ロールプレイングの効果を左右するもの
前回のブログでロールプレイングの壁をいくつか紹介しましたが、それを乗り越えるべく効果の高いロールプレイングを行うには、以下のポイントを踏まえて行うことが大切です。
1.ロールプレイングを行う目的・目標を明確化しよう!
(フォーカスポイントを明確化する!)
そもそも、なぜロールプレイングを行うのか?特にスタッフ一人一人にとってのメリットを全員でしっかり共有し、「自分自身にとってプラスになる!」という気持ちで参加してもらうことが大切です。
前提として、事前に店長自身がロールプレイングのメリットを洗い出し、自信をもって伝えられるようにしておきましょう!
また、ロールプレイングは現実にはかなりの集中力を要します。そこで、あれもこれもと欲張らずに研究テーマを具体的に絞り、フォーカスするポイントを皆で共有し、それに関してフィードバックを行うことが大切です。
たとえば、
①お客様の警戒心をできるだけ短時間で解き、スムーズに接客に入れるようにするために、最初の「2分間」のアプローチの仕方を研究する
②新商品の○○のメリットを、お客様のニーズに合わせて語り、買い気を高めるやり方を研究する
③ご試着後、お客様の表情を踏まえて効果的な言葉をかけ、納得感を高めるやり方を研究する
など、研究テーマを事前に共有し、具体的なシチュエーションを設定して各人に事前に考えてきてもらう、などの準備をして臨むことが大切です。
ロールプレイングは「上手にやる」ことが目的ではなく、「そのプロセスから何を学ぶか」「それをどう活かせるか」が重要です。
ゆえに、ロールプレイングを振り返って、「なぜこうなるのだろう?」「どうすれば店頭でできるのだろう?」「何が必要なのだろう
?」など、気づきをもたらすフィードバックを意識しましょう。
各人、事前に研究してきただけにテーマに関し問題意識を持っていると、相互のフィードバックの質も高まります。
思うようなレベルのフィードバックが出てこない場合は、店長がお手本を示すと、効果的です。
2.フィードバックをする際は、必ず先に「良かった点」を具体的に挙げる。そのうえで、成長するためのアドバイスを事実をもとに具体的に挙げる。
人間はプライドもあり、皆の前で厳しい指摘を受けると心を閉ざしがちです。まずは心をオープンにしてフィードバックを受け止めてもらうためにも、「良かった点」を事実をもとに具体的に挙げましょう。
できれば、本人も自覚していない点を指摘できると、自信につながります。そのためにも、まずは「良い点をしっかり観よう!」という気持ちでロールプレイングを観ることが大切です。
と同時に、その強みを活かすために「あのとき~したのは気づいていましたか?」「なぜそうしたと思いますか?」「さらにどうしたらよいでしょう?」と事実をもとに本人に考えてもらったり、「~できれば、さらに良くなる」というヒントを与えるとよいでしょう。
たとえば、「ご試着後の声かけの仕方」に関するフィードバックを例に挙げると・・
①お客様の不安な表情を察知して、先手で「どこか違和感がございますか?」とお客様が話しやすいように質問できていた点がいいですね。それは、日ごろから自分の考えを押し付けるのではなく、あくまでお客様の気持ちに寄り添って対応したいという考えで接客していることから自然にできている点だと思いますし、是非見習いたい点です。
②ただ、もったいない点として、お客様のご不安を払拭するための着こなしのアドバイスがもっと具体的にできると、お客様も「この人なら本音で相談できそう」と思っていただけると思います。
あの時、たとえば何と言って差し上げられたら良かったでしょうか?
もし本人が答えられなければ他のスタッフに聞いたり、お客様役から「どういってもらえると安心感につながったか?」を答えてもらうなど、それぞれの観点で意見を出し合えると相乗効果になります。
ロールプレイングは一方的にアドバイスをして終わり、ではなく、皆で研究し、考える呼び水と考えて活用すると相乗効果も高まります。
また表面的な行動レベルだけでなく、その行動がとれるようになるには何が必要かを一歩掘り下げて課題にしていくことも大切です。
たとえば、お客様が納得されるアドバイスができるようになるには、洋服の○○についての知識を正しくインプットすることが大切、など、基盤となるものを強化する重要性に気づかせることも重要です。
3.具体的に何を取り入れ、実践するかー実践目標を明確にしよう!
最終的に成長につながらなければ時間の無駄になってしまうため、「次の接客から具体的に何を意識し、実践するか」を本人から発信してもらい、行動化を促すまでが店長の仕事です。
可能であれば期間を決め、「定量化」すると本人も自己チェックしやすくなります。
たとえば、新たに「新製品○○のセールスポイントを魅力的に伝える」では、やや曖昧。
新製品の5つの特徴それぞれについて「だからどうお客様にとってGoodなのか?」という効用を伝えられるようにする。ついては、一週間後の朝礼時にそれを発表する、など。
ロールプレイングはテストでもなんでもなく、あくまでも「気づき」のきっかけであり、そこから課題を具体的に引き出し、その課題を行動として定着化させるという一連のプロセスの重要なステップです。
且つ、相互に高めあい、コミュニケーションを深めるという効果もあります。
楽しくやるためには、店長自身が「皆のロールプレイングから私自身が~を学べた!ありがとう!」というポジティブな発信をしていくことが大切です。
●iPadやスマホも活用しよう!
実は私も新卒でNECに入り、営業職として研修を受けた際、皆の前でビデオ撮影される中、商談のロールプレイングを行わなければならない状況がありました。
「このぐらいなら・・」という軽い気持ちでやったら、講師からさんざんダメ出しされました。録画を見ると、確かに、とにかく早口で、一方的にセールスポイントを羅列して終わり、でした。自分でもあぜんとして、「これじゃあ売れないどころか、こんな営業には会いたくないな」と思ったのを覚えています。
それはたくさん受けた研修の一場面だったうえ、それから何十年と経過していますが、不思議とその場面やその時の心情が時折鮮明に思い出されます。そして、「あんな風に一方的になっていないだろうか?」と自分に言い聞かせることもしばしばあります。考えてみると、それだけインパクトが強かったということもあるが、それが行動の指針として残っていることにも驚かされます。
特に今はiPadやスマホを使って録画・再生も簡単かつ気軽に行えます。自分で自分を客観視することで、フィードバックに対する納得感も高まり、且つ具体的な改善点も自分で見つけやすい。
是非そういうツールも活用して、(商品にブラシをかけて最高の状態にするように)自分達のスキルにも日々ブラシをかけて最高の状態でお客様に接することができればまさにWin-Winになります。
(前回のブログ:(29)ロールプレイングは本当にスキルアップにつながるの?)
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