短縮)
- 目標: 一組のお客様の接客中の待ち時間(例:試着室の空き待ち、レジ対応待ちなど)を 平均●秒以内 に抑える
- 理由: 接客の流れをスムーズにすることで、お客様のストレスを軽減し満足度を高める
- 効果:お客様がお待ちの状態に気づいたスタッフがすぐに声をかけることができるようになった(お客様に意識が集中するようになった)
- 前提:どうしても待ちを発生させてしまった場合は、オペレーションの見直しや対応法をいくつか考えておく
2. 滞在時間と会話の質(お客様ニーズの掘り下げ度合い)
- 目標: 居心地の良さを示す指標としてゆっくりしていかれたかを測定。長くすることを目的に、ではなく、スタッフと全く会話せずに出ていかれることを防ぐことを目的にし、●秒未満をなくすを設定
- 理由: できるだけ早く心を開いていただき、そこから共感性やニーズを深堀できるようなリードができているかを評価。
- 効果:そのための待機、観察、声のかけ方などを研究しあう
- 前提:お客様が自然に店内で過ごす時間が長くなることは、スタッフに対し安心感を持っている、会話が心地よいと映っている指標と見る。お急ぎの場合も次につながる声掛けをいくつも用意しておく
3.チーム接客における試着率・試着点数
- 目標: チーム接客において試着をした人の割合を測定。あわせて試着点数も測定。
- 理由: 試着が多いほど、商品に対する関心を持たせることに成功していると考えられる。
- 効果:フォロースタッフが会話をサポートしつつ、ご試着においてお待たせしないよう、先手で準備に入ることができるようになった
- 前提:試着率が高いだけでは購入に繋がっているかは分からないため、他のKPI(試着後の購入率、試着したお客様の再来店率、お勧め商品の購入率など)と組み合わせて評価する。そうすることで、「ただ着せればよい、持たせればよい」「とにかく商品をたくさん出して試着させればよい」ではなく「お客様が興味を持ってトライしたいという気持ちで、的を射た試着になっているか」まで含めて振り返る
4. チーム接客におけるクロスセル(セット販売)成功率
- 目標: チーム接客でのセット購入率を 全体の●% に設定(単品購入と比較し、スタッフの連携によって組み合わせ提案ができているかを測定)
- 理由: 単なる販売ではなく、適切なスタイリング提案ができているかを評価
- 効果:チーム接客だからこそ、スムーズにコーディネート商品を先手で準備することで、お客様にトータルコーディネートに浸っていただけたり、気持ちを盛り上げることが可能になる
- 前提:日頃から関連商品提案についてのトレーニングをしておくことでよりスムーズになる
5. SNSや口コミ、館のフィードバックで評価をチェック!
お客様がSNSや口コミサイトに「接客が心地よかった」と投稿しているかをモニタリングすることも有効。実際、できる店長のお店では、店舗の接客がポジティブな話題として広がり、それが長期的なブランド価値の向上に着実につながっているとのこと。
■まとめ
「チーム接客のクオリティ」を測るKPIは、単なる売上ではなく、お客様が心から満足し、また来店したいと感じる指標であるべきです。リピート率、顧客満足度、滞在時間、会話の質、試着率などを見える化することで、単に「チーム接客を頑張りましょう!」とスローガン的に発信するだけでなく、スタッフ自身が自分たちの接客を客観的に評価し、成長につなげようとする原動力にもなります。まずは試しに1つだけでも取り入れてみて、あなたのお店にフィットするものに練り込んでいくことをお勧めします。できる店長達も、どうしたらスタッフに前向きに受け止めてもらって効果を実感してもらえるか、何度も試行錯誤や失敗を繰り返しながら、ようやく定着させることに成功したとのこと。ただ、いったん定着すると、スタッフが「次はもっとこうしよう!」と協力し合いながら取り組むようになってもらえて、実際にそこから売り上げが着実についてくるようになり、チームのパワーを改めて実感できたと嬉しそうに話していたのが印象的でした。
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