ラグジュアリーブランド店長ブログ

変化の中で、取り残されていく店長と価値を生める店長の大きな違いとは?:ブランド店長問題解決講座(31)

■従来の延長線上の発想ではいずれ衰退する!

 企業存続のためには、変わり続ける環境にうまく適応することが必要です。特にリテール業界は環境変化のスピードも早い上にアップダウンも激しいといえます。ファッショントレンド、シーズンごとでのクリエーションの違い、新たなライバルの出現、街角景気というものから、大きな構造的な変化、たとえば百貨店の再編の奥にある世の中の価値観の変化、オンラインショッピングの急伸等、ライフスタイルの変化まで絶えず世の中は動き続けています。

ゆえに、店長は情報アンテナを立て自分たちのビジネスに関連する様々な情報をインプットし、具体的にそれがどういう影響を及ぼしうるかを先読みし、それに対し「いかに柔軟な発想で、対応策を見つけられるか」が問われています。

 

たとえば「腕時計」。これまでは、クオーツの性能の良い、また使い勝手も良い時計がリーゾナブルに、且つ豊富な種類から選べる一方で「機械式時計」はその技巧の高さ、こだわり、デザイン性、希少性などを含めたブランド価値によって、高額であっても根強い人気を保ってきました。

しかし新しい世代では、生まれた時からスマートフォンが時計代わりであり「時間を確認するだけならスマホを見ればいい」。すなわち「そもそも腕時計をすること自体の必要性を感じない」という割合も多くなっています。さらに腕時計の形をしたマイクロコンピューターである「スマートウォッチ」が出てくると、仕事上便利という理由から使い始めた人も、そのうち「それなしにはやっていけない」という感覚になります。大きな流れでいえばビジネスのスタイルもカジュアルトレンドが定着してきています。すると腕時計の例以外でも、ネクタイ、紳士用スーツ、革靴等々も従来の延長線上で考えていてはお客様が減っていくだけです。

■大きな変化の流れ自体は変えられない中でどのように新たな価値を創造していくのか?

これまでは「それは会社が考えること」「製品開発の人が考えること」「マーケティング部門が検討すること」という前提でした。

確かにそこには専門家がいて、大局的に会社の将来の発展につなげるために様々な角度からアイディアを出し、可能性の高いものを実行に移す、その指示に沿って店舗も動く、というのが当たり前でした。

ゆえに、市場が縮小してきていることに対し、店舗側で「私たちには何もできない。会社からの指示が出てくるまで私たちにはどうしようもない」という感覚をもってしまうことも多々ありました。

しかし、今の時代は大きなトレンドを踏まえつつ、「その中でもどうすれば価値を生み出せるのか?」を直接お客様とやりとりできる立場にある店長や店舗スタッフがアイディアを出し合い、すぐれたアイディアは逆に会社に提案していくことが大切になってきています。

たとえば店頭に来られるお客様に対し、従来以上に「心から欲しい!」という気持ちになっていただくには何が必要か?を皆で考えぬき、試行錯誤してみるなど。そのためにはお客様ごとに「どういうシーンで身につけられるのか」を把握することはもちろんですが、さらに大切なのは「そのシーンがお客様にとってどういう意味を持つのか?」というところまで踏み込んで掴んでいくこと。ここで言う意味とは「その時お客様自身がどんな気分でいたいのか」「周りの人にどんな気持ちになってほしいのか」ということです。

いつもはスマートウオッチで足りている、という人も「ここぞ!」というときは特別な時計をつけることもあります。その「ここぞ」とはどういう場面で、その時どういう気分でいたいのか、周りの人にどういう気持ちになってほしいのか?を掴み、そうなれるイメージを共有できる製品をピックアップして魅力的に提案していくことで、「売れない」ではなく「本当にご満足いただける時計をしっかり販売できた」というスタッフの自信につながります。

且つ、そういう対応がお客様の印象に残り、紹介やリピートにつながる確率は高いといえます。

環境に適応するとは、言ってみれば与えられた環境で価値を出すスキルであり、半歩先読みして新たな価値を生み出すための準備を行うスキルなのです。

■デジタルツールを活用し、新たな接客スタイルを模索する時代

ここまでなら「従来もやっていた」という店長も多いでしょう。その上で今非常に大切なのが「デジタルツール」の活用です。リテール業界はIT活用が遅れている、と長年言われてきました。オムニチャネルも、想定以上に時間がかかり、なかなか目に見える効果までは実感できませんでした。しかし、コロナになり「OMO」(オンラインとオフラインの融合)に本気で取り組まざるを得ない環境となり、一気に加速している感もあります。改めて本腰を入れて使ってみると案外「これは使える!」というものも多いと実感しているのではないでしょうか?たとえば
・LINEで写真や動画、アルバムを共有できる。お客様のご質問にもクイックレスポンスできる。
・iPADを使ってその場でコーディネートのイメージを広げることができる。
・Zoomでパーソナルな提案もできる。
一つ一つがいつのまにか信じられないほど便利で簡単に使えるものにスピーディーに進化しています。
おそらく多くの人は会社から支給された個別のスマートフォンを持っており、独自に開発されたそれぞれの会社の様々なアプリを活用できる状態にあり、そこからより接客を豊かにする大きな世界が広がります。
もちろん最初からすべて完璧なアプリが用意されるわけではありませんし、使ってみたら不便だった、というものもあるでしょう。
しかし、大局観をもって「こういう機能をつければお客様にとってもスタッフにとっても会社にとってもメリットがある」というコンセプトからスタートして開発されている、ということを考えると、使ってみたうえでフィードバックをし、より良いものにしていくことも価値共創につながる。いわゆる「使いこなしてなんぼ」の世界です。
これからの時代は、面白がって新しいツール、特にデジタルツールを使いこなすスキルも価値創造には欠かせません。

エンゲージメントクリエーター

店長としてまずはそういう姿勢を見せるとともに、成功事例を率先して作ることも環境適応スキルの重要なウエイトを占めることを念頭に置いて、新たな接客スタイルを模索し続ける時代なのです。またそういう店長が生き残っていけるのです。

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