■リテールマネージャーの3つの仕事
リテールマネージャーは店長と違い、実際に日々の店舗運営に直接携わるわけではありません。店長あるいはスタッフから見ると「現場にいない分、何をしているのかな?」と思うケースもあります。そこで、リテールマネージャーの役割・責任・取り組みについて改めて考えてみたいと思います。
リテールマネージャーは、経営幹部および他部署と密に連携を取りながら、リテール(販売)部門として会社にしっかり貢献できるよう、戦略の推進・エリアおよび各店舗の予算達成を実現するミッションを担って動いています。
そのためにはまず、
①“長期・大局・根本”の視点で各店舗のあるべき姿(目標・戦略)を明確化し、店長・スタッフにその実現を目指して主体的に取り組んでもらうために効果的な働きかけをする
必要があります。
また、実現プロセスにおいては必ず人・商品含め、様々な問題が発生します。そこで、
②問題(事実・実態)を早めに掴み、原因・対策について”仮説”を立て、実際の店舗訪問での観察、ヒアリング等で、「仮説」が正しいかどうかを「検証」し、より効果的な解決策を店長・スタッフ、状況によっては他部門と連携して導き出すことが求められます。
さらに
③社内の多岐にわたる関係部署はもとより、百貨店を含む、各お取引先との協力関係を深め、お互いにwin-winになるよう、企画提案・交渉をする役割を担います。
この3つの役割を複数の担当店舗・お取引先の個別事情を汲みながら実行するには、体と頭がいくつあっても足りない、という状況も発生します。私自身、素晴らしいリテールマネージャーのお話から学ぶことが多くあります。問題をチャンスに変えて、より体質強化に取り組んだり、お取引先との信頼関係を構築することでブランドの優位性を高めることに貢献したり、店長・スタッフの啓蒙により、お店の問題が半減したり・・、と縁の下の力持ちとして、様々に活躍されているリテールマネージャーが多いのも事実です。
■できるリテールマネージャーは店長・スタッフとの接点を重視している!
私から見てだけではなく、実際に店長やスタッフから信頼を得ているリテールマネージャーの特徴の一つが、「現場(店舗)との接点を非常に重視ししている」という点です。たとえば、担当店舗が広範囲にわたると日常的に気軽に訪店できない状況も発生します。何か問題が発生すれば当然それに関して話し合いが必要ですからコミュニケーション機会も増えますが、特段困った問題もなく、数字もそこそこ上げてくれている、店長もある程度業務に精通している、となると「任せて大丈夫」とばかりに、コミュニケーションもルーティン的に当たり障りなく終わる、そもそもコミュニケーション機会自体が減るということはよくあります。しかし、「できるリテールマネージャー」は”普段コミュニケーション機会が少なくなりがち”だからこそ、直接店舗訪問する機会を貴重な場面ととらえ、準備をしっかり行っています。
私が先日お会いしたリテールマネージャーも「〇〇店は2か月に一度行けるかいけないか、というエリアの店舗なので、直接話せる機会を最大限効果のあるものにするためにできるだけの準備をします」とおっしゃっていました。具体的に聞くと
【訪問準備】
1.数字を分析し、改善箇所を診断する
2.前回のアクションプラン、新しいブランドの方向性、最新の話題などを振り返る
3.今回の訪問の目的を設定する
4. 訪問した際に何をするかをまとめたアジェンダを作成し、先に店長に送っておく
1.に関しては
①パフォーマンスを超えている点、遵守できている点を確認する(具体的に称賛するため) ②パフォーマンスを下回っている点を明確化する
③①②ともとも、なぜそういう結果に至ったかの真因の仮説を立てる
④パフォーマンスを下回っている点に関して「自分だったらどうするか?何ができそうか?」という解決案を考える
⑤店長とこの問題にどう対処するかのプラン(たたき台)を準備し、話し合いに備える
とのことです。
特に、日頃のがんばりへのねぎらいはモチベーションに非常に大きな影響を与えるため、ほめる材料となる情報を事前にしっかり集めておくことが大切です。それも「単に数字が上がっている」ということではなく、苦しい中でもある数字の改善が見られた、とか、数字の奥にある頑張りに目を向けることがその後の意欲を引き出します。
また、リテールマネージャーの強みは長期・大局視点に立った情報提供ができる、という点です。それを活かして他店や他エリア/競合の動き、お取引先の動き/会社の今後の取り組みなどを踏まえて、各店舗で環境要因としてプラスに活用できることはないかをフラットな観点で提案することで、ずっと同じ場所にいる店長やスタッフに新しい視点をもたらすことも大切です。
最後に、「チームの雰囲気をつかむ」ことも重要な仕事です。電話やメールだけではつかめない情報を五感でつかんで、可能であれば先手で対応する。その方が問題も早く解決します。だからこそ、データだけでなくスタッフの表情・態度・動き・他のメンバーとのちょっとしたやり取りをじかに見たり質問したりして、空気をつかめるようになることはお互いにとってメリットがあります。
忙しい、という現実に流されず、本来の役割をより効果的に果たし、関係するすべての人にとって価値を生みだせるリテールマネージャーがどんどん育っているブランドは、実際に風土(風通し)も良くなり、よりしなやかで強くなっていっていると実感します。できるリテールマネージャーは多くの人に非常に大きな影響を与えている立場なのです。
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