ラグジュアリーブランド店長ブログ

顧客のリピート率は実店舗の方がオンライン店舗より高い!その理由とは?:ブランド店長問題解決講座(62)

■顧客のリピート率はオンライン販売より実店舗の方が高い。その理由は?

2023年5月13日付のウォールストリートジャーナルに「オンライン専門の会社が新戦略として実店舗を積極展開」という記事が掲載されており、目を引きました。記事の中ではオンライン専門店の眼鏡販売をスタートさせ、直接入力してもらったり広告会社から提供される顧客のパーソナル情報に基づき、好みに合いそうな商品を提案。クリック一つで商品を自宅に送付。試したうえ、気に入ればそのまま購入、気に入らなければ返品可能というサービスで多くの顧客を掴んで成功した会社の事例が載っていました。実店舗に比べオンラインであればサービス提供エリアも広く、スペースの制約もないため幅広く商品を提示できます。特にコロナ禍では、実店舗を持たない分、家賃や人件費の負担リスクも抱えずに済んだというメリットもあります。にもかかわらず、あえて今、新たに実店舗を構えようとしているとのこと。その主な理由として以下のことが挙げられています。

●以前に比べ、オンラインでの広告掲載価格が高騰し、新規顧客の獲得コストがかなりかさむ

●顧客データ収集に関する規制が厳しくなり、以前ほど有効な”個客”情報を収集できない

●やはりお客様は「実際に多くの商品を見て、その中からピンとくるものを自分で選んで試して、ベストと思える物を買いたい」という欲求がある

●ベストな買い物、あるいは後悔しない買い物のためには、プロのアドバイスが重要であり、実際に実店舗で販売した方がリピート率が高い

そこで、これまでにオンライン店舗を利用してくれた顧客が多く住んでいるエリアを抽出し、どこに実店舗を開くと最も効果的かを判断し出店したところ、現時点では売上も順調で成功しているとのこと。

この記事を読んで、私自身思い当たることがありました。コロナ禍というだけでなく、百貨店が自宅近くにない、ということもあって「わざわざ出かけるのもおっくう」となると、ついネットで選んで良さそうならそれでいいか、とオンラインショッピングを利用し候補となる靴を数足取り寄せました。届いた商品を試してみるとサイズは合わない、細かな作りが気に入らない、脆弱そうに見える・・などから「本当にこれを買って後悔しないか?」と考えてしまい、結局はすべて返品することにしました。”気軽に返品可能”というのは一見便利そうですが、すべて箱に入れなおし、返送手続きをして返送代を払って・・という手間を考えると、「やはり百貨店でいろいろなものを見てその中から気に入ったものを選び、本当に長時間履いても大丈夫か、自分に似合っているかどうかなどを店員さんに確認してもらうというのは結局便利なうえ、安心感が圧倒的に違うな」と感じました。

人それぞれ感じ方は違うと思いますが、後々後悔しないためには、やはり信頼できるプロの一言は大きいな、と感じる人が多いからこそ、実店舗設置という流れも起きるのだと考えます。

■対面での”プロのアドバイス”を提供できる店舗スタッフの存在がカギ!

昨今はAIを使って、収集したパーソナルデータに基づいて「あなたにお勧め」「あなたにピッタリ」という提案を自動的にしてもらえます。これまでのパターンを自動学習していくため、どんどん精度も高まっていくと想定されます。確かに、提案されたことによって気にも留めていなかったものでも「あ、そう言われればこれ欲しい!」という気にさせられ、購入のクリックを押してしまうこともあります。AIの賢さにはこちらも感心させられます。

しかし、ことファッションに関しては、提案されたものを着用した際、本当の意味でぴったりかどうかは、実際に着てみて、自分の目だけでなく、第三者の目で見てもらってより強く確信・自信が持てます。眼鏡でも靴でもアクセサリーでも、部分鏡ではなく、全身で見て、”バランスがどうか””浮いていないか””派手すぎないか”など主観だけでなく客観的に比較検討しあって、最終的に「これなら安心」「素敵に見える」という安心感や満足につながっていきます。

上記の記事でも”in person”が重要であると結論付けられていました。in personとは日本語で言えば「じかに」「対面で」という意味合いです。本当に似合っているかどうかはAIが自動的に計算してくれるわけではありませんし、もし数値で出たとしても「本当かな?」という疑問はついて回るでしょう。やはり”プロが言うなら安心”というお守りを私たちはどこかで欲しがっているのではないでしょうか。

特に高額品の買い物となると、そのウエイトはさらに高くなります。ただしその際重要なのは、購入する側の状況や気持ちを共有して、迷う中で親身に正しい選択に導いてくれる「根拠を持ったプロのアドバイス」です。

私も以前ちょっと背伸びして高級バッグを購入しました。事前に調べて「これが良さそう」と思ってお店に行きました。実際に見たところ、自分としてはシンプルなデザインが気に入り、且つ使い勝手もよさそうで、これならどこへ出かけるにしても持っていけそう、という気持ちになりました。念のためそこにいたスタッフに「どうでしょう?」とアドバイスを求めると、にっこりしながら「お似合いですよ」という一言だけ返ってきました。その時は欲しい、という気持ちが勝って思い切って購入しました。しかしその後あるラグジュアリーブランドの店長にそれを見せたら、「なんでそんな物を選んだんですか!あなたにはもっと似合うものがあるのに。私だったらそれは絶対勧めません!」と率直に言われて事前に相談しなかったことを後悔した記憶があります。彼女は顧客の信頼も厚く、まさしくプロフェッショナルな販売スタッフでもあり、必然的に彼女の店舗はスタッフもそれに倣って多くの顧客を持っていることで定評があります。同じ買い物でも、受け身で「よろしいんじゃないでしょうか」というレベルのフォローと、顧客の要望を汲みつつも本当の意味で長く愛着をもって使ってもらうことで、ブランドの信頼をさらに高めていく、という信念を持ったスタッフとでは、その場の接客だけでなくその後の安心感においても実は大きな差が開きます。

ラグジュアリーではありませんが、繰り返し利用している近所の眼鏡屋さんは「最近目が疲れやすいので、新しいメガにした方が良いかと思って」と尋ねていくと丁寧にすべて検査をしてくれたうえで、「現時点では正直言って眼鏡を変える必要はありません。変えたとしても見え方や疲れ方が変わるわけではありません。疲れやすさは別の理由があると思います。まずは適度に目を休めるなどをしてみてはどうでしょう」などのアドバイスをしてくれます。その姿勢が単に売れればいい、という姿勢と比べ、信頼を勝ち取っています。
実店舗の存在意義についてこのブログでもたびたび触れていますが、

*人間の本質として「実際の体験」「人対人」は益々重要性を増している

*だからこそ、プロ、と尊敬できる人、誠実なスタッフの対応を求めている

という前提で考えると、プロのスタッフの育成・輩出ができる店長やお店は、何物にも勝る強さを持っているといえます。

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